じゃんけん
- 2022.07.11
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
こうた
えんき
けんじ
教師
クラスメイト×2
■台本
教師「はい。みなさん、席について。今日は新しいお友達を紹介します」
こうた「こ、こうたって言います。よろしくお願いします」
教師「いいですか。みなさん。ここにはたくさんのお友達がいます。自分と比べて変わっている、劣っているところがあったとしても、それは個性です。意地悪せずに、みんな仲良くしてください」
教室の生徒たち「はーい」
えんき「……」
けんじ「……けっ!」
場面転換。
教師「はい。今日は体力測定を行います。いいですか。他の人と比べて落ち込んだり、得意げになったりしたらいけませんよ。あくまでも、比べるのは過去の自分とです。じゃあ、まずは50メートル走から」
場面転換。
歓声が上がる。
教師「うわ、すごい。けんじくん、新記録です。5.3秒!」
けんじ「へへっ! ざっとこんなもんよ」
教師「はい、じゃあ、次」
こうた「……」
けんじ「おい、どうしたよ、新入り? 早く走る準備しろよ」
こうた「あ、あの……」
えんき「せんせー」
教師「どうしました、えんきくん」
えんき「こうたの奴は50メートル走はいいんじゃね?」
教師「……あ、そうですね。じゃあ、こうたくんは列から外れてください」
こうた「はい」
こうたが列から抜ける。
こうた「あ、あの……」
えんき「ん?」
こうた「ありがと」
えんき「は? なんで礼を言うんだよ。俺は単にお前が遅そうだから言っただけだ」
こうた「そ、そうなんだ……」
場面転換。
歓声が上がる。
教師「うわー。こうたくん、凄い! さすがね。反復横跳びは今までで一番の記録かも」
こうた「えへへへ」
えんき「やるじゃねーか」
こうた「あ、ありがとう」
けんじ「けっ!」
場面転換。
教師「じゃあ、今日の授業はこれで終わります。では、掃除当番の方たちは後片付けをお願いします」
生徒たち「はーい」
こうた「よし、返ろうっと」
けんじ「よお、新入り」
こうた「け、けんじくん。なに?」
けんじ「ここじゃ、あるルールがあるのを知ってるか?」
こうた「ルール?」
けんじ「ここは何かと争ごとが多くなる。それはわかるな?」
こうた「う、うん」
けんじ「で、喧嘩にならないように、揉めた時はじゃんけんで決めることになってるんだ」
こうた「……じゃんけん?」
けんじ「ああ。石を表すグー。ハサミを表すチョキ。で、紙を表すパー」
こうた「……」
けんじ「チョキはグーに勝てないんだ」
こうた「え?」
けんじ「ハサミで石を切れるか?」
こうた「ううん」
けんじ「まあ、そういうことだ」
こうた「……」
けんじ「で、今日、俺、掃除当番なんだけど、代わってくれよ」
こうた「あ、あの、今日はちょっと……」
けんじ「嫌なのか?」
こうた「う、うん」
けんじ「じゃあ、じゃんけんだ」
こうた「ええ!?」
けんじ「なんだよ。揉めたらじゃんけん。ここでのルールだ。だよな?」
クラスメイト1「え? あ、うん」
けんじ「ってことで、じゃんけんだ」
こうた「……」
けんじ「じゃーんけん、ぽん!」
こうた「……」
けんじ「はい、俺の勝ち! じゃあ、掃除当番よろしくな」
こうた「そ、そんな……」
場面転換。
床を掃く音。
こうた「……はあ」
えんき「ん? こうた、何やってんだ?」
こうた「……掃除当番、代わって欲しい言われて……」
えんき「断ればいいじゃん」
こうた「じゃ、じゃんけんで決めるって言われて」
えんき「……はあ。けんじの奴だな。しょうがねーな」
ホウキを掴んで床を掃き始めるえんき。
こうた「え? えんきくん?」
えんき「……暇だから、暇つぶし。別にお前のためじゃねーから」
こうた「あ、ありがとう」
えんき「だーかーら! お前の為じゃねーっての」
場面転換。
こうたが歩いている。
そこにけんじ達がやってくる。
けんじ「よお、新入り!」
クラスメイト2「よお、新入り!」
こうた「な、なに?」
けんじ「俺達、これから遊びに行くから、荷物を俺たちの家に届けておいてくれよ」
クラスメイト2「そうそう。届けてくれよ」
こうた「え? で、でも……」
けんじ「嫌なのか? じゃあ、じゃんけんで決めようぜ」
こうた「え?」
けんじ「じゃーんけん」
クラスメイト2「ぽん!」
こうた「……」
けんじ「はい、俺たちの勝ちー。じゃあ、頼んだぞ」
クラスメイト2「頼んだぞ!」
どさどさと荷物を置く音。
こうた「……」
場面転換。
よろよろ歩く、こうた。
こうた「はあ、はあ、はあ」
えんき「ん? こうた。どうしたんだ? そんなに荷物を抱えて」
こうた「あ、えんきくん。実は……」
場面転換。
えんき「なるほど……」
こうた「……」
えんき「ほら、少し貸せよ。持ってやる」
こうた「え? いいよ。この前も掃除手伝ってもらったし」
えんき「無理すんなよ。体、壊すぞ」
こうた「だ、大丈夫だよ。丈夫だから」
えんき「……じゃあ、じゃんけんで決めようぜ」
こうた「え?」
えんき「負けた方が、勝った方の荷物を持つ。どうだ?」
こうた「う、うん……。いいよ」
えんき「じゃーんけん」
こうた「ぽん!」
えんき「あ、負けた!」
こうた「え!?」
えんき「しゃーねーな。荷物持つからよこせ」
こうた「ちょ、ちょっと待ってよ!」
えんき「なんだよ? じゃんけんで決まったんだから、従うのがルールだろ」
こうた「でも、でも……。おかしいよ」
えんき「何がだよ?」
こうた「僕はカニだよ?」
えんき「見りゃ、わかる」
こうた「僕、チョキしか出せないの、わかっててどうして、パーを出すの?」
えんき「うるせーな。何を出そうと、俺の勝手だろ」
こうた「……」
えんき「あー、そうだ。次、あいつらからじゃんけん勝負を挑まれたら、こう言ってやれ……」
場面転換。
けんじ「じゃあ、じゃんけんで勝負だな」
こうた「ちょ、ちょっと待って。これを見てほしいんだ」
けんじ「なんだよ?」
こうた「えい!」
バキという破壊音。
こうた「僕のハサミは石も砕くことができるんだ」
けんじ「……」
こうた「じゃんけん、する?」
けんじ「いや、いい」
けんじが逃げていく。
えんき「上手くいったな」
こうた「えんきくん、ありがとう」
えんき「よし、じゃあ、お前ん家行くか」
こうた「うん」
えんき「まさか、この前やった柿の種が育つなんてなー」
こうた「いっぱい、柿が成ったんだよ」
えんき「よし、じゃあ、じゃんけんだ」
こうた「え?」
えんき「負けた方が、柿の木に登って、柿を取って来る」
こうた「で、でも……」
えんき「おいおい。ここのルールを忘れたのか。ほら、いくぞ」
こうた「う、うん……」
えんき「じゃんけん」
こうた「ぽん!」
終わり。