【フリー台本】かぐや姫は結婚したくない

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■概要
人数:5人以上
時間:15分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
かぐや
太助
二郎
おじいさん
ナレーション
将軍×5
町の人×2

■台本

ナレーション「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。ある日、おじいさんが山へ竹を取りに行くと、光り輝く竹を見つけます。驚いたおじいさんが竹を割って見ると、中には女の赤ん坊がいました。おじいさんは、その赤ん坊にかぐやと名付け、大切に育てました。そして、かぐやは、すくすくと、美しく育ち、やがては村一番の美人と噂が立つほどになりました」

場面転換。

ガラッと戸が開く音。

おじいさん「おーい、かぐや。新しい道具を町で買って来たぞ。これでいいんじゃろ?」

かぐや「ありがとう。そこに置いておいて」

おじいさん「また何か作っているのかい?」

かぐや「ちょうどできたわ。はい、開けてみて」

おじいさん「竹の箱? 小物入れか?」

かぐや「いいから、いいから、開けてみて」

おじいさん「ふむ……」

パカッと箱を開けると同時に、ポンという音。

おじいさん「おお! 中から花が出て来たぞ!」

かぐや「名付けて、驚き箱よ。中身は色々変えれるから、たくさん種類が作れるわ」

おじいさん「……なあ、かぐやよ。今まで、お前が色々なものを作って、それを売ることでワシらは本当に、助けて貰った。じゃが、そろそろ、綺麗な服とか、化粧とか、自分の好きな物を買ってはどうじゃ?」

かぐや「ふふふ。おじいさんとおばあさんには、一生かかっても返しきれない恩があるわ。確かに、最初は恩を返したいと思って、色々作ってきたけど、今は、やりたくてやってるの。だから、心配しないで」

おじいさん「じゃがのお……」

そのとき、ドタドタと太助がやってくる。

太助「かぐやさーん! いる?」

かぐや「あら、太助。どうしたの?」

太助「二郎がいいこと思いついたって。ちょっと来てくれよ」

場面転換。

二郎「……どう? 面白いと思わない?」

かぐや「うーん。確かに面白そうだけど、怒らないかしら?」

太助「大丈夫、大丈夫。すぐに本当のことを言えば、怒らないって」

かぐや「……そう? じゃあ、やってみようかしら」

場面転換。

町中。町の人たちがざわざわしてる。

太助「さあさあ、絶世の美女、かぐや姫だよ」

二郎「そんなかぐや姫を、この部屋に入れは、一目見ることができるよ!」

太助「それがたったの1文だ!」

二郎「どうだいどうだい?」

町の人1「俺、払う!」

町の人2「俺も俺も!」

太助「毎度ありー!」

場面転換。

部屋の中。

町の人1「……ごくり。か、かぐや姫。いるかい?」

かぐや「ここにいますよ」

町の人1「どうして、そっぽを向いているんだい? こっちを向いておくれよ」

かぐや「……そっちを見ていいのかしら?」

町の人1「もちろんだよ。早く、その美しいお顔を見せておくれ」

かぐや「……そう。……じゃあ、振り向くわね」

町の人1「っ!」

かぐや「……私、綺麗?」

町の人1「うわああーー! 幽霊だー!」

かぐや「なーんて、冗談よ、冗談」

町の人1「へ?」

かぐや「これ、化粧なの。ちょっと待ってね」

布で顔を拭うかぐや。

かぐや「ほら、どうかしら?」

町の人1「うわ……。本当に綺麗だ」

かぐや「ふふ。驚かせてごめんなさい」

場面転換。

二郎「へへ。いっぱい儲けが出たね」

太助「ね? みんな、結局は怒らなかったでしょ?」

かぐや「そうねえ」

二郎「じゃあ、今回の儲けも村に寄付するでいいの?」

かぐや「ええ。お願い。私が恩を受けたのはおじいさんおばあさんだけじゃないわ。この村のみんなにお世話になったんだもの」

そこにガラッと戸が開く。

おじいさん「大変じゃ、かぐや!」

かぐや「どうしたの?」

おじいさん「かぐやの噂を聞きつけて、5人の将軍が結婚を申し込んできたんじゃ」

太助「ええ!」

二郎「かぐやさん、結婚しちゃうの?」

かぐや「……うーん。そうね……」

場面転換。

将軍1「さあ、かぐや殿。この5人の中から、誰を選ぶのか?」

将軍2「もちろん、誰も選ばないというのは無しにしていただきたい」

将軍3「さあ、さあ、さあ!」

将軍4「誰を選ぶのか!」

かぐや「……それでは、私の条件を満たしてくれた方と結婚します」

将軍5「その条件とは?」

かぐや「ある物を持ってきていただきます」

将軍1「ある物とは?」

かぐや「仏の御石(みせき)の鉢(はち)、蓬萊(ほうらい)の玉の枝(えだ)、火鼠の裘(かわごろも)、龍の首の珠、燕の産んだ子安貝(たからがい)を、それぞれ持ってきてください」

将軍2「なっ! そんな物、持ってこられるはずがない!」

かぐや「では、私とのご結婚は諦めてください」

将軍3「ぐっ……」

将軍4「……逆に言うと、持って来れば結婚するということだな?」

かぐや「ええ。もちろんです」

将軍4「龍の首の珠だな。……わかった」

かぐや「……」

場面転換。

かぐや「ふう。これで大丈夫ね」

二郎「本当に、大丈夫?」

太助「もし、本当に持ってきたら……」

かぐや「平気平気。存在しないものなんだから、用意できるわけないわ」

二郎「でも……」

かぐや「ほらほら、心配してないで、これを用意してきて」

太助「……何に使うの?」

かぐや「うふふ。ひ、み、つ」

場面転換。

将軍1「さあ、持ってきたぞ。仏の御石(みせき)の鉢だ」

かぐや「……只の鉢ですよね? これ」

将軍1「くっ!」

場面転換。

将軍3「火鼠の裘(かわごろも)だ!」

かぐや「火を付けてみましょう」

将軍3「え?」

火が付く音。

かぐや「燃えましたね。偽物です」

将軍3「くっ!」

場面転換。

太助「これで4人の将軍が偽物って証明できたわけか」

二郎「あと、1人。確か、龍の首の珠だったよね?」

かぐや「ええ。そうね。でも、龍は危険な場所にいると言われているから、帰ってこられないと思うわ」

場面転換。

将軍4「さあ、持ってきたぞ、龍の首の珠」

かぐや「……」

将軍4「では、私と結婚していただこう」

かぐや「……これは……偽物です」

将軍4「ほう? なぜ、そう思う?」

かぐや「龍が住む場所は人がいけるようなところではありません」

将軍3「だが、行ったのだから、文句は言わせない。もし、行けなかったというのなら、その証明をしてもらおう」

かぐや「……」

将軍3「ふふ。どうやら、偽物である証明が出来ないようだな。では、大人しく、我が妻に……」

かぐや「いえ、やはり偽物です」

将軍3「なんだと?」

かぐや「なぜなら……」

将軍3「……」

ガラッと戸を開く音。

かぐや「すでに私が龍を狩っていたからです」

将軍3「うわあああ! こ、これは……?」

かぐや「龍のはく製です」

将軍3「こ、こんなのは偽物だ!」

かぐや「偽物? では偽物の証明をしてください」

将軍3「龍が住む場所は人が行けるような場所ではないと言ったのは、そなたであろう」

かぐや「ですが、行けてしまったのです」

将軍3「龍を狩るなど、人ができるわけがない」

かぐや「できるわけがない、ですか。では、証明してください」

将軍3「うっ!」

かぐや「……お帰り下さい」

将軍3「くそ……」

場面転換。

二郎「ふう。冷や冷やしたぁ」

太助「あの材料は、このためだったんだね」

かぐや「ええ。これで、もう求婚してくる人はいなくなると思うわ。これで、心置きなく、物作りに集中できるわね」

ガラッと戸が開く音。

おじいさん「大変じゃ、かぐや」

かぐや「おじいさん、どうしたの?」

おじいさん「つ、月から使者が来て、かぐやを連れ帰ると行って来ておるんじゃ」

二郎「……かぐやさん」

太助「……どうするの?」

かぐや「……はあ。仕方ないわね。……太助。これを用意してきて」

太助「これって……?」

かぐや「月の使者を追い返すための物を作るための材料」

太助「それじゃ……」

かぐや「ええ。月に帰る気はないわ」

ナレーション「童話では、このあと、かぐや姫は月へ帰ったことになっています。ですが、本当はかぐや姫の機転で帰っていないというお話もあります。この危機をどう乗り切ったのか。それはまた、別のお話になります」

終わり。

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