【シナリオ】魔王と勇者は忙しい

【シナリオ】魔王と勇者は忙しい

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  グドラスが部屋に入ってくる。

  そして、立ち止まる。

グドラス「魔王様。ご命令通り、人間どもの町、ホープスへの侵略準備ができました」

魔王「ご苦労だったな。魔族総司令グドラスよ。では、侵略のプランを聞かせてもらおう」

グドラス「はっ! まずは人間どもが逃げられぬよう、周りを魔物たちで囲みます。その後……」

  ホープスの町。

  人間たちが道を行き交い、賑わっている。

  そんな賑わう道を、ソフィア(17)が歩く。

男1「やあ、ソフィアちゃん。買物かい?」

ソフィア「ええ。今日は孤児院で子供たちの合同の誕生日会があるの」

男1「へえ、そりゃ準備も大変そうだ。よし、じゃあ、リンゴ三十個、孤児院に届けておくよ。俺からの誕生日祝いだ」

ソフィア「そんなっ! 悪いですよ。お金払います」

男1「いや、いいんだよ。その代り、今度はゆっくりうちの店に寄ってくれ」

ソフィア「ありがとうございます! それではお言葉に甘えさせていただきますね」

男1「いやあ、ソフィアちゃんのその笑顔が見れただけで、十分だよ」

ソフィア「(照れて)そんな、からかわないでください。それじゃ、今度はゆっくり寄らせてもらいますね」

  ソフィアが歩き出す。

  少し歩くと、また声をかけられる。

男2「やあ、ソフィアちゃん。そんなに急いで、どこに行くんだい?」

ソフィア「こんにちは。今日は孤児院で誕生会があるんです」

男2「へえ、そりゃいいね。じゃあ、何かプレゼントでも用意しようかな」

ソフィア「そ、そんな! 悪いですよ!」

男2「いやあ、いいんだよ。その代り、今度、一緒にどこかに……」

  その時、悲鳴が聞こえ、街中が大騒ぎになる。

男3「みんな、逃げろー! 魔物だ! 魔物が攻めてきたぞー!」

ソフィア「魔物? そんなっ!」

男2「あわわわ!」

ソフィア「いけない! 子供たちを避難させなくっちゃ」

  ドスンドスンと足音を立てて、巨大な魔物、サイクロップスが現れる。

男2「ひええ! さ、サイクロップスだ! ソフィアちゃん、逃げるんだ!」

  サイクロップスの脇をバサバサと飛ぶグドラス。

グドラス「サイクロップス、止まれ。どうやら、その娘が狙いのソフィアという人間だ」

ソフィア「……え?」

グドラス「娘。我々と一緒に来てもらうぞ」

ソフィア「どうして私を?」

グドラス「答える義理はない。サイクロップス、その娘を捕まえろ。握り潰すなよ」

  サイクロップスが咆哮を上げて、ソフィアに手を伸ばす。

  だが、サイクロップスが攻撃され、大きな音を立てて倒れる。

グドラス「サイクロップスを吹き飛ばしただと? 何者だ?」

勇者「ふふ……。何者だ、だと? 愚問だな。この勇者、ジークフリード、魔物ごときに名乗る名などない!」

グドラス「……な、なんだかよくわからないが、我々魔族に逆らうなど失笑だな。命を取られる前に消えるがよい」

勇者「ふん。それはこちらの台詞だ。俺にボコボコにされる前に、尻尾を巻いて逃げた方が賢明だぞ。……おっと、本当に逃げるなよ。ソフィアちゃんに格好いい姿を見せるんだからな」

ソフィア「……え?」

グドラス「どうやら、馬鹿は死ななくては治らないらしい。いいだろう。地獄で後悔しろ、小僧!」

  グロラスが魔法を唱えるが、勇者があっさりと弾く。

グドラス「ば、馬鹿な……。魔族総司令である私の魔法を弾き返しただと?」

勇者「それじゃ、今度はこっちから行くぜ。闇を切り裂く、闇の力を思い知るがいい」

グドラス「くっ!」

勇者「くらえっ! スーパーダークネスグレイテストファングファイナルストラッシュ!」

グドラス「ぐあああああああ!」

  グドラスが吹き飛ばされる。

ソフィア「……すごい」

グドラス「く、くそ……。貴様、本当に何者だ? この力は……一体、どういうことだ?」

勇者「ふん。何度も言わせるなよ。この勇者、サイラス、魔物に名乗る名はない」

グドラス「こんなふざけた奴にやられるとは……。勇者とやら、今度会ったときは八つ裂きにしてくれる。覚えていろ!」

  グドラスが飛び去っていく。

勇者「ふふっ! ソフィア嬢、怪我はしてないかい?」

ソフィア「ありがとうございます!」

勇者「はわわわわわわっ!」

ソフィア「助けていただいて、感謝します。お礼をさせてください。そうだ! うちに来てくれませんか? ささやかですけど、何かお礼を……」

勇者「あわわわ! い、いきなり家にご招待? これは急展開! そんなシチュエーション、想定してなかったぞ!」

ソフィア「あの……勇者様?」

勇者「は、はい! あの……その、ま、まずはお友達からお願いします!」

ソフィア「は、はあ……」

勇者「えっと、あの……今度、デートしてください!」

  そう言うと同時に、勇者が走り出す。

ソフィア「待ってください! お名前だけでも」

勇者「僕は、まお……マオルですぅー!」

  走り去っていく勇者。

  グドラスが部屋に入ってくる。

  そして、立ち止まる。

グドラス「申し訳ございません、魔王様。侵略は失敗いたしました」

魔王「……何があった?」

グドラス「勇者と名乗る、変な格好をした奴に邪魔されました……」

魔王「いや、格好いいだろっ!」

グドラス「……は?」

魔王「いや、なんでもない。それより、魔族総司令ともあろう、貴様が退けられるとは……」

グドラス「あんな、間抜けな技名にやられるなんて、一生の不覚です……」

魔王「お前、減給な」

グドラス「え?」

魔王「魔族総司令グドラスよ。次の襲撃の準備を開始するのだ」

グドラス「御意。それでは、失礼いたします」

魔王「待て、グドラスよ。貴様に一つ、頼みたいことがある」

グドラス「なんでございましょう?」

魔王「人間たちを征服するためには、我々はもう少し人間に対して知らなければならない」

グドラス「……敵を知れば、百戦怪しからず、でございますね」

魔王「そうだ。だから、人間の調査を命令する」

グドラス「承知いたしました。……では、人間を浚い、様々な実験を……」

魔王「そうではない! 知るべきは人間の生態ではなく、感情だ。感情は実験で得られるものではない」

グドラス「では、どのように?」

魔王「人間のことは人間から知る。書物だ。人間が書した書物を手に入れてもらいたい」

グドラス「なるほど。さすが魔王様」

魔王「これから言うタイトルの本だ。間違えるなよ」

グドラス「御意。して、なんというタイトルでしょうか?」

魔王「『ドキドキ、女の子のデートの誘い方』だ」

グドラス「……」

魔王「さあ、行け! 魔族総司令グドラスよ!」

グドラス「ぎょ、御意……」

  グドラスが部屋から出て行く。

魔王「くくくく……ははははは! 待っててね、ソフィアちゃん! 必ず君と付き合って見せるからね!」

終わり

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