【声劇台本】例え俺を殺す人だとしても
- 2022.02.23
- ボイスドラマ(10分)

■概要
人数:5人以上
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、戦争、シリアス
■キャスト
モーガン
ホーク・リッパ―
リチャード
その他
■台本
モーガン(N)「そいつの名前は、末端の兵士の俺の耳にも届いていた。物凄い狙撃手がいる。そいつに撃たれた我が軍の兵士は100人以上とのことだ。ホーク・リッパ―。そいつの目に映った者は皆、死を免れることがないのだという……」
場面転換。
戦場の音。
激しい撃ち合いが続く。
リチャード「モーガン、突撃命令だ。3分後に特攻をかけるぞ」
モーガン「上は、俺達に死ねっていうのか?」
リチャード「さあな。まあ、まともな作戦がないことだけは確かだ。突撃させるしか思い浮かばないんだろな」
モーガン「お前は怖くないのか?」
リチャード「死ぬのがか? どうだろうな。死と隣り合わせの状況が長かったせいか、感覚がおかしくなっているのかもな」
モーガン「……」
リチャード「それに今まで多くの命を奪ってきたんだ。今更、自分の命だけ失いたくないとは言えないさ」
モーガン「……俺は、俺は……死にたくない」
リチャード「娘は何歳になったんだ?」
モーガン「5歳だ。もう3年以上、顔も見てない」
リチャード「……悪かったな。事情は人それぞれだ。お前が死にたくないと思っても、誰も攻めたりはしないさ」
モーガン「……」
リチャード「とはいえ、そろそろ時間だ。行くぞ」
モーガン「ああ……」
リチャード「みんな、行くぞ! ゴー!」
多くの兵士たちが戦場を走る。
兵士1「うっ!」
兵士2「がっ!」
ドンドンと兵士たちが撃たれて倒れていく。
モーガン「なんだ? どこから撃ってきてるんだ?」
リチャード「あいつだ。ホーク・リッパ―だ」
モーガン「どうする? 一旦、隠れるか?」
リチャード「いや、突っ込もう。もうすぐ基地に辿り着く」
兵士3「うわっ!」
次々と兵士たちが倒れていく。
リチャード「化物か。もう、俺達しか残ってないぞ。走れ!」
モーガン「うおおお!」
モーガン「うわっ!」
モーガンが転ぶ。
リチャード「モーガン!」
モーガン「俺に構うな! 行け!」
リチャード「つかまれ! 早く!」
モーガン「くっ!」
リチャードの腕を掴んで立ち上がるモーガン。
リチャード「よし、行く……うっ!」
ドンと胸を撃たれるリチャード。
モーガン「リチャード!」
リチャード「うう……」
モーガン「頑張れ! もうすぐ、敵の基地に着く。そこなら隠れられる」
リチャードを引きづって、基地に到着するモーガン。
モーガン「大丈夫か、リチャード」
リチャード「はあ、はあ、はあ……」
モーガン「しっかりしろ!」
リチャード「俺はもう駄目だ。モーガン。俺の代わりに頼む。この爆弾を使えば、基地を風穴を開けられる。そうすれば、味方がなだれ込んでくるはず……だ」
モーガン「……わかった。任せろ」
場面転換。
モーガン「よし! 設置できた。行くぞ」
ボタンを押す音と巨大な爆発音。
そして、破壊音が響く。
モーガン「うまく……いったみたいだな」
モーガンが敵の基地内を歩く。
モーガン「凄い威力だな。これでは、基地の機能も無効になった。敵も撤退を初めている……」
リッパ―「うっ……」
モーガン「敵か!」
銃を構えるモーガン。
リッパ―「くっ!」
リッパ―が銃のトリガーを引くが、壊れているせいか弾は出ない。
モーガン「女……か」
リッパ―「……」
モーガン「そのライフルは爆発の衝撃で壊れたみたいだな。諦めろ」
リッパ―「……くっ」
モーガン「……ライフル? お前、もしかして、ホーク・リッパ―か?」
リッパ―「……」
モーガン「お前には、仲間を多く殺されている。ここで撃たれても文句はないな?」
リッパ―「……早く撃て」
モーガン「……」
リッパ―「どうした? 早く撃て」
モーガン「俺には娘がいる」
リッパ―「……?」
モーガン「例え、敵だったとしても、お前を撃てば、娘に顔向けできない気がする」
リッパ―「呆れたな。敵兵に情けをかけるのか? それが、単に女ってだけで」
モーガン「……」
リッパ―「私は先ほども多くの兵を撃った。お前の知り合いも撃ったはずだ」
モーガン「……」
リッパ―「撃て。私は多くの人間の命を奪ってきた。今更、自分の命が惜しいとは思っていない」
モーガン「……リチャード」
リッパ―「私は単なる敵だ。それに、私は有名だ。そんな私を撃ったとなれば、お前には報酬が出るだろう。もしかすると、家に帰れるのではないのか? そしたら、娘にも会える」
モーガン「……」
リッパ―「お前に撃たないメリットは何もない」
モーガン「……立てるか?」
モーガンがリッパ―の腕をつかみ、起き上がらせる。
リッパ―「何を考えている?」
モーガン「もうすぐ、ここには仲間の隊が押し寄せてくる。早く逃げろ」
リッパ―「ここで私を逃がせば、お前の仲間をまた撃つことになるぞ」
モーガン「兵を抜けてくれというのは無理か?」
リッパ―「無理だな。嫌なら、撃て」
モーガン「……一つ、頼みがある」
リッパ―「……」
モーガン「次に戦場で俺を見たら、俺を最初に撃ってくれないか? 仲間の誰よりも先に俺を……」
リッパ―「なぜだ?」
モーガン「あんたを逃がすんだ。それくらいの罪滅ぼしをさせてくれ」
リッパ―「くだらんな」
モーガン「頼む……」
リッパ―「……次は私がお前を撃つ」
モーガン「ああ」
リッパ―「せいぜい、後悔しろ」
リッパ―が走って行く。
モーガン「……」
場面転換。
モーガン(N)「それから、一年ほど経った頃、戦争は終結する。あれから、彼女は戦場で多くの兵を撃った。俺と同じ隊の奴らも、彼女の手にかかって死んでいる。だが、俺は彼女に撃たれることはなかった……。そして、戦争終結から1週間後、彼女の方は戦死したという噂を耳にした。……俺は今でも考える。果たして、あのとき、俺がしたことに意味はあったのか? ……いや、単に仲間の犠牲者を増やしただけだったのではないだろうか。でも……それでも……」
場面転換。
ナタリー「パパー!」
モーガン「ナタリー!」
ナタリーを抱きしめるモーガン。
モーガン(N)「あのとき、彼女を撃っていれば、きっと、娘に顔向けできなかっただろう」
終わり。
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