【フリー台本】代々伝わる料理
- 2022.04.27
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
勇樹(ゆうき)
美緒(みお)
母親
部族男×2
■台本
勇樹「……はあ」
母親「なによ。ため息ついて。あんたの好きなカレーなのに」
勇樹「いや、これ、豆腐のやつじゃん」
母親「いいじゃない。豆腐カレーは幕末から代々、うちに伝わる料理なんだから」
勇樹「幕末って……。何回聞いても、嘘くせえ」
母親「何言ってるのよ。私たちの先祖のおじいちゃんは、この豆腐カレーを世界に伝えたんだから」
勇樹「余計、嘘くさいから。大体、母さんが肉買い忘れただけでしょ? 育ち盛りなんだから、肉食わせてよ、肉!」
母親「ないものはないんだから、しょうがないじゃない。さっさと食べちゃって」
勇樹「はあ……」
勇樹(N)「小学校のころ、カレーに入れるものっていう質問で、豆腐と答えた俺は、当時、変わってるとバカにされたものだ。ただ、今は、ダイエットしているときの食べ物として、豆腐にカレーをかけて食べるなんてことを見かけることはある。……でも、やっぱり、肉が食べたい」
場面転換。
美緒「ねえ、勇樹。卒業旅行はアマゾンのジャングルで大丈夫だよね?」
勇樹「……全然、大丈夫じゃねえよ。なんだよ、アマゾンのジャングルって。そこはハワイとかグアムとかだろ」
美緒「えー。だって、そんなの普通過ぎて面白くなくない?」
勇樹「いや、普通でいいだろ。普通で」
美緒「じゃあ、ジャングルトレッキング、3泊4日ね」
勇樹「聞けよ、人の話! てか、ジャングルで3泊もするのかよ!?」
ガチャリとドアが開く音。
母親「あら、美緒ちゃん、いらっしゃい」
美緒「あ、おばさん、こんにちは」
母親「このパンフレットは、大学の卒業旅行の?」
美緒「うん。アマゾンのジャングルにしたんだ」
勇樹「母さん、止めてくれよ。マジで行こうとしてるんだよ、こいつ」
母親「いいじゃない、ジャングル。私たちの先祖のおじいちゃんも、ジャングルに冒険に行ったんだから」
勇樹「いやいやいやいや」
美緒「へー! じゃあ、勇樹の中には、冒険家の血が流れてるんだね!」
母親「そうそう。だから、意外とジャングルは肌に合うかもしれないわよ」
場面転換。
ジャングル内。鳥や虫の鳴き声。
勇樹「合わねーよ!」
美緒「わっ! どうしたの、急に?」
勇樹「いや、あのさ、美緒。やっぱり、もう帰らねえ?」
美緒「何言ってるのよ。まだ2日目じゃない」
勇樹「暑いし、虫に刺されるし、歩きづらいし、腹減ったし、もうジャングル、嫌になってるんだけど」
美緒「あ、勇樹、見て! 綺麗な鳥!」
勇樹「聞けよ、人の話!」
美緒「もう少し奥に行ったら、おっきなアナコンダとかワニとか見れるかもしれないんだってさ」
勇樹「え? なんで、楽しみみたいな感じで言ってんの? マジで帰るぞ! アナコンダとかワニとかは動物園で見せてやるから」
美緒「……ねえ、勇樹。私ね、ずっと黙ってたことがあるんだけど」
勇樹「ん? なんだよ、急に」
美緒「実は道に迷ってるんだよね」
勇樹「へ? え? マジで? いつから?」
美緒「3時間くらい前からかなー?」
勇樹「なんで言わねーんだよ!」
美緒「だって言ったら、怒るでしょ?」
勇樹「言わない方が怒るよ!」
美緒「まあ、今、言ったし、ね?」
勇樹「ね? じゃねえ! とりあえず、謝れ! 俺に!」
美緒「ごめんね。生きて帰れないかも」
勇樹「思ったより、深刻だった!」
美緒「でも大丈夫だよ。私の巻はあっちだって言ってるから」
勇樹「いや、お前のその勘のせいで迷ったんだろうが」
美緒「んー。じゃあ、誰かに聞いてみようか」
勇樹「……こんなところにいる人間なんて、俺達と同じく迷ってるか、未開の地の部族とかだろ。……できれば会いたくないな」
美緒「……遅いかも」
勇樹「へ?」
部族の男1「――――!」
勇樹「うわっ!」
美緒「きゃああー!」
場面転換。
美緒「ねえ。帰り道、教えてくれると思う?」
勇樹「……縛り上げられてる時点で、それはないと思う」
美緒「……どうなると思う?」
勇樹「考えたくないな……」
部族の男1「――――――」
部族の男2「~~~~~!」
美緒「なんだろ? 何か言い争ってるみたいだね」
勇樹「俺たちの処分について、話し合ってるのかもな」
美緒「私たちは無害ですよー! ロープ、解いて下さい―!」
勇樹「……いや、それで解いてくれたら苦労はないって」
ぶちぶちぶちとロープを切る音。
勇樹「え?」
美緒「……解いてくれたね」
勇樹「な、なんで?」
部族の男1「―――――」
部族の男2「~~~~~」
美緒「なんか、謝ってる感じだね」
勇樹「俺に……だよな? どうして?」
部族の男1「―――――」
美緒「あ、写真だ。凄い古いね」
勇樹「……」
美緒「この写真に写ってる人、なんか勇樹に似てない?」
勇樹「やっぱり? 俺もそう思った。じゃあ、なんか勘違いしてるのかな?」
場面転換。
音楽が流れ、人々の楽しそうな声。
美緒「……なんか、宴会が始まっちゃったね」
勇樹「歓迎してくれてるのかな?」
部族の男1「―――――」
勇樹「あ、どうも……」
美緒「何の料理だろ? ……これ、カレー?」
勇樹「うん、カレーみたいだな。しかし、ジャングルの奥地の村にカレーが伝わってるなんて、凄いな」
美緒「あっ! これ、見て!」
勇樹「ん? ……あ」
美緒「豆腐だ。豆腐入ってるカレーなんて、珍しいね」
勇樹「……」
場面転換。
勇樹(N)「あの後、俺達は解放されただけでなく、人が通る道まで案内もしてもらった。現地の人に聞いてみたところ、村の奥に住む部族は、外部の人間を受け入れたりはしないらしい。だが、かなり昔に、一人の日本人の冒険家が村に入って行き、飢饉になっているところを救ったという伝説があるとのことだ」
回想。
母親「豆腐カレーは幕末から代々、うちに伝わる料理なんだから」
母親「私たちの先祖のおじいちゃんは、この豆腐カレーを世界に伝えたんだから」
母親「私たちの先祖のおじいちゃんも、ジャングルに冒険に行ったんだから」
回想終わり。
勇樹「……本当だったのか。ありがとう、先祖のおじいちゃん。おかげで助かったよ」
終わり。
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