私は名探偵 2話
- 2022.10.07
- ボイスドラマ(10分)
■シリーズシナリオ
〈私は名探偵 1話〉
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
ライリー
ケイ
マリー
犯人
■台本
ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。今日も、ある人に招待されて、その人の家にお邪魔していた」
ケイ「ライリーさん、ようこそいらっしゃいました。また会えて、嬉しいですわ」
ライリー「やあ、ケイさん。私もです。……ただ、その、随分と声変りがしましたね」
ケイ「え? そうでしょうか?」
ライリー「ああ、申し訳ありません。気にしないでください。それより、その後、ご主人の方はどうです?」
ケイ「ええ。もう、すっかりよくなりました。今でも、バリバリ現役で仕事してますのよ」
ライリー「それはよかった」
ケイ「あのとき、ライリーさんがいなければ、きっと、主人や私は犯人に殺されていたでしょうね」
ライリー「ははは。いや、それは私を買いかぶり過ぎです。私があの場にいなくても、お二人はきっと、生還されたでしょう」
ケイ「どちらにしても、ライリーさんに助けていただいたことには変わりませんわ。本当にありがとうございました」
ライリー「いえ、お礼はあのときにいただきましたので。それより、私を呼んだ理由を聞かせていただけますか?」
ケイ「……やはり、普通の招待ではないとわかりますか?」
ライリー「引退しても探偵ですからね。あなたの緊張は十分伝わっています」
ケイ「以前、助けていただいたのに、重ね重ね、申し訳ありません」
ライリー「いえいえ。これも何かの縁ですから」
ケイ「そう言っていただけると……」
ライリー「で? どうなさいました?」
ケイ「実は、あれから孫ができましてね」
ライリー「……誘拐の恐れがある、と?」
ケイ「え? どうしてわかったんですか?」
ライリー「私に相談があって呼んでいて、尚且つ、警察にはまだ知らせられない、そして、この家は、この辺りでは知らない者がいないほどのお金持ちです。そこに、孫の話題が出たとなると、誘拐の恐れがある以外はないでしょう」
ケイ「……さすが、ライリーさんですね」
ライリー「一体、どのようなことが気になっているのですか?」
ケイ「それが……孫の話では、いつも、下校のときに誰かに後をつけられていると言うんです」
ライリー「……なるほど。失礼ですが、お孫さんの送り迎えを付ければ解決するのでは?」
ケイ「はい。娘にはそう言ってるのですが、孫がおじいちゃんが金持ちということに対して、ある意味、劣等感を持ってまして……」
ライリー「……つまり、お孫さんが嫌がっていると。それでは、送り向かいに人を付けるのも難しそうですね」
ケイ「はい……。何度か説得したのですが」
ライリー「お孫さんの年齢は?」
ケイ「8歳です」
ライリー「なるほど。なかなか難しい年齢ですね」
ケイ「……」
ライリー「それ以外には、何か不審なことはありますか?」
ケイ「……それが、週に一度くらい、娘の携帯に無言電話がかかってくるみたいなんです」
ライリー「それはもちろん、非通知で?」
ケイ「はい」
ライリー「……ちなみに、お孫さんの母親、つまりあなたの娘さんの交友関係について、お伺いできますか?」
ケイ「はい。そう思って、家に呼んでおきました。……マリー、こっちにおいで。ライリーさんに挨拶しなさい」
すると、ドアが開き、マリーが入って来る。
マリー「初めまして、マリーです。両親の事件の際は、お世話になったようで」
ライリー「初めまして、ライリーです。……あなたも、変わった声の持ち主ですね」
マリー「え? そうでしょうか?」
ライリー「ああ、また余計なことを。申し訳ありません。忘れてください。では、さっそく、あなたの交流関係、つまり、ママ友について、出来るだけ詳しくお聞かせください。あと、家の位置関係も知りたいので、地図も用意していただきたい」
マリー「わかりました」
時間経過。
ライリー「なるほど。ありがとうございました」
マリー「あの……犯人はわかったのでしょうか?」
ライリー「ははは。さすがにそうそう上手くはいきませんよ。ここからは、相手が尻尾を出すのを待つしかありません」
ケイ「……出してくれるんでしょうか?」
ライリー「ええ。話を聞く限り、近いうちに……」
そのとき、マリーの携帯が鳴り始める。
ライリー「どうやら、来たみたいですね。非通知ですか?」
マリー「はい、そうです」
ライリー「では、私が取りましょう」
通話ボタンを押すライリー。
ライリー「もしもし?」
するとボイスチェンジャーで変えた声が聞こえてくる。
犯人「……誰よ、あんた?」
ライリー「秘書です」
犯人「……秘書? ……ああ、親のね。あれほどの金持ちだもん、秘書の一人や二人いて、おかしくないわね」
ライリー「で? 要件はなんです?」
犯人「あんたの雇い主の孫を預かった。すぐに一億、用意しろ」
ライリー「場所は?」
犯人「ウェスト公園の入り口よ」
ライリー「あー、すまないが、別の場所にしてくれませんか?」
犯人「どうして?」
ライリー「ウェスト公園は、今、工事中でして……」
犯人「え? ちょっと待ちなさい」
しばらく沈黙する。
犯人「いい加減なこと、言わないで頂戴! 工事なんてしてないじゃない!」
ライリー「おや? そうですか……。これはこれは申し訳ない。それより、車は大丈夫ですかな?」
犯人「どういうことよ?」
ライリー「あなたが持っている、セダンタイプでは、詰み切ることはできませんよ?」
犯人「……大きなお世話よ。ワゴン車を借りるからいいの」
ライリー「これはこれは申し訳ない。では、ウェスト公園でお待ちしてますよ、メアリーさん」
犯人「ええ……って、待ちなさい! 私はメアリーなんかじゃないわ」
ライリー「いえいえ、あなたはメアリーさんです」
犯人「ど、どうして、そう言えるのよ?」
ライリー「まず、マリーさんの携帯にかけてきた時点で、マリーさんの知り合いということに絞られます」
犯人「え? でも、そんなの、調べればなんとかなるんじゃないかしら?」
ライリー「私が秘書と名乗った際、すぐに親の秘書と判断しましたね? そうなるといつも、マリーさんの視点で見ているということです」
犯人「……」
ライリー「次に、ウェスト公園が工事中と私が言ったときに、すぐに確認しましたよね? つまり、確認できる場所に家があるということです」
犯人「……家にいるとは限らないでしょ!」
ライリー「さらに言うと、車の件もそうです。あなたの家はセダンタイプの車ということですよね?」
犯人「……」
ライリー「以上のことから、総合的に考えて、あなたしかいないのですよ、メアリーさん」
犯人「認めないわ、絶対に認めません! しょ、証拠はあるの!? 証拠は!?」
ライリー「……あなたは致命的なミスを一つ犯しました」
犯人「な、なによ!」
ライリー「あなたは声を変えたつもりでしょうが、変わってませんよ?」
犯人「あ、あああ……そんな……」
ライリー「諦めてください。私がしている補聴器には、録音機能も付いているんですよ。鑑識に回せば、あなたの声紋が何よりの証拠になります」
犯人「いや、待って! 確かに私はメアリーよ! こんなところで、計画が終わるわけにはいかないのよ! せっかく、色々と考えたトリックがあるの! 奇抜なお金の受け取り方よ! お願い! せめて、それを解いてちょうだい!」
ライリー「犯人が分かっているのに、トリックを解く必要はありませんね。あなたを締め上げればいいだけです」
犯人「いやあああああ!」
電話が切れる。
ライリー「では、警察にメアリーのところへ行くように連絡してください」
ケイ「さすが、ライリーさんですね。最後のハッタリは見事でした」
ライリー「……ハッタリ?」
場面転換。
ライリー(N)「こうして、事件は無事に解決した。……だが、妙に引っかかる点がある。犯人のメアリーはかなり綿密に計画を立てていたという。それなのに、電話の声を変えないなんて、初歩的なミスをするだろうか……?」
そのとき、耳元で、ガガガという気か音がする。
ライリー「むっ! なんだ? ……最近、補聴器の調子が悪いな」
補聴器を取り出して見てみるライリー。
ライリー「まさか、壊れたか……?」
回想。
ケイ「ライリーさん、ようこそいらっしゃいました。また会えて、嬉しいですわ」
ライリー「やあ、ケイさん。私もです。……ただ、その、随分と声変りがしましたね」
回想。
マリー「初めまして、マリーです。両親の事件の際は、お世話になったようで」
ライリー「初めまして、ライリーです。……あなたも、変わった声の持ち主ですね」
回想終わり。
ライリー「……まさか、ちゃんと変えていたのか?」
ライリー(N)「……私の名前はライリー。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた名探偵だ」
終わり。
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