神様の気まぐれ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、コメディ

■キャスト
神様
男1~3
長さん
天使

■台本

天界。

神様「ぐーぐー(寝息)

天使「……様、神様!」

神様「うわっ! びっくりした! なんじゃ、天使よ!」

天使「なんじゃ、じゃありませんよ。忙しい時期に居眠りなんてして。さっさと、この書類に目を通してください」

ドンと机の上に大量の書類が置かれる。

神様「……あー、もう嫌じゃ嫌じゃ!」

天使「うっ、また神様の癇癪が始まってしまった……」

神様「なんで、儂だけ、休みなく働かなくてはならないんじゃ!」

天使「いや、さっきまで居眠りしてたじゃないですか……」

神様「休みが欲しい! 週休7日!」

天使「はいはい。この書類が終わってからにしてください」

神様「くそっ! 儂を馬鹿にしおって! おお、神よ。どうか、天使に天罰をお与えください!」

天使「いや、あなたが神様なんですが……」

神様「やーすみ! やーすみ!」

天使「わかりました。この書類が終わったら、10分、休みあげますから、頑張ってください」

天使がふよふよと飛んでいく。

神様「ちっ! あー、くそ、ダルイわい!」

ピッと、スイッチを押すと画面にブンと画像が移る。

神様「あーあ。この地球人みたく、儂もボーっとして暮らしたいのう。……む? そうじゃ!」

場面転換。

川原。

神様「ふふふふーん」

川原に段ボールを敷き始める神様。

男1「ちょっとあんた、誰の許可を得て、そこに段ボール敷いてるんだい?」

神様「え? 誰って……神様?」

男1「ああー。こりゃまた、濃いのが来たなぁ。いいかい、じいさん。ホームレスっていったってね、ちゃんとルールがあるの」

神様「ルール?」

男1「そう。一見、空いてるように見えてもね、そこは誰かの場所ってこともあるだから」

神様「ん? ん? 川原は国が所有してるんじゃないのか?」

男1「あー、もう、面倒くさいな。とりあえず、長さんのところに挨拶に行くぞ」

神様「長さん?」

場面転換。

男1「ってことで、今日から、この辺に住みたいんだってさ」

長「ふむ。じゃあ、五弦橋の下にするか。あそこはまだ、誰もいないはずだからな」

男1「けど、あそこ、夜もうるさいぜ?」

長「ふーむ。とは言っても、そこ以外は」

神様「あー、いやいや、十分じゃ。儂は済む場所さえあれば、満足じゃよ」

男1「あんた、仕事は?」

神様「へ? いや……仕事から逃げるためにここに来たんじゃが……」

男1「そうじゃなくて、小金を稼ぐアテだよ。缶集めとか、雑誌広いとかさ」

神様「……ふむ」

男1「しゃーねーな。じゃあ、俺の仕事を少し分けてやるよ」

神様「いや、じゃが……」

男1「いいかい? ホームレスといっても、お金は多少必要なんだよ。持っておくにこしたことはないんだ」

神様「はあ……」

場面転換。

ガチャガチャと缶の束を持ってくる神様。

神様「缶を持って来たんじゃが、これからどうするんじゃ?」

男1「うおっ! あんた、すげーな。一体、そんな量、どこから取ってきたんだい?」

神様「まあ、色々と……」

男1「まあ、いいや。それよりあんた、名前は?」

神様「名前?」

男1「別に本名じゃなくていいからさ。ずっとあんた、ってわけにもいかないだろ?」

神様「ふむ……そうじゃのう。じゃあ、かーちゃんで」

男1「……男なのにかい?」

場面転換。

橋の下。

数人のホームレスと神様が向かい合って座っている。

男1「カンパーイ!」

ビール缶で乾杯する音。

男1「今日は、かーちゃんの奢りだ。凄い量の缶を集めてね、その金で買ったんだ」

男2「へー、新人なのに、すごいねぇ」

神様「ははは。照れるのう。まあ、まだまだあるんで、どーぞどーぞ」

男3がグビグビとビールを飲む音。

男3「ぷはー! いやぁ、こんなに一気にビールを飲むのは何年ぶりかな」

男1「あー、ビールがあれば、もう何もいらないな」

男2「ふー。幸せ幸せ」

神様「よかったよかった」

場面転換。

ザーッと雨が降る音。

神様「うわわわ! 冷たい!」

男1「かーさん、ほら、こっち来て! 風邪ひいちまうぞ」

神様「い、今行く!」

走って行く神様。

神様「ふむ。晴れている日は気にならなかったが、雨が降ると、不便じゃのう」

男1「はは。屋根がないんだから、当然さ。ここで、雨が止むまで待とう」

神様「……お前さんは、この生活、不便と思ったりしないのか?」

男1「思うに決まってるじゃないか」

神様「屋根のある家に住みたいとは思わんのか?」

男1「思うけど、無理さ。俺らみたいな人間にはな」

神様「……」

場面転換。

神様が男1を連れて歩いてくる。

神様「どうじゃ!」

男1「どうじゃって言われても……この家がどうしたってんだ?」

神様「この家の一室をお前さんにやろうと思ってな」

男1「は?」

神様「お世話になったお礼じゃよ。中にはビールもたくさん、置いておいた」

男1「……あんた、俺を馬鹿にしてんかい?」

神様「へ?」

男1「いいかい? 俺はホームレスであることに誇りを持ってる」

神様「……」

男1「そりゃ、世間様から見たら、家も持たない、仕事もしない、どうしようもない存在に見えるかもしれない。だがよぉ、それでも俺はその日、その日をしっかり生きてるんだよ! 馬鹿にすんじゃねえっ!」

神様「……誇り」

男1「っと、すまねえ。つい、熱くなっちまった。ありがとよ。かーさんの心遣いには感謝するよ。けど、これは受け取れねえ」

神様「……そうか」

男1「あんたはただものじゃないって思ってたよ。……あんたはあんたの場所に帰りな。ここはあんたがいていい場所じゃねえ」

神様「……」

そのとき、天使がふよふよ飛んでくる。

天使「あ、神様、ようやく見つけましたよ!」

神様「げっ! 天使!」

男1「あん? 誰と話してるんだ?」

神様「いやいや、何でもないんじゃ」

天使「さあ、帰りますよ、神様! もう、お休みは終わりです」

神様「……そうじゃな。儂は儂の場所に帰るとするか」

天使「神様……」

神様「なあ、家は受け取ってもらえんとして、これくらいなら、受け取ってくれるかのう?」

男1「……500円。ふふ。あんたの世話賃としては、いいところかもな」

神様「ありがとう。楽しかったよ」

男1「もう行くんだな。俺も、楽しかったよ」

場面転換。

天界。

神様「ぐーぐー」

天使「……はあ。やる気があったのは、1日だけですか……」

スーッと息を吸う天使。

天使「神様! 起きてください!」

神様「うおっ! ビックリした!  なんじゃ、天使よ!」

終わり。

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