右手が疼く厨二病

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
風間 颯真(かざま そうま)
教師
男子生徒1~4
不良1~2

■台本

学校の教室内。

颯真「くっ!」

教師「……風間くん。その目と右腕、どうしたの?」

教室中からクスクスと笑う声が聞こえる。

颯真「気にしないでください、先生。少し、疼くだけです」

教師「……大丈夫なの?」

颯真「心配は無用です。これは俺の為でもあり、みんなの為でもあるんです」

教師「……どういうこと?」

颯真「つまり、この眼帯と包帯は力を抑えるためにしているんです。もし、俺がこの封印を解けば、この教室……いや、学校自体が危険にさらされる」

教師「……えーっと、怪我とかではないのね?」

颯真「むしろ、逆と言っていいでしょう。いや、ある意味、怪我……と言ってもいいのかもしれないですが」

教師「そ、そう……。具合悪くなったら、保健室に行くのよ」

ドッと、教室中が笑いに包まれる。

場面転換。

体育の授業でサッカーをしている。

男子生徒1「ほら、颯真、パス!」

男子生徒1がボールを蹴る。

颯真「うわっ!」

男子生徒2「へへ、ボールいただき!」

颯真「あっ!」

男子生徒1「おい! せっかく、ゴール前ガラ空きだったのに、何やってんだよ」

颯真「ふん。仕方あるまい。右目が塞がれているんだからな」

男子生徒1「体育の時くらい、眼帯取れよ」

颯真「おい! やめろ! 死にたいのか!」

男子生徒1「はー。はいはい。もういいや。颯真はゴール前守ってろ」

颯真「ふふ。お安い御用だ」

場面転換。

颯真と男子生徒3が歩いている。

颯真「ふう、今日は暑いな」

男子生徒3「ねえ、颯真くん」

颯真「なんだ?」

男子生徒3「その右手の包帯、格好いいね」

颯真「ふふ。お前は見る目があるな。この包帯は封印の術式が込められた巻き方なんだ」

男子生徒3「僕にも巻き方教えてよ」

颯真「教えたいのやまやまなんだがな。さっきも言った通り、これは封印術なんだ。無暗に他人に教えることはできない」

男子生徒3「ふーん。そうなんだ。残念。……でもさ、いつも、そうやって包帯巻くの大変じゃない?」

颯真「何を言っている。大変だとかそういう次元の話ではない。これは俺の力を抑えるためにやっているのだ。もし、封印しなければ、どうなることか……」

男子生徒3「そっか」

颯真「……それにしても、暑いな。どこかで飲み物でも買うか」

男子生徒3「え? そう? 今日は涼しいくらいだよ」

颯真「なんだと? ……ああ、そうか。包帯を変えたからかもしれんな」

男子生徒3「包帯、変えたの?」

颯真「ああ。最近はさらに力を増してしまってな。より強い封印を施すために、さらに重いものにしたんだ」

男子生徒3「それじゃ、いつもより、汗をかいてるのは……」

颯真「ああ。この包帯のせいだろうな。……だが、これで、俺はもっと高みへと到達できるんだ」

男子生徒3「へー。格好いいね」

颯真「ふっ! だろ?」

そのとき、遠くから、声が聞こえる。

男子生徒4「や、やめてよ」

不良1「うるせえ。いいから、財布を置いてけって」

男子生徒3「うわあ。あの人、3組の不良の人だ。よく、カツアゲしてるって噂があるんだよね」

颯真「……」

男子生徒3「見つからないうちに、行こうよ」

颯真「どうやら、この力を使う時が来たようだな」

男子生徒3「え? や、やめなよ!」

颯真がスタスタと不良たちのところへ歩いて行く。

颯真「それくらいにしておいたらどうだ?」

不良2「……なんだてめえ」

颯真「今、謝るなら、許してやる。さっさと、どこかへ行け」

不良1「はあ?」

颯真「いいか。もう一度言う。さっさとどこかへ行け」

不良2「てめえ、さらに怪我してえのか?」

不良1「あ、こいつ、3組のやつじゃね?」

不良2「ん? ……ああ、あの変人か」

不良1「厨二病って言うんだってよ」

颯真「……」

不良1「正義の味方気どりか? 殴られたくなきゃ、てめえこそ、どっか行け」

颯真「誤解しているようだが、俺の力は悪魔のものだ。正義とは対極に位置している」

不良2「何言ってんだ、お前?」

颯真「悪いことは言わない。俺が封印を解く前に、消えるんだ」

不良1「あはははは。いいよ。封印解けよ」

不良2「包帯を取ったら、強くなれんのか?」

颯真「お前らは知らないんだ。この力がどれほど恐ろしいのかを」

不良1「はいはい。わかったから、早くどっか行けって」

颯真「くそ。ここまで話が通じんとはな。俺はお前たちの為に言ってやってるんだ。もう右手の疼きが……」

不良2「しつけえよ」

颯真「いいから、聞け!」

ドカッと不良1が颯真を殴る。

不良1「いい加減にしねえと殴るぞ」

不良2「きゃはは。もう、殴ってんじゃん」

颯真「……」

不良1「なんだ? ビビッて震えてるのか?」

颯真「ふう。馬鹿には話が通じんか」

不良2「へえ。まだ、減らず口が聞けるのか。もう一発行くか?」

颯真「仕方がない。右目の封印を解くとしよう」

眼帯を外す颯真。

不良1「なんだよ。眼帯の下は別に普通じゃねーか」

颯真「ふん。貴様らのような愚か者には、この邪眼と普通の目の違いはわからないだけだ」

不良2「言ってろ、バカが!」

不良2が殴りかかるが、ヒュっと颯真が避ける。

不良2「なっ! 避けただと?」

颯真「貴様らの動きは見切った。もう、俺に攻撃が当たることは無い」

不良1「ふざけんな!」

不良2「おらあ!」

2人が拳を振り回すが、全て空を切る。

颯真「ふふ。やはり、両目だと動きの把握が段違いだな」

不良1「くそ!」

不良2「おらおらおら!」

攻撃を避け続ける颯真。

颯真「さて。そろそろ、この茶番にも飽きた。そろそろ、本気で行かせてもらおう」

颯真がしゅるしゅると包帯を取る。

そして、包帯が地面に『ズン』と落ちる。

不良1「な、なんだよ、その包帯?」

颯真「俺の力を封印するための、特殊な包帯だ。1メートル、30キロある」

不良2「へ?」

颯真「ふふ。やはり封印を解くと、腕が軽いな」

不良2「待ってくれ!」

颯真「ふん!」

不良2「ぐあっ!」

不良2が颯真に殴られて、吹っ飛ぶ。

不良1「ちょ、待て! 本当に強いなんて、聞いてねえぞ」

颯真「何度も言ったハズだ。封印を解くと、恐ろしいことになると」

不良1「いや、それは設定なだけだろ?」

颯真「設定? 何を言ってるんだ、お前は?」

不良1「ぶべっ!」

不良1が颯真に殴られ、吹っ飛ぶ。

颯真「ふう。やれやれ。また、封印のし直しだ。……面倒くさい」

終わり。

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