【フリー台本】恋愛の極意
- 2022.06.05
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
大智(だいち)
敬(けい)
沙奈(さな)
男×2
■台本
大智(N)「春の風がそよぐ中、彼女は友達と話しながら俺の前を横切った。それはまさに、一目惚れだった」
場面転換。
敬「いやあ、沙奈ちゃんは可愛いよなぁ」
大智「俺はやるぞ、敬。絶対に、沙奈ちゃんと付き合ってみせる!」
敬「へー。大智にしては随分とやる気だな」
大智「ここまで人を好きになれたのは初めてだよ」
敬「そっか。頑張れよ。……けど、何か策はあるのか?」
大智「ああ。実は秘策がある」
敬「ホントか? どんな秘策だ?」
大智「ふふ。まあ、見てろって」
場面転換。
沙奈が歩いている中、ズンズンと大智が歩いて行く。
そして、ドンとぶつかる。
沙奈「きゃっ!」
沙奈が倒れ込む。
大智「……ああ、ごめん。けど、そっちがよそ見してたのが悪いだろ」
沙奈「ご、ごめんなさい……」
大智「ふん……」
ズカズカと歩いて行く大智。
場面転換。
敬「……おい、大智。お前、最低だな」
大智「ん? ああ、もしかして、沙奈ちゃんとぶつかった時の話か?」
敬「沙奈ちゃん、あのあと、泣いたみたいだぞ」
大智「そうかそうか。ふふ」
敬「……おいおい。お前、完全に沙奈ちゃんに嫌われたぞ」
大智「よし」
敬「……終わったな、お前」
大智「いやいや。これは作戦だよ、作戦」
敬「はあ?」
大智「いいか。沙奈ちゃんは可愛い。とっても。ってことは、男に山ほど言い寄られているはずだ」
敬「まあ、そうだな」
大智「そんな中、普通のアプローチだと、沙奈ちゃんの記憶には残らないはずだ」
敬「……んー。まあ、そうだな」
大智「だから、インパクトのある出会いにしたんだ」
敬「確かに、インパクトはあったと思うぜ。けど、それって嫌いな奴って記憶に残ったはずだぞ」
大智「そう! それだ! つまり、沙奈ちゃんの記憶に俺が残ったってところがポイントだ」
敬「嫌われてもか?」
大智「甘いな、敬。記憶に残るというのは、かなりのアドバンテージなんだ。記憶にさえ残らないなんて話にならない。それに、初対面の評価は覆した時に、かなり効果があるんだよ」
敬「評価を覆す……。ああ、なるほど。不良がいいことをするとー、みたいな感じか?」
大智「そうそう、それ! 見てろ。これから、沙奈ちゃんの意識をひっくり返してみせるぜ」
場面転換。
部室内。
大智「こんにちは。今日から入ることになった大沢大智です」
沙奈「……あっ!」
大智「……ん? なに? 俺の顔になんかついてる?」
沙奈「い、いえ……別に」
大智「ふーん……」
場面転換。
敬「お前さー、評価をひっくり返すんじゃないのかよ?」
大智「ちっちっち。甘いな。あれはわざとだよ、わざと。沙奈ちゃんはモテるっていっただろ? だから、他の男はすぐに言い寄るんだ」
敬「そうだな」
大智「だから、その他の男と同じ行動をとってたら、俺は埋もれちまうんだよ。だから、敢えて、こっちは覚えてません、あなたないは興味ありませんって態度を取る。そうすれば、沙奈ちゃんからしたら、ちょっと周りの人とは違うなって思うはずだ」
敬「なるほど。自分の印象をさらに強くするためか」
大智「そうそう。で、同じサークルに入ったから、会う機会も多くなる。で、俺が目に付けば、俺を意識するようになるはず」
敬「そこで評価をひっくり返すってわけか」
大智「どうだ?」
敬「いや、スゲーよ!」
大智「ふふ。これで沙奈ちゃん攻略に大きく前進だ」
場面転換。
男性1「それじゃ、打ち上げを始めまーす、カンパーイ!」
大勢の声「カンパーイ!」
場面転換。
沙奈「あれれ? ちょっと飲み過ぎちゃったかな」
大智「おいおい、大丈夫か?」
沙奈「平気ですー」
男性2「沙奈ちゃん、少し休んだ方がいいよ。はい、お水」
沙奈「ありがとうございますー」
男性2「沙奈ちゃん、今日はもう帰った方がいいよ。終電だって近いし」
沙奈「えー、でも、今帰るのは寂しいですよー」
男性2「何言ってんの。飲み会はまた開催するから、今日はもう帰ろう、ね?」
沙奈「ううー。先輩がそういうなら……」
立ち上がる沙奈がフラフラする。
沙奈「おっとっと……」
男性2「おいおい、フラフラじゃないか。しょうがないなー。駅まで送ってくから、ほら、おぶされ」
沙奈「わー、先輩、優しい―」
大智「……」
場面転換。
敬「……いや、あれはかなりのチャンスだっただろ。なんで、お前が送らねーんだよ」
大智「計算通りだよ」
敬「嘘付け」
大智「大体、まだ沙奈ちゃんとはそこまで仲良くなってないっていうか、まだ少し警戒されているくらいだぞ。その状態で送るなんて言ったら、断られるだろ」
敬「まあ……そりゃそうか」
大智「それに、あの先輩はライバルポジってわけだ」
敬「なんだそりゃ?」
大智「いいか。恋愛にとって大事なのは恋のライバルがいることだよ。そのライバルに打ち勝ってこそ、さらに沙奈ちゃんの、俺への評価が上がるってわけだ」
敬「勝てるのか?」
大智「ふふん。その辺はリサーチ済み。沙奈ちゃん、ああ見えてがっちりした人が好みらしいんだ」
敬「ああ、あの先輩、ヒョロっとしてるもんあ」
大智「それに比べ、俺はずっと筋トレしてきた。見ろ、この筋肉を!」
敬「おおー、スゲー!」
大智「ってことで、期も熟した。次の大学祭でビシッと決めて、大勝利を収める」
場面転換。
沙奈が歩いている。
沙奈「ふう……。重いな……」
大智「半分、貸せよ」
沙奈「え? 大智君? い、いいよ。悪いし」
大智「いや、女の子に重い物持たせて、何もしない方が、周りの目が痛いから」
沙奈「そ、そっか。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
大智「おう」
大智が荷物を持つ。
大智「……軽いな。そっちも全部持つわ。貸して」
沙奈「で、でも……」
大智「ほら、早く」
沙奈「ありがとう……」
並んで歩き出す2人。
沙奈「大智君って、力あるんだね」
大智「そうか? 普通だろ」
沙奈「……えっとさ、大智君ってさ」
大智「ん?」
沙奈「思ったより、優しいんだね」
大智「……そうか?」
沙奈「うん、大智君は覚えてないかな? 始めて会ったときに、ぶつかったこと」
大智「ぶつかった?」
沙奈「ひどーい、覚えてないの? よそ見してた私の方が悪いって言ったんだよ。女の子に対して、酷くない?」
大智「あー、そうか。すまん」
沙奈「もー、今更謝られてもな―。……それにさ、大智君って、ちゃんと私と普通に接してくれるよね」
大智「どういうこと?」
沙奈「ほら、なんていうかさ……。男の人って、いつも妙に私に優しくしてくれるんだけど……。だけど、大智君は違ったよね。他の女の子と同じように私に接してくれた」
大智「普通のことだろ」
沙奈「そうなんだけどさ。ちょっと、新鮮だな―って」
大智「……」
沙奈「最初はさ、大智君、私のこと嫌いなのかなって思って警戒してたけど、ただ、ぶっきらぼうなだけだったんだね。それに、こうして荷物も持ってくれて、優しい所もあるんだなーって」
大智「……」
沙奈「大学祭、頑張ろうね」
大智「なあ……。よかったらだけど……」
沙奈「ん? なに?」
大智「その……大学祭、一緒に回らないか?」
沙奈「ごめんね、無理」
大智「へ?」
沙奈「私、先輩と付き合ってるから、先輩と回るんだ」
大智「ええええええ!」
場面転換。
敬「まあ、その……元気出せ」
大智「うおーーーー! なんでだー! 漫画だと、これで上手くいってたのに―!」
終わり。
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