待ち続ける理由

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、中世、シリアス

■キャスト
ジル
カーラ

■台本

猛吹雪の音。

ガタガタと風で窓が鳴る。

カーラ「さてと。そろそろ、行こうかしら」

ジル「ちょっと、母さん。外、凄い吹雪だよ。行くの止めなって」

カーラ「吹雪だからこそ、行くのよ」

ジル「あのさぁ、こんな天気の中、船を出すバカなんていないって。行く意味ないよ」

カーラ「でも、いるかもしれないでしょ?」

ジル「こんな天気の中、船を出す方が悪いよ。そんなの自業自得だって!」

カーラ「……ジル」

ジル「……あ、その、ごめんなさい」

カーラ「ジルは家で待ってなさい。お母さんが一人で行くから」

ジル「いいよ。私も行く」

カーラ「そんなに心配しなくてもいいに。大丈夫、すぐに帰って来るから」

ジル「……父さんも同じこと言った」

カーラ「……そうね。じゃあ、一緒に行こうか。暖かくしなさいよ」

ジル「お母さんもね」

場面転換。

外。吹雪の物凄い音の中、雪を進む足音。

カーラ「ジル、大丈夫? 絶対に手を離しちゃダメよ」

ジル「う、うん。分かってる」

カーラ「もうすぐ着くから、頑張って」

ジル「それ、もう、30分くらい前から言ってる!」

吹雪の中、突き進んでいくカーラとジル。

場面転換。

重い扉が開く音と、中にカーラとジルが入って来る音。

ジル「ぷはー。やっと着いたー」

カーラ「お疲れ様。でも、着いて終わりじゃないのよ」

ジル「わかってるって」

場面転換。

ボッと火が点火する音。

カーラ「付いたわ」

ジル「あー、暖かい。生き返る―」

吹雪の風の音。

カーラ「あら、大分、風が弱くなってきたわね」

ジル「タイミング悪―い! もう少し早くしてよね」

カーラ「でも、風が弱まったおかげで、明かりが遠くまで見えるはずよ」

ジル「……ねえ、お母さん」

カーラ「なに?」

ジル「お母さんは辞めようと思ったことないの? 灯台守り」

カーラ「一度もないわね」

ジル「どうして? 港だって移動しちゃったし、村で船を出してる人なんて、もうほとんどいないんだよ? 辞めたって誰も文句言う人なんかいないって」

カーラ「……そうね」

ジル「お母さん。……お父さんはもう、戻っては来ないよ」

カーラ「ジル」

ジル「お父さんが海で遭難してから、もう5年! 5年だよ! 沈没するところを見たって人もいるんだよ! お願い! お願いだから受け入れてよ!」

カーラ「……ジル。お母さんがこの灯台を守っているのは、お父さんを待っているだけじゃないの」

ジル「え? じゃあ、なんのために? って、あれ? 船!?

カーラ「本当! こっちに上陸するわ! ジル! ソリの用意と、お湯を沸かす準備」

ジル「うん、わかった!」

場面転換。

家の中。暖炉の火の音。

飲み物をすする音。

男「うー。暖かさが身に染みる!」

カーラ「舌を火傷しないようにゆっくり飲んでくださいね」

コップを置いて、頭を下げる音。

男「いやあ、まさか、こんな状況の中、灯台の光りを見つけられるなんて、夢にも思わなかったよ」

ジル「……この吹雪の中、船を出すなんて自殺行為じゃない?」

男「ははは……。返す言葉もない。娘の誕生日が近くてね。娘の喜ぶ顔を想像して、つい、欲を出してしまった」

ジル「それで、帰れなくなったら、元もこうもないでしょ」

カーラ「返って、娘さんを悲しませる結果になるところでしたね」

男「ははは……。耳が痛いです」

カーラ「これからは、無茶しないでくださいね」

男「はい。肝に銘じておきます。……っと、風が止んだみたいですね。そろそろ行きます」

カーラ「あら。今日はゆっくりしていってください。お疲れでしょう?」

男「いやあ、これ以上、お世話になるわけにはいきません。村まで行って、宿を探します」

ガチャリとドアを開く音。

カーラ「まだ雪は降ってますので、気を付けてくださいね」

男「あの……本当にありがとうございました! あの灯台の光りが見えなかったら、娘や妻、家族に二度と会うことができなくなるところでした! 本当に! 本当に! ありがとうございました!」

ジル「……」

カーラ「そう言っていただけただけで、東大を守ってきた甲斐があります」

男「失礼します」

ザクザクと男が雪の中を歩いて行く音。

カーラ「あれだけ元気なら、大丈夫そうね」

ジル「ねえ、お母さん」

カーラ「ん?」

ジル「お母さんが、お父さんのことだけじゃないって言ったこと、分かった気がする」

カーラ「そう」

ジル「……私達みたいな人を増やさないためだったんだね」

カーラ「……さ、家に入ろうか。暖かい物でも作るわ」

ジル「うん」

カーラとジルが家に入り、バタンとドアが閉まる音。

終わり。

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