【フリー台本】不思議な館のアリス 真実の瞳
- 2022.04.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:1人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
アリス
■台本
アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」
アリス「おや? 随分と、衣服が乱れてますね。どうかされましたか?」
アリス「……なるほど。スリと間違われて、色々と探られた、というわけですね」
アリス「ですが、よく、無実だと証明できましたね。罪を犯したと証明するよりも、無実を証明する方が難しいのですが……」
アリス「……ああ、真犯人が見つかったのですか。それは運がよかったですね」
アリス「……え? 自分はやっていないから、話せばわかる、ですか?」
アリス「ふふ。あなたらしいですが、それはいささか、楽観的すぎますよ」
アリス「……ふむ。いいですか。世の中には……この世には神様はいないのです」
アリス「いつも、真実が正しいとされるとは限りません」
アリス「そうですね。今日はこのお話をしましょう」
アリス「それはある街での話です。その街は貧富の差が大きく、貧困層はまるで奴隷のように扱われ、富裕層が全てを決める、という状態でした」
アリス「そんな街で、ある事件が起こりました」
アリス「それはある、金持ちの息子が車で子供を轢いてしまったというものです」
アリス「その子供は亡くなってしまい、親やその周りの人間は必死に聞き込みをし、その金持ちの息子まで辿り着きました」
アリス「警察にそれを知らせ、渋られながらも、なんとかその金持ちの息子を容疑者として逮捕させるにいたりました」
アリス「……裁判が行われ、子供の親たちはその金持ちの息子に実刑が下されると信じてやみませんでした」
アリス「ですが、その期待は裏切られます」
アリス「その金持ちの息子は、証拠不十分で無罪となったのです」
アリス「なぜなら、全ての証人を、金持ちが買収し、証言を捻じ曲げたからです」
アリス「子供の親たちは激怒しました。自分たちが調べ上げた資料を裁判所に提出しましたが、受理されず、結局、金持ちの息子は釈放となり、平然と毎日を過ごしているのです」
アリス「子供の親たちは絶望しました。真実が平然と覆されたのですから」
アリス「肩を落とし、泣き続ける親に対して、ある男が計画を立てました」
アリス「それから数年が経ち、金持ちやその息子は、事件のことすら忘れていた頃のことです」
アリス「金持ちとその息子は、一か月に一度、あるレストランで食事をとるというのが、習慣となっていました」
アリス「そして、いつものように、その行きつけのレストランで食事をしているときのことでした」
アリス「ある男が平然と歩み寄ってきて、金持ちの男を刺しました」
アリス「そして、その金持ちの男はその場で絶命します」
アリス「その息子は警察を呼び、刺した男を警察に突き出しました」
アリス「そして、それからしばらくした後、金持ちの男を刺した男は無罪となり、逆に金持ちの息子の方が父親を刺した犯人として実刑になりました」
アリス「……なぜ、そうなったのか」
アリス「それは、レストランにいた全員が、金持ちの息子が刺したと証言したからです」
アリス「……はい。レストランの店員はもちろん、来店していたお客全員が、です」
アリス「それに、金持ちの男が刺されたということも大きかったですね」
アリス「その金持ちの男は金を使って、随分とあこぎなことをしていたため、周りにはとても嫌われていました。その金持ちの男が死んだとなれば、その威光もなくなるというわけです」
アリス「警察は喜んで、息子を真犯人として捕まえました。動機さえも、固まっていないのに、です」
アリス「これは子供の親たちの執念が起こした奇跡のようなものです」
アリス「長い時間、この日の為だけに、全員が一丸となって、仕込みをしていたというわけです」
アリス「……え? その金持ちの息子はどうなったか、ですか?」
アリス「親を殺害するのはかなりの重罪になります。なので、その息子は……」
アリス「いえ、やめておきましょう」
アリス「私が言いたいのは、必ずしも真実が表にでることはないということです。そして、真実とされることが正しいこととは限らないということです……」
アリス「いいですか? 世の中には神様のような存在はいないのです。みんなが思ったことが真実になってしまうことがあることをお忘れなく」
アリス「今回のお話はこれで終わりです」
アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」
終わり。
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