【フリー台本】豆腐メンタルでチキンだけどコツコツ続けて世界最強を目指す
- 2022.04.14
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
竜弥(たつや)
女神
■台本
竜弥(N)「俺はブラック企業に20年務めてきた。今年でもう43だ。会社でなんのスキルも得ることができなかった俺は、転職さえも絶望的だった。だから、このまま、会社に搾取される毎日が続くものだと思っていた。だが、俺はあっさりと過労の為、倒れてそのままこの世界から旅立つこととなる」
女神「ということで、異世界転生です。スキルを選んで下さい」
竜弥「……物凄いテンプレートで、事務的ですね」
女神「この中から、2つ選んでください」
竜弥「はい。えっと……前の人生が大変だったからなぁ。転生先では、今流行りのスローライフ系で生きたいなぁ。でも、やっぱり、俺強ぇ、もやりたいし……。うーん、うーん。迷うなぁ」
女神「あと、10秒で締め切りです」
竜弥「ええー! それ、絶対、決まりじゃないでしょ! ただ、面倒くさくなっただけですよね!」
女神「9、8、7……」
竜弥「早い、早い! ちょ、ちょっと待って。あー、じゃあ、これとこれで!」
女神「わかりました。では、転生させます」
竜弥「えっと、あっちの世界はどんなところなんですか? 教えてもらえると助かるんですけど」
女神「よくある、転生ものの世界です」
竜弥「雑! もう少しやる気出してくださいよ!」
女神「では、ご武運を。よき人生になることを祈っております」
竜弥「微塵も思ってないですよね!? 全然、感情が入ってないですよ!」
場面転換。
竜弥(N)「こうして、俺は異世界に転生した。2つのスキルを貰って。慌てて選んだにしても、なかなかいいチョイスだと思う」
竜弥「……それにしても、こういう転生ものって、普通はイケメンになるはずなんだけどなぁ。ただ、若返っただけじゃん」
竜弥(N)「まず、俺が選んだスキルの1つは不老不死。やっぱり、死ぬのは怖いし、どうせなら若いままがいいよねってことで。あとは、もう一つ、不老不死を選んだ理由がある。というより、こっちの方が本命の理由なんだけど」
竜弥「さてと。さっそく、レベル上げといきますか」
竜弥が歩き出す。
竜弥(N)「選択肢の中に、ものすごい強い魔法を習得、なんて説明文すらも雑なものがあったんだけど、扱うのが難しそうだし、そもそも、魔力が足りないから使えない、なんてオチになりそうだったから、止めた。やっぱり、俺の性格上、コツコツやるのが性に合ってるのだ」
ガサガサと、草の根を搔き分ける音。
竜弥「あっ! モンスターだ!」
竜弥(N)「キノコみたいなモンスター。どう見ても雑魚モンスターだろう」
竜弥「はああああああ! 食らえ! 炎の魔法!」
ボッと炎が上がる音。
竜弥「ふう、勝った、勝った。これで、経験値が入ったはず」
竜弥(N)「俺が選んだもう一つのスキルが、経験値10倍だ。俺の作戦はこうだ。いくら不老不死だといっても、強いモンスターと戦うのは怖い。死なないといっても、痛いだろうし。だから、こうやって雑魚モンスターを狩り続けてレベルをめちゃくちゃ上げるという作戦だ。この方法は凄く時間がかかるだろうから、不老不死を選んだってわけだ。せっかく強くなっても、おじいちゃんになってたら意味ないし」
竜弥「ということで、雑魚狩りをコツコツ続けて、最強を目指す作戦、開始だー!」
場面転換。
竜弥(N)「そして、あっというまに50年が経った。その間、俺はめちゃくちゃ雑魚モンスターを狩り続けてきたのだ」
竜弥「ふふふふ。ここまでやれば、かなり強くなったはずだ。もう、この世界で最強になったんじゃないだろうか。よし、試してみるか!」
竜弥が歩いていると、グルルルという唸り声が聞こえてくる。
竜弥「ん? あ、ミノタウロスだ。初めてだけど、このくらいなら、もう秒殺でしょ! オーバーキルしちゃうかもしれないけど、すまんな! いくぞ! 炎の魔法!」
ボッという炎が上がる音。
ミノタウロス「ブオオオオオオ!」
竜弥「あれ? 効かない? てか、逆に怒りを買ったような……」
ミノタウロス「ブオオオオオオ!」
竜弥「ぶべっ!」
ミノタウロスの一撃で吹き飛ぶ竜弥。
竜弥(N)「負けた……。ワンパンで。え? なんで? どう見ても、ミノタウロスは雑魚よりはちょっと強いくらいだろう。中級モンスターでさえないはず。え? え? え? 俺、最強じゃないの? どういうこと?」
竜弥「あの! 女神さん! 女神さん! 聞こえますか! 応答してください!」
ピカーという光の音。
女神「……なんですか?」
竜弥「物凄い嫌そうな顔しないでくださいよ……。それより、女神さん。スキル発動してないみたいなんですけど」
女神「……いえ、ちゃんと発動してますよ。現に、年を取ってないですよね?」
竜弥「あ、いや。そっちじゃなくて、経験値10倍のところです」
女神「……いえ、そっちも発動してます」
竜弥「いや、そんなはずないですよ! だって、さっき、ミノタウロスに負けたんですよ! あれだけ、経験値積んだのに、あり得ないでしょ!」
女神「……0に10をかけても、0は0ですよ」
竜弥「へ? どういうことですか?」
女神「経験を積んでいない状態で、10倍にしても意味がないということです」
竜弥「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ! そんなわけないじゃないですか! 50年ですよ! 50年ずーっと雑魚モンスターを狩り続けたんです。経験値を積んでないわけ、ないじゃないですか」
女神「……はあ。なにを言ってるんですか?」
竜弥「へ?」
女神「算数の勉強で、1+1という問題を50年間解き続けて、テストで100点取れると思うのですか?」
竜弥「え? え?」
女神「例えば、筋肉が増える原理ですが、一度、筋肉の繊維をトレーニングで壊し、それが回復する際に、強くなるのです。それを繰り返すことによって、筋肉が増強していくわけです」
竜弥「……」
女神「毎日、腕立て伏せ1回するのを50年続けたら筋肉ムキムキになると思いますか?」
竜弥「いやいやいやいや。そういうリアルな事じゃなくて、こういう場合は、どんなに弱いモンスターでも経験値は入るでしょ。例えば、レベルが30でも、スライムをやっつければ、経験値が1は入るって感じですよね?」
女神「……何を言ってるんですか? 弱い敵を倒しても、経験になるわけないじゃないですか。常識を考えてください」
竜弥「なんで、そこだけリアルなんだよおおおおおお!」
終わり。
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