【声劇台本】転生スキル

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
慶介(けいすけ)
都(みやこ)
部長
その他

■台本

慶介(N)「最近は異世界転生ものが流行っているらしい。俺は読んだことはないのだが、後輩がハマっていてよく話題にしてくる。その後輩が言うには、中には自分の命を顧みない行動をする主人公が多くて、そんな作品に当たると萎えるらしい。だが、俺はその主人公の気持ちが何となくわかる」

場面転換。

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

その中で慶介がカチャカチャと作業をする音がする。

都「慶介先輩! 残り3分を切りました! もう無理です! 退避しましょう!」

慶介「都! お前は先に退避してろ!」

都「ですが!」

慶介「俺は大丈夫だ! 早く行け!」

都「先輩が大丈夫なら、私も無事ってことになります! だから、行きません!」

慶介「アホ! これは命令だ! 行け!」

都「ですが……」

慶介「お前がいると気が散る! 行け!」

都「わ、わかりました。無理しないでくださいね」

都が走って行く。

慶介「さてと。邪魔者がいなくなったことだし、やるぜ」

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

その中で慶介がカチャカチャと作業をする音がする。

慶介「へへっ! こいつを作った奴は相当だな。ここまでの代物はなかなかお目に架かれない。……ははっ。燃えて来たぜ」

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

その中で慶介がカチャカチャと作業をする音がする。

そして、パチンとコードを切る音がする。

カウントダウンの音が止まる。

慶介「ふーー! 残り5秒。久々に汗をかいたぜ。……やっぱり、この興奮はやめられないよな」

そのとき、通信が入る音がする。

慶介「おっと、忘れてた」

通信機を入れる音。

慶介「おう、悪い悪い。今、解体作業が終わった。残り5秒だぜ。すげーだろ?」

都「バカっ!」

ブツっと通信が切れる。

慶介「ったく、なんなんだよ……」

場面転換。

書類を書いている慶介。

部長「また始末書か?」

慶介「そうなんですよ、部長。なんで、解体作業を成功させたのに怒られなきゃならないんですか? 理不尽ですよ」

部長「命令違反をしたからだな。あのタイミングなら、撤退するのがルールだ」

慶介「成功したんだから、いーじゃないですか」

部長「あのなx。何度も言わせるな。爆弾処理班の一番重要な任務は生きて帰ってくることだ」

慶介「……だから、生きて、ここに戻ってきてるじゃないですか」

部長「ギリギリまでやるなと言ってる。大体、爆発してたらどうするんだ?」

慶介「あの周りの住人の退避は終わってました。被害はでなかったはずです」

部長「お、ま、え、が! 死ぬだろうが!」

慶介「……そんときはそんときですよ」

部長「お前は……どうして、そこまで爆弾を処理することにこだわるんだ?」

慶介「楽しいからですよ。あの爆発ギリギリの中で、一つのミスも許されない中で、勝負する。こんなにスリルを味わえる職業は他にはないですよ」

部長「そんなんじゃ、いつか、死ぬぞ」

慶介「……死寝るものなら死にたいです」

部長「なに?」

慶介「あー、いや、ほら、俺って殺しても死なないですから」

部長「ふふ。まあ、そうだな。……が、命令違反はほどほどにしろよ。いくらお前が楽しくても、クビになったら意味ないぞ」

慶介「肝に銘じておきます」

場面転換。

都「それで、主人公はヒロインのために命を投げ出すんですよ! そんなのあり得ないです!」

慶介「……そうでもしないと、盛り上がらないだろ」

都「それは……そうですけど。でも、そんなの全然、リアリティありません」

慶介「そうでもねーだろ」

都「なんでですか?」

慶介「死なないって思ってる奴なら、簡単に命をかけるってことさ。逆に、命をかけるくらいのスリルがないと、人生、つまらないだろ」

都「……いや、この主人公は不死身っていう設定じゃないですけど。それに先輩、なんか読んでもいないのに、随分と主人公に感情移入できてますね」

慶介「あー、いや、ほら、人間ってやつは勝手な考え方をするもんだろ。例えば、自分は死なないって思いこんでるとかさ」

都「あー、確かに人って、そういうところありますよね。自分だけは大丈夫って」

慶介「そうそう。それだ」

都「まるで先輩みたいです」

慶介「……」

都「でも、それって周りからしたら迷惑ですよね。本当に!」

慶介「だから、この前のことは謝ってるじゃねーか。それに、成功させたんだからいいだろ」

都「失敗してたらどうするんですか!」

慶介「……なんで、後輩にまで怒られないとならないんだ……」

場面転換。

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

その中で慶介がカチャカチャと作業をする音がする。

都「先輩、残り5分を切りました。退避命令が出てます」

慶介「お前は先に行ってろ」

都「先輩!」

慶介「……先に言っておく。この爆弾は階層型になってる」

都「階層型……ですか?」

慶介「つまり、段階を踏んで、威力が段々小さくなっていくという作りだ」

都「えっと、解除すればするほど、爆発規模が小さくなっていくということですか?」

慶介「そうだ。この段階で逃げれば、爆発規模は10キロに渡る。つまり、今、逃げれば俺もお前も死ぬことが決定する」

都「……そんな」

慶介「これを作った奴は頭のいい奴だ。どうしても、俺を爆死させたいらしい。これは俺への挑戦だ。それなら、とことん乗ってやるしかないだろ」

都「……わ、私も」

慶介「残るなんて言うのはなしだ。行け」

都「で、でも」

慶介「頼む。今回はかなりギリギリの勝負になる。お前は退避してほしい」

都「……先輩」

慶介「大丈夫だ。必ず生きて戻る。約束だ」

都「……絶対ですよ。信じてますからね」

慶介「ああ」

都が走っていく。

慶介「さてと。燃える展開だな。全力でいくぜ」

場面転換。

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

その中で慶介がカチャカチャと作業をする音がする。

慶介「よし! 4段階目、解除完了。これで都達のところには被害はいかないだろ」

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が響く。

慶介「けど、残り5秒で、最後のは無理だな。……しゃーない。今回は俺の負けだ」

デジタル時計のカウントダウンのピッピッピという音が鳴り、そして、爆発音が響く。

場面転換。

女神「あら、久しぶりですね」

慶介「ああ。女神か。久しぶりにスキル発動しちまったよ」

女神「このスキルにしてよかったですね」

慶介「いや……。そうでもないさ。このスキルのせいで、なかなかスリルを感じれなくなった。人生がつまらなくなったよ」

女神「ですが、スキルは変えることはできません」

慶介「ああ。わかってる。それじゃ、発動してくれ。死んだら、自分自身に転生するっていう、転生スキルを」

女神「はい。それでは……」

場面転換。

都「先輩! 先輩!」

慶介「ん……? ああ、都か。無事でなによりだ」

都「それはこっちの台詞です! っていうか、なんで、あの爆発で生きてるんですか!」

慶介「……死んでほしかったみたいに聞こえるぞ」

都「先輩のバカ! 心配したんですからね!」

慶介「すまん。けど、約束通り、ちゃんと生きて戻ってきただろ?」

都「……先輩はもう、この仕事辞めた方がいいです。命がいくらあっても足りません」

慶介「辞められないさ。こんなスリルのある仕事は、な。それに……命はいくらでもあるし、あの爆弾魔にも、礼をしなくちゃならんからな」

慶介(N)「異世界転生された主人公たちも俺と同じような気持ちなんだろうか? 今度、俺も読んでみるか」

終わり。

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