省エネ

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
翔太(しょうた)
力也(りきや)
母親

■台本

セミの鳴く声。

場面転換。

翔太の部屋。

翔太「あちぃ……」

力也「早くアイス食おうぜ。溶けちまう」

翔太「そうだな」

ガサガサと袋を漁って、アイスを取り出す。

食べ始める二人。

翔太「あー。生き返る……」

力也「うめえっ! マジうめぇ! これなら千円払ってもいいわー」

翔太「マジで? じゃあ、千円くれ」

力也「いや、これ、自分で買ったし。てか、窓閉めて、エアコン入れようぜ。これ、ホント、熱中症になってるって」

翔太「あー、無理」

力也「なんでだよ?」

翔太「ほら、最近、電気代が上がったみたいじゃん? で、省エネしろって、母ちゃんに言われた」

力也「あー……。それ、俺も母ちゃんに言われたわ。おかげで、夜が寝苦しいのなんのって」

翔太「わかる。俺さ、暑すぎてイライラして、つい、寝る前にエアコン入れて、そのまま寝落ちしちまって、次の日、めっちゃ怒られた。次やったら小遣い減らすって脅されてるんだよね」

力也「てかさ、今は、地球温暖化なんだから、暑いのは当然だよな。それなのに、エアコンダメって、拷問だろ」

翔太「夏の間、ずっとこれなんて、耐えるの無理だよな」

力也「なんとかいい方法ねーかな? コンビニとか図書館行くにわざわざ行くのもめんどいし」

翔太「……そうだ! いいこと思いついた」

力也「なんだ?」

翔太「今って、暑いから辛いんだよな?」

力也「ああ」

翔太「じゃあ、暑く感じなければいいんじゃないか?」

力也「暑く感じないって……どういうことだ? あれか? 心頭滅却的な感じか?」

翔太「いや、それだと、単に我慢してるだけだろ。そうじゃなくて、そもそも、このくらいの暑さなら、暑いって感じないくらいになればいいんだよ」

力也「うーん……。どういうことだ?」

翔太「例えば、砂漠に住んでる人が、ここにいれば涼しいくらいって言うんじゃないか?」

力也「……あっ! なるほど」

翔太「気づいたか?」

力也「つまり、もっと暑くして、暑さの耐久力を上げるってことだな?」

翔太「そうだ。そうすれば、この夏はエアコンを使わなくても難なく過ごせるってわけだ」

力也「おお! よし! やるか! ……っで、具体的にはどうするんだ?」

翔太「まずは、窓を閉める」

窓をピシャリと閉める音。

力也「うお! 一気に蒸し暑くなったな」

翔太「次に……」

クローゼットを開け、中から服を取り出す。

翔太「重ね着する!」

力也「うおお……。これは凄まじいな」

場面転換。

力也「はあ、はあ、はあ……。汗が止まらねえ」

翔太「ふふ。だらしないな。もうギブアップか?」

力也「……バカ言うな。全然余裕だね。そういうお前こそ、もう限界なんじゃねーか?」

翔太「へー。じゃあ、もう一段階上げるか?」

力也「なんだ?」

翔太「汗かいた分、水分補給と行こうぜ。……熱々のカップ麺で!」

力也「ぐっ! の、臨むところだ!」

場面展開。

らーめんとすする音。

力也「はふ、はふっ! うおっ! 熱い!」

翔太「いやー、暑い部屋食べる熱々のラーメンは上手いなぁー」

力也「そうだなー。めっちゃうまいな」

翔太「……そろそろギブアップしろよ」

力也「へっ! こんなの余裕だっての!」

翔太「ほうほう! じゃあ、これなら……どうだ!」

ピッとボタンを押すと、エアコンが起動する。

そして、ゴーっと風が吹き出す。

力也「ま、まさか……お前……」

翔太「ふふふ。暖房だ! どうだ!? もうヤバいだろ?」

力也「けっ! 余裕だね」

翔太「……そのやせ我慢、いつまでもつかな?」

場面転換。

ゴーっと熱風が吹き出す音。

翔太「はあ、はあ、はあ……。このままじゃらちがあかないな。もう3度上げようと思うんだが、どうだ?」

力也「いいぜ! やれよ!」

翔太「バカが! 後悔しやがれ!」

ピッピッピと温度を上げる音。

ゴーっという風が勢いを増す。

力也・翔太「ぐあーーーー!」

場面転換。

ゴーっという風が吹き続いている。

翔太「はあ、はあ、はあ……。目の前がかすんできた」

力也「なあ、このままだと共倒れだ。どうだ? ここは引き分けってことにしないか?」

翔太「そ、そうだな。十分、暑さの耐久力は付いたはずだ」

ピッとエアコン子を消す音。

翔太「そして、服を脱ぐ!」

力也「あちい! あちい!」

服を脱ぐ音。

翔太「そして……窓を開ける!」

ガラッと窓を開ける音。

翔太・力也「うおおおおおおお!」

力也「すげえ! めっちゃ涼しい!」

翔太「まるで天使の息吹のようだ!」

力也「ふははははは!」

翔太「やった! やったぞ! 俺達は強大な暑さの耐久力を手に入れたのだ!」

力也「夏よ! かかって来な!」

翔太・力也「はははははははは!」

場面転換。

セミの鳴く声。

場面転換。

母親「日曜日だからって、ダラダラ寝てないで、起きてきなさい!」

翔太「……うーん」

ガバッと起き上がる音。

翔太「……あちぃ」

場面転換。

ガチャリとドアを開ける音。

翔太「おはよー。朝飯は?」

母親「もう昼よ」

翔太「ねえ、暑いからエアコン付けて」

母親「何言ってるの。今は、省エネ中。これくらいの暑さは我慢する!」

ガサガサと紙を出す、母親。

母親「見て! 今月の電気代! 随分と安く……」

紙を持つ手がプルプルする母親。

翔太「どうしたの?」

母親「あんた! エアコンガンガン付けたわね!」

翔太「へ? そんなわけない……」

母親「じゃあ、なんで、こんなに電気代がかかってるのよ!」

翔太「……あっ! あの時の暖房……」

母親「罰として、小遣いなしだからね!」

翔太「ぎゃー! そんなぁー!」

終わり。

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