【フリー台本】苦手な人

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■概要
人数:2人
時間:5分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
優希(ゆうき)
美乃利(みのり)

■台本

優希(N)「誰にだって、苦手な人っていうのはいると思う。もちろん、僕にもいた。それは、隣に引っ越してきた、美乃利ちゃんだ。始めて美乃利ちゃんを見た瞬間に感じたのは、言葉にならない、なんていうか、危険というものだった。別に美乃利ちゃんから、意地悪をされたわけでも、無視されたわけでもない。……逆に、内気な僕のことを嫌わないで、他の子と一緒に扱ってくれる。……それでも僕は、美乃利ちゃんを避けていたんだ」

場面転換。

美乃利「ねえ、優くん。今度のお休みなんだけど、家に遊びに来ない? お母さんがケーキを焼くから、食べにおいでって」

優希「あー、うん。ありがとう。でも、ごめんね。僕、出かける予定なんだ」

美乃利「そっか。それなら仕方ないね。じゃあ、優くんのために、取っておいて、後で持って行ってあげるね」

優希「あ、ありがとう……。それじゃ、もう行くね。バイバイ」

美乃利「うん、バイバイ。気を付けて帰ってね」

場面転換。

道を歩く優希。

そこに美乃利が走って来る。

美乃利「優くーん!」

優希「あ、実乃梨ちゃん……」

美乃利「今日は早いんだね」

優希「ああ、日直なんだ」

美乃利「へー。大変だね」

優希「仕方ないよ」

美乃利「じゃあ、今日は一緒に行こうか」

優希「え?」

美乃利「学校。せっかく会ったんだからさ」

優希「う、うん……」

美乃利「優くんさー、いつもこの時間に起きればいいのに」

優希「え?」

美乃利「そうすれば、毎日、一緒に学校行けるでしょ? 一人だとつまんないからさ」

優希「……でも、眠いから」

美乃利「うーん。今日、起きれるなら起きれると思うんだけどなー」

優希「……」

美乃利「そう言えば、もうすぐバレンタインだね。優くんは去年、何個もらったの?」

優希「何個もなにも、一個も貰ってないよ」

美乃利「へー、そうなんだ?」

優希「そうだよ……」

場面展開。

廊下を歩く優希。

そこに美乃利が走って来る。

美乃利「あ、優くん、今帰り?」

優希「美乃利ちゃん……」

美乃利「今日、掃除当番で遅くなっちゃってさー。いつも一緒に帰ってる真希ちゃん、先に帰っちゃったんだよね」

優希「そ、そうなんだ」

美乃利「だから、一緒に帰ろ?」

優希「でも、僕、その……寄るところあるから」

美乃利「なら、私も付き合うよ」

優希「そんなの悪いよ」

美乃利「……私と一緒に帰るの、嫌?」

優希「そ、そういうわけじゃないけど……」

美乃利「あのさ、前々から思ってたんだけど、優くん、私のこと、嫌いなの? 私、なにか嫌われることしたかな?」

優希「違うよ。美乃利ちゃんは悪くないんだ。僕のせいっていうか、気持ちって言うか、なんていうか……」

美乃利「変なの」

優希「ごめん……」

美乃利「でもさ、私のこと、嫌いってわけじゃないんだよね?」

優希「うん。嫌いなんかじゃないよ」

美乃利「そっか。それなら安心した。じゃあ、今日は一人で帰るね」

優希「ごめんね……」

美乃利「それじゃ、バイバイ」

優希「バイバイ……」

美乃利が走って行く。

優希「……なんだろ、この胸のモヤモヤ」

場面転換。

教室内。

美乃利「優くん、ちょっといい?」

優希「え? な、なに?」

美乃利「ちょっとこっち来て」

優希「う、うん……」

場面転換。

美乃利「はい。チョコレート」

優希「え?」

美乃利「バレンタインデーでしょ? さすがにみんなの前で渡すのは恥ずかしいからさ」

優希「ぼ、僕に?」

美乃利「ふふ。そりゃそうだよ。わざわざ呼び出したんだからさ」

優希「……」

美乃利「受け取ってくれる?」

優希「あ、ありがとう」

美乃利「これからも仲良くしてね。ふふ」

優希「あ……」

優希(N)「このとき、僕は気づいた。どうして美乃利ちゃんのことを避けていたのか。……それは、一緒にいたら美乃利ちゃんのことを好きになっちゃうから。そして、僕の予感は当たっていて、僕はこの日、美乃利ちゃんのことを好きになってしまった。そして、それから5年間、美乃利ちゃんへの想いに悩まされることになるのだった」

終わり。

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