ドキドキを利用して

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
知也(ともや)
光一(こういち)
実乃梨(みのり)

■台本

放課後の教室内。

知也「なあ、光一。吊り橋効果って知ってるか?」

光一「ああ。あれだろ? 危険なことが起こった時のドキドキを恋愛感情と勘違いするやつだろ?」

知也「そう、それそれ」

光一「それがどうかしたのか?」

知也「ふふふふ。聞いてくれ」

光一「やめとけ、知也」

知也「まだ、何も言ってねえ!」

光一「お前の企みなんて上手くいった試しがねーんだ。返って状況を悪くする方が多いんだから、あんまり変なこと考えるなよ」

知也「いやいや、今回こそはかなり自信あるんだって」

光一「その台詞は10回くらい聞いたことあるけど、わかったよ。言ってみろ」

知也「……実はな」

場面転換。

山の中にある吊り橋の上。

古くて、ギシギシと音を立てている。

光一「うおおーー! やべーって! マジで! 高い高い高い!」

知也「ふふふ。どうだ? この吊り橋って、高くて長いだろ? 誰が作ったかわからねーっていうのもあって、あんまり渡るやつがいねーんだよ」

光一「た、確かに……渡りたくねえな、こりゃ」

知也「どうだ?」

光一「どうだって言われてもな?」

知也「ドキドキしないか?」

光一「うーん。怖すぎて、なんか、他のことなんかどうでもよくなるぞ、これ」

知也「ふふ。じゃあ、ここで……」

ガンと橋の底を蹴る。

すると吊り橋が大きく揺れる。

光一「ぐわー! やばい! やばいって! おまっ! なにやってんだよ!」

知也「光一、落ち着け! 大丈夫だ。ほら、手を貸せ」

光一「……知也」

知也「ゆっくり渡るぞ。平気さ。崩れるわけないって」

光一「あ、ああ……」

二人が吊り橋を渡り切る。

光一「はー! 着いた。生きた心地、しなかったぜ」

知也「光一、俺を見ろ」

光一「……」

知也「どうだ?」

光一「これは惚れる」

知也「だろ?」

光一「でもよ、この吊り橋、本当に古くてヤバいぞ。万が一ってこともあるだろ?」

知也「……うーん。確かにな。ちょっと、強度検証をするか」

光一「強度検証?」

知也「吊り橋をめっちゃ揺らしたりするんだよ。ほら、石橋を叩くってやつだ」

光一「まあ、それは必要だろうな」

知也「よし、じゃあ、やるぞ」

吊り橋が揺れる音と、綱がぎしぎしときしむ音が響く。

場面転換。

山道を歩く知也と実乃梨。

知也「はあ、はあ、はあ……実乃梨ちゃん、……大丈夫?」

実乃梨「全然平気。これくらいの山なら、いつも登ってるもの」

知也「そ、そうなんだ……体力、あるんだね……。はあ、はあ」

実乃梨「それにしても知也くんが登山に誘ってくれるなんて珍しいね」

知也「ははは。ちょっと、実乃梨ちゃんに見せたいものがあってね」

実乃梨「へー。そうなんだ」

知也が立ち止まる。

知也「ふう。やっとついた。ここだよ」

実乃梨「え? ここって……」

知也「吊り橋。ここから見る風景がすっごくきれいなんだ」

実乃梨「……でも、私、吊り橋とか苦手なの」

知也「だいじょーぶだって。古そうに見えて、すっごい丈夫なんだよ」

知也が吊り橋を揺らし、ギシギシと音を立てる。

知也「ね?」

実乃梨「……」

知也「それにここを渡らないと頂上に行けないんだ」

実乃梨「で、でも……」

知也「大丈夫。手を繋いでゆっくり渡ろ?」

実乃梨「う、うん……」

二人がゆっくりと吊り橋を渡っていく。

実乃梨「うう……怖いよぉ」

知也「実乃梨ちゃん、あんまり下見ないようにね」

実乃梨「う、うん……」

知也「もう少しだから、頑張って」

実乃梨「うん」

知也「(小声で)光一、今だ」

突然、吊り橋が大きく揺れ始める。

物凄い、ギシギシという音。

実乃梨「きゃあ!」

知也「大丈夫! 俺に掴まって!」

実乃梨「うん!」

知也「実乃梨ちゃんのことは絶対に、守ってみせるから」

実乃梨「……知也くん」

そのとき、ブチっと綱が切れる音。

知也「へ?」

実乃梨「え?」

吊り橋の綱の一本が切れ、吊り橋が大きく揺れる。

知也「ぎゃあああああ!」

実乃梨「きゃああああ!」

光一「しまった! 石橋を叩きすぎたか!」

知也「うわあああああ!」

実乃梨「いやああああああ!」

吊り橋の揺れがおさまる。

知也「揺れが止まった……」

実乃梨「……」

知也「危ないから、早く渡り切っちゃおう」

実乃梨「う、うん……」

二人がゆっくりと吊り橋を渡り切る。

知也「わ、渡り切った……」

同時に二人が座り込む。

実乃梨「……」

知也「み、実乃梨ちゃん。ごめん。怖い思いさせて」

実乃梨「すごく、ドキドキしてる」

知也「俺も」

実乃梨「……あのね、知也くん」

知也「なに?」

実乃梨「なんだろ、すごく胸がドキドキして、ギュっと締め付けられるの」

知也「お、俺もだよ」

実乃梨「知也くんも?」

知也「うん」

実乃梨「……嬉しい」

知也「実乃梨ちゃん」

実乃梨「私……好きになっちゃった」

知也「……ごくり」

実乃梨「吊り橋が」

知也「へ?」

場面展開。

放課後の教室内。

実乃梨「ねえねえ、智也くん、次はここに行ってみたいの!」

雑誌を見せてくる実乃梨。

知也「……うわー。凄い高そうなところだね」

実乃梨「この辺で一番高くて、長い吊り橋なんだって。すっごいドキドキしてきちゃう! 楽しみだね」

知也「う、うん」

実乃梨「じゃあ、週末にね」

実乃梨が行ってしまう。

知也「……」

光一「だから言っただろ。お前の企みなんて上手くいった試しがねーって」

知也「……だな」

終わり。

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