【フリー台本】俺は彼女で、彼女は俺で

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
浩太(こうた)
勝巳(かつみ)
涼香(すずか)
由紀子(ゆきこ)

■台本

道路。浩太が歩いている。

浩太「……お? 勝巳だ。おーい!」

浩太が走り寄る。

勝巳「あ、浩太くん、おはよう」

浩太「おう! それより、昨日、あれ見たか? あなたの名は」

勝巳「見た見た! 面白かったよねー」

浩太「俺はあのアニメに、新たな希望を見つけた」

勝巳「……どういうこと?」

浩太「今の流行りってなんだ?」

勝巳「えっと、異世界転生?」

浩太「そうだ。俺達も、色々試したじゃん。どうにかして異世界に転生できないかって」

勝巳「うん。結構、死にかけたよね」

浩太「けどさー。どう考えてもリスクが高いと思うんだよ。だって、死んだときに転生できなかったら終わりだろ」

勝巳「まあ、そうだね。もし、転生できなかったら死に損だもん」

浩太「けどさ、あなたの名はみたいに、入れ替わりならリスクが低いと思わないか?」

勝巳「……確かに」

浩太「だから、今度からは入れ替わりの方を重点的に試していかないか?」

勝巳「うん。いいと思うけど、どうやるの? あなたの名はみたいな状況だって、作るの難しいと思うけど」

浩太「だから、俺は色々と調べたんだ」

勝巳「調べた?」

浩太「ああ。実はかなり前にも入れ替わりものが流行った時があったんだ。そのときは、ぶつかるっていうのがキーポイントだったんだ」

勝巳「どういうこと?」

浩太「つまり、二人がぶつかったショックで、お互いの意識が入れ替わるってやつだよ」

勝巳「おおー。なるほど。けど、ぶつかるって、どのくらいの勢い? ちょっとぶつかる程度じゃダメなんだよね?」

浩太「ああ。結構なショックじゃないと無理だろうな。その辺はこれから検証していこう」

勝巳「そうだね。楽しみになってきた」

浩太「これで、彼女いない歴イコール年齢ということも卒業できる!」

勝巳「入れ替われば、お互いのこと好きになるよね」

浩太「読んだ漫画だと、全部、主人公とヒロインがくっついて終わってた。彼女になる率100パーセントだ」

勝巳「うわー、楽しみー」

そこに涼香がやってくる。

涼香「……おい、オタども。朝からキモイ話してんじゃねーよ。どけ!」

浩太「あ、うん」

浩太と勝巳が道を譲る。

涼香「ふん!」

涼香がズカズカと歩き去って行く。

浩太「……」

勝巳「……そういえば、浩太くんと涼香さんって、幼馴染なのにフラグ立たないね」

浩太「おい、やめろ。俺の崇高な趣味も理解できないような奴とフラグなんて立ってたまるか」

勝巳「誰と入れ替わるかも、ちゃんと考えないとね」

浩太「ああ。変な奴と入れ替わったら終わりだからな」

場面転換。

学校のチャイム。

浩太「よし、それじゃ、さっそく入れ替わりの検証をしていこう」

勝巳「どのくらいの勢いか、ってところだね」

浩太「肩がぶつかったくらいで入れ替わるなら、世の中、入れ替わりが起こってばっかりだからな。相当なショックが必要だと思う」

勝巳「浩太くんが読んでた漫画だと、どんな感じだったの?」

浩太「うーん。階段から一緒に落ちるっていうのが多かったかな」

勝巳「ええー。それ、危ないよ」

浩太「だよな。お互いの安全を確保しつつ、入れ替わりの検証をしていかないと、相手にも悪いし」

勝巳「……じゃあ、頭突きするっていうのはどう?」

浩太「頭突きか……。確かに、頭をぶつけ合うって言うのは入れ替わりしやすそうだよな。よし、それでいこう!」

場面転換。

浩太「あ、あの……」

由希子「なんですか?」

浩太「頭突きさせてください」

由希子「え? ……何言ってるんですか?」

浩太「お願いします。一回でいいんで」

由希子「嫌です」

浩太「じゃあ、ちょっとだけ。かすめるくらいでいいんで」

由希子「……気持ち悪いです」

浩太「いや、ホントに少しだけだから! 入れ替わろうとか、そんなこと考えてないから!」

由希子「止めてください! 助けて!」

浩太「ええい! こうなったら実力行使だ!」

ブンと頭を振る音。

由希子「きゃあああああー!」

場面転換。

浩太「……」

勝巳「て、停学にならなくてよかったね。反省文で済んでよかったよ」

浩太「くそ……。今回のことで、みんなに警戒されちゃったな」

勝巳「そうだね。近づこうとしただけで、叫ばれちゃうもんね」

浩太「まいったなぁ。こうなったら、後ろからやるしかないか」

勝巳「ダメだよ。次やったら停学確定……下手したら退学になっちゃうって」

浩太「けど、こんなことで入れ替わりを諦めるのか? これじゃ、俺達ずーっと彼女がいない人生を送ることになるんだぞ」

勝巳「そ、それは嫌だけど……」

浩太「とにかく、多少強引でも、やるしかないんだ!」

勝巳「……そうだ! 相手に気づかれないようにやればいいんじゃない?」

浩太「だから、後ろからやるって話だろ?」

勝巳「ううん。それだと、気づかれたら終わりでしょ?」

浩太「そりゃそうだけど、他にどんな方法があるんだ?」

勝巳「例えば、眠らせるとか」

浩太「なるほど! 確かに寝ていれば、逃げられることもないし、失敗もしないな」

勝巳「でしょ?」

浩太「けど、どうやって眠らせる?」

勝巳「普通だとクロロホルム……だっけ? 後ろからガバッて」

浩太「……それをやるのに失敗しそうだけどな」

勝巳「そっか。じゃあ、スタンガンとか?」

浩太「買う金ないって」

勝巳「……じゃあ、首筋に手套入れるとか?」

浩太「それしかなさそうだな」

勝巳「後ろから素早くだね」

浩太「よし! じゃあ、もう一回、由紀子ちゃんにアタックだ!」

涼香「……由紀子がなんだって?」

浩太「げっ! 涼香!」

涼香「お前なぁ。由紀子、めちゃくちゃ怖がってたぞ。その分、ボコボコにされる覚悟はできてるんだろうな?」

浩太「いや、これには深いわけが……」

涼香「どうせ、くだらない理由だろ? 金輪際、由紀子に近づけないように、私が教育してやるよ」

浩太「うわあ、助けてー!」

浩太が階段を駆け上がる。

涼香「おら、待てー!」

涼香も追いかけるために、階段を駆け上がる。

浩太「ぎゃーー」

ツルっと滑る音。

浩太「うわわっ!」

涼香「え? お、おい!」

浩太「わわわわわ!」

涼香「あぶねえっ!」

浩太「うわあああああ」

涼香「うわあああああ」

浩太と涼香が階段を転がっていく。

勝巳が駆け寄る。

勝巳「二人とも、大丈夫?」

涼香「ああ、なんとか」

浩太「いつつ……。おい! 浩太、てめえ、あぶねーだろうが!」

涼香「ごめん、ごめん。お互い、無事だったんだからいいだろ……って、あれ?」

浩太「へ? なんで、私が目の前にいるんだ?」

涼香「俺だ……。え? え? 鏡じゃないよな?」

浩太「どうなってんだ、これ?」

涼香「ま、まさか……」

勝巳「……入れ替わっちゃったとか?」

浩太・涼香「嘘だーーーー!」

終わり。

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