パーフェクトエージェント
- 2022.08.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
ジーク
キース
青年
■台本
ジーク「諸君、君たちはこれから、一流のエージェントを目指すことになる。しっかり、訓練についてきてくれ」
大勢の声「はい!」
キース「……」
青年「あの、あなたのような、一流の……パーフェクトと呼ばれるエージェントになるには、何が必要ですか?」
ジーク「そうだな。一定のランクのエージェントには努力次第でなれる。だが、トップクラスのエージェントになるには、一種の資質というものが必要になるんだ」
青年「それは……?」
ジーク「教えて身に付くものではない。だから、そのことについては考えず、訓練に励んでほしい」
青年「確かに教わって身に付くことではないかもしれません。ですが、意識することで近づくことはできるかもしれないんじゃないですか?」
ジーク「……これは本能みたいなものだ。変に意識すると、返って、自分の才能を削ることになる」
青年「ですが……」
ジーク「大丈夫だ。訓練を潜り抜け、最後の一人に残れば、一流の……パーフェクトと呼ばれるエージェントになれるさ」
青年「……」
キース「あの……」
ジーク「ん? なんだ?」
キース「一流の……パーフェクトと呼ばれるようなエージェントを目指さなくてはいけないものなのでしょうか?」
ジーク「なんだ? エージェントになりたくないということか?」
キース「いえ。エージェントになりたいと思いますし、そのための技術を全力で吸収するつもりです。ですが、自分はパーフェクトと呼ばれるほどの人間になれる自信がありません」
青年「そんな思いなら、エージェントになるのなんか、やめろよ。そんな考えなら、一流なんかになれるわけがない」
キース「……」
ジーク「エージェントにはなりたいんだな?」
キース「はい」
ジーク「なら、訓練を全力で潜り抜けろ。それだけを考えろ」
キース「はい」
青年「……ふん!」
ジーク「訓練とはいえ、実戦で学んでもらうことになる。くれぐれも気を抜かないように」
大勢の声「はい!」
場面転換。
ジーク「……よくやった。この難しいミッションをこれだけ早い時間で成功させたのは、驚きを隠せない」
青年「はいっ!」
ジーク「だが、作戦は無茶だと言わざるを得ない。実際に、2名が犠牲になった」
青年「今回のミッションは時間が最重要でした。時間がかかればかかるほど、成功率は下がります。多少、無理をしなければ達成はできませんでした」
ジーク「なるほど。わかった」
青年「ミッションの成功が全てにおいて優先されます。犠牲になったエージェントだって、そう覚悟していたはずです」
ジーク「もう下がれ」
青年「……はい」
場面転換。
キース「……」
ジーク「どうした? Bチームはミッションを達成したぞ」
キース「……別にBチームと争うつもりはありません。自分の目的は、どう、ミッションを達成するか、ですから」
ジーク「だが、それも、期限が迫っている。何もしないで、失敗する気か?」
キース「……ミッションを成功させることも必要ですが、成功の確率を上げることも重要です」
ジーク「そのために、ギリギリまで作戦を練っている、ということか」
キース「はい。犠牲者を出さないためにも、直前までの情報は必要です」
ジーク「犠牲者、か。ミッションの成功と、エージェントの命。どちらが大切だと思う?」
キース「ミッションです」
ジーク「……そうか」
キース「だからこそ、犠牲を出さない方法を考えています」
ジーク「……どういうことだ?」
キース「犠牲者を出せば、今回のミッションは成功するかもしれません。ですが、次のミッションの成功率は大きく下がります」
ジーク「なるほど。次のミッションを成功させるのために、今回のミッションでは犠牲を出さない方法を考えている……と」
キース「はい」
ジーク「ふむ。だが、そんなことは失敗したらまるで意味をなさない。成功させて始めて言うことが許される言葉だぞ」
キース「はい。……わかっています」
ジーク「……ふむ」
場面転換。
ドアをノックする音。
ジーク「入れ」
ドアが開き、青年とキースが入ってくる。
ジーク「5年の訓練期間、よくぞ耐えた」
青年「はい!」
キース「はい」
ジーク「20人いた、エージェント候補も、半数の10人になった」
青年「……ミッションの為の必要な犠牲でした。自分は、彼らの意思を継いでいくつもりです」
キース「……」
ジーク「訓練期間が終わり、残った10名はエージェントとして、各地でミッションについてもらう」
青年「はい」
キース「……」
ジーク「で、2人を呼んだ理由だが、どちらかに、私の跡を継いでほしいと思ったからだ」
青年「……パーフェクトエージェントを?」
ジーク「ああ。2人とも、その実力はあると判断した」
青年「……」
キース「……」
ジーク「どうだ?」
青年「やらせてください! いえ、自分こそがパーフェクトに相応しいと考えています」
ジーク「ふむ。で、貴様の方はどうだ?」
キース「辞退します」
青年「全ての面において、自分の方が上という結果が出ています。自分は最高のエージェントになったと自負しております」
ジーク「辞退する理由は?」
キース「訓練開始時に言ったと思うのですが、自分はエージェントになれればそれでいいです。……それに」
ジーク「それに?」
キース「自分はパーフェクトには、まだ、ほど遠いです」
ジーク「まだ、か」
キース「自分は、これからも、技術の向上を目指します。ですが、それはミッションを成功させるためです。パーフェクトエージェントになるためではありません」
青年「……歯がゆいな。パーフェクトエージェントにはなれない。そう言ったらどうだ?」
キース「……その通りです。自分はきっと、パーフェクトエージェントには、届くことはないでしょう」
ジーク「わかった。では、私の跡は……」
ポンと肩を叩く音。
ジーク「貴様に継いでもらう」
キース「え?」
青年「どうしてですか!? 今、こいつはパーフェクトエージェントには届かないって、自分で……」
ジーク「そうだ」
青年「え?」
ジーク「パーフェクトエージェントは、名乗るものではない。認められるものだ」
青年「……」
ジーク「それに、パーフェクトエージェントは立ち止まるものにはなれない」
青年「え?」
ジーク「パーフェクトエージェントは、自分のことをパーフェクトと思った時点で、パーフェクトにはなれないのだ」
青年「……」
キース「……急に継げと言われても、困ります。自分一人では無理です」
ジーク「頼れ」
キース「え?」
ジーク「一人で無理なら、仲間を頼れ」
キース「……」
ジーク「大丈夫だ。貴様にはパーフェクトエージェントになれる資質が全て揃っている」
キース「……わ、わかりました」
ジーク「よし、頼んだぞ」
終わり。
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