【フリー台本】不思議な館のアリス 漠然とした希望

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■概要
人数:1人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

アリス「……おや? また雨に濡れていますね。また、傘を忘れたのですか?」

アリス「確か、天気予報で雨が降る確率が50パーセントだったと思いますが……?」

アリス「ふふっ。なるほど。半々の確率だったので、傘を持って行かない方に賭けたわけですね」

アリス「……運が悪かった、ですか。そうですね……」

アリス「わかりますよ。このようにまとったことがあった際に、きっと、大丈夫だって思って行動してしまうのですよね」

アリス「そして、失敗してしまう……」

アリス「ふふ。覚えがあるようですね」

アリス「……そういえば、この、きっと大丈夫と言って、大丈夫な人と、だいじょうぶではない人がいると思いませんか?」

アリス「いつも、きっと大丈夫と言うのですが、いつも駄目だという人です」

アリス「本人は運が悪いと片付けてしまいがちですが、私が思うに、これは必然なのではないでしょうか」

アリス「では、今日は、きっと大丈夫という言葉が口癖の2人の男についてのお話をしましょう」

アリス「この二人は、口癖が同じなだけで、知り合いというわけではありません」

アリス「ある男……こちらはAさんとしましょう」

アリス「Aさんは楽天家で、何事も何とかなるという性格で、ことあるごとに、きっと大丈夫と言って行動することが多かったのです」

アリス「ですが、Aさんは、きっと大丈夫と言った場合のほとんどは、ダメだったことが多かったようです」

アリス「例えば、今日のあなたのような、雨は降らないだろう、という日常的なことから、試験や、仕事上のプレゼンなどなどの、重要なことでも、きっと大丈夫と言って、臨んでいたのです」

アリス「Aさんは失敗が多かったのですが、それでも、性格の為か、今回は運が悪かったと言って洗い飛ばしていたそうです。そして、また、いつも同じような状況で、きっと大丈夫だと言って、事に臨んでいたようです」

アリス「結局、Aさんは変わることはなく、失敗が多く、怒られることも多かったみたいです」

アリス「次にBさんの話です」

アリス「Bさんはとても心配症で、何事も後ろ向きに考えていたそうです」

アリス「いつも最悪の場合を考えてしまい、物事を上手く進められませんでした」

アリス「そんなとき、Bさんの父親は、不安になったら、きっと大丈夫と言って気楽に進んでみろと言ったそうです」

アリス「それ以来、Bさんは何かあった場合はきっと大丈夫と言い聞かせて、事に臨んだようです」

アリス「そして、Bさんの方は、きっと大丈夫と言って臨んだ場合は、高確率で上手くいったそうです」

アリス「では、なぜ、そのような違いが生まれたのか……」

アリス「それは……。Bさんは、準備をしていたからです」

アリス「つまり、試験や仕事上のプレゼンなどがあった場合は、事前にしっかりと準備した上で、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせていたわけです」

アリス「そして、もし、物事が失敗したら、なぜ、失敗したのかを考え、改善していったそうです」

アリス「……え? 事前に準備をしていたら上手くいくのは当たり前、ですか?」

アリス「はい。そうです。その通りです」

アリス「ですが、考えてみてください。それでもAさんは、当たり前のことである準備をせずに、きっと大丈夫と言い続けていました」

アリス「そして、失敗すると、運がなかったと言って、改善をしようともしませんでした」

アリス「どうでしょうか? これでも、まだ、運がなかったと言えるでしょうか?」

アリス「私は、ほとんどの事柄は、きっと大丈夫と言ったときには、もう答えが出ているのではないかと思います」

アリス「なぜなら、ほとんどの事柄は、その人の生きて来た結果であるからです」

アリス「つまり、きっと大丈夫と言ったときには、成功か、失敗かが決まっているということですね」

アリス「ですが、それを運とすることで、目を背けてしまうわけです」

アリス「それでは、失敗してしまうことも割と必然だと思いませんか?」

アリス「きっと大丈夫」

アリス「この言葉は投げやりではなく、しっかりと準備をし、成功するはずという自信を持って言えるといいですね」

アリス「ふふ。それでは、今日のお話はこれで終わりです」

アリス「またのお越しをお待ちしております」

終わり。

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