私は名探偵 2話

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■シリーズシナリオ
〈私は名探偵 1話〉

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ライリー
ケイ
マリー
犯人

■台本

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。今日も、ある人に招待されて、その人の家にお邪魔していた」

ケイ「ライリーさん、ようこそいらっしゃいました。また会えて、嬉しいですわ」

ライリー「やあ、ケイさん。私もです。……ただ、その、随分と声変りがしましたね」

ケイ「え? そうでしょうか?」

ライリー「ああ、申し訳ありません。気にしないでください。それより、その後、ご主人の方はどうです?」

ケイ「ええ。もう、すっかりよくなりました。今でも、バリバリ現役で仕事してますのよ」

ライリー「それはよかった」

ケイ「あのとき、ライリーさんがいなければ、きっと、主人や私は犯人に殺されていたでしょうね」

ライリー「ははは。いや、それは私を買いかぶり過ぎです。私があの場にいなくても、お二人はきっと、生還されたでしょう」

ケイ「どちらにしても、ライリーさんに助けていただいたことには変わりませんわ。本当にありがとうございました」

ライリー「いえ、お礼はあのときにいただきましたので。それより、私を呼んだ理由を聞かせていただけますか?」

ケイ「……やはり、普通の招待ではないとわかりますか?」

ライリー「引退しても探偵ですからね。あなたの緊張は十分伝わっています」

ケイ「以前、助けていただいたのに、重ね重ね、申し訳ありません」

ライリー「いえいえ。これも何かの縁ですから」

ケイ「そう言っていただけると……」

ライリー「で? どうなさいました?」

ケイ「実は、あれから孫ができましてね」

ライリー「……誘拐の恐れがある、と?」

ケイ「え? どうしてわかったんですか?」

ライリー「私に相談があって呼んでいて、尚且つ、警察にはまだ知らせられない、そして、この家は、この辺りでは知らない者がいないほどのお金持ちです。そこに、孫の話題が出たとなると、誘拐の恐れがある以外はないでしょう」

ケイ「……さすが、ライリーさんですね」

ライリー「一体、どのようなことが気になっているのですか?」

ケイ「それが……孫の話では、いつも、下校のときに誰かに後をつけられていると言うんです」

ライリー「……なるほど。失礼ですが、お孫さんの送り迎えを付ければ解決するのでは?」

ケイ「はい。娘にはそう言ってるのですが、孫がおじいちゃんが金持ちということに対して、ある意味、劣等感を持ってまして……」

ライリー「……つまり、お孫さんが嫌がっていると。それでは、送り向かいに人を付けるのも難しそうですね」

ケイ「はい……。何度か説得したのですが」

ライリー「お孫さんの年齢は?」

ケイ「8歳です」

ライリー「なるほど。なかなか難しい年齢ですね」

ケイ「……」

ライリー「それ以外には、何か不審なことはありますか?」

ケイ「……それが、週に一度くらい、娘の携帯に無言電話がかかってくるみたいなんです」

ライリー「それはもちろん、非通知で?」

ケイ「はい」

ライリー「……ちなみに、お孫さんの母親、つまりあなたの娘さんの交友関係について、お伺いできますか?」

ケイ「はい。そう思って、家に呼んでおきました。……マリー、こっちにおいで。ライリーさんに挨拶しなさい」

すると、ドアが開き、マリーが入って来る。

マリー「初めまして、マリーです。両親の事件の際は、お世話になったようで」

ライリー「初めまして、ライリーです。……あなたも、変わった声の持ち主ですね」

マリー「え? そうでしょうか?」

ライリー「ああ、また余計なことを。申し訳ありません。忘れてください。では、さっそく、あなたの交流関係、つまり、ママ友について、出来るだけ詳しくお聞かせください。あと、家の位置関係も知りたいので、地図も用意していただきたい」

マリー「わかりました」

時間経過。

ライリー「なるほど。ありがとうございました」

マリー「あの……犯人はわかったのでしょうか?」

ライリー「ははは。さすがにそうそう上手くはいきませんよ。ここからは、相手が尻尾を出すのを待つしかありません」

ケイ「……出してくれるんでしょうか?」

ライリー「ええ。話を聞く限り、近いうちに……」

そのとき、マリーの携帯が鳴り始める。

ライリー「どうやら、来たみたいですね。非通知ですか?」

マリー「はい、そうです」

ライリー「では、私が取りましょう」

通話ボタンを押すライリー。

ライリー「もしもし?」

するとボイスチェンジャーで変えた声が聞こえてくる。

犯人「……誰よ、あんた?」

ライリー「秘書です」

犯人「……秘書? ……ああ、親のね。あれほどの金持ちだもん、秘書の一人や二人いて、おかしくないわね」

ライリー「で? 要件はなんです?」

犯人「あんたの雇い主の孫を預かった。すぐに一億、用意しろ」

ライリー「場所は?」

犯人「ウェスト公園の入り口よ」

ライリー「あー、すまないが、別の場所にしてくれませんか?」

犯人「どうして?」

ライリー「ウェスト公園は、今、工事中でして……」

犯人「え? ちょっと待ちなさい」

しばらく沈黙する。

犯人「いい加減なこと、言わないで頂戴! 工事なんてしてないじゃない!」

ライリー「おや? そうですか……。これはこれは申し訳ない。それより、車は大丈夫ですかな?」

犯人「どういうことよ?」

ライリー「あなたが持っている、セダンタイプでは、詰み切ることはできませんよ?」

犯人「……大きなお世話よ。ワゴン車を借りるからいいの」

ライリー「これはこれは申し訳ない。では、ウェスト公園でお待ちしてますよ、メアリーさん」

犯人「ええ……って、待ちなさい! 私はメアリーなんかじゃないわ」

ライリー「いえいえ、あなたはメアリーさんです」

犯人「ど、どうして、そう言えるのよ?」

ライリー「まず、マリーさんの携帯にかけてきた時点で、マリーさんの知り合いということに絞られます」

犯人「え? でも、そんなの、調べればなんとかなるんじゃないかしら?」

ライリー「私が秘書と名乗った際、すぐに親の秘書と判断しましたね? そうなるといつも、マリーさんの視点で見ているということです」

犯人「……」

ライリー「次に、ウェスト公園が工事中と私が言ったときに、すぐに確認しましたよね? つまり、確認できる場所に家があるということです」

犯人「……家にいるとは限らないでしょ!」

ライリー「さらに言うと、車の件もそうです。あなたの家はセダンタイプの車ということですよね?」

犯人「……」

ライリー「以上のことから、総合的に考えて、あなたしかいないのですよ、メアリーさん」

犯人「認めないわ、絶対に認めません! しょ、証拠はあるの!? 証拠は!?」

ライリー「……あなたは致命的なミスを一つ犯しました」

犯人「な、なによ!」

ライリー「あなたは声を変えたつもりでしょうが、変わってませんよ?」

犯人「あ、あああ……そんな……」

ライリー「諦めてください。私がしている補聴器には、録音機能も付いているんですよ。鑑識に回せば、あなたの声紋が何よりの証拠になります」

犯人「いや、待って! 確かに私はメアリーよ! こんなところで、計画が終わるわけにはいかないのよ! せっかく、色々と考えたトリックがあるの! 奇抜なお金の受け取り方よ! お願い! せめて、それを解いてちょうだい!」

ライリー「犯人が分かっているのに、トリックを解く必要はありませんね。あなたを締め上げればいいだけです」

犯人「いやあああああ!」

電話が切れる。

ライリー「では、警察にメアリーのところへ行くように連絡してください」

ケイ「さすが、ライリーさんですね。最後のハッタリは見事でした」

ライリー「……ハッタリ?」

場面転換。

ライリー(N)「こうして、事件は無事に解決した。……だが、妙に引っかかる点がある。犯人のメアリーはかなり綿密に計画を立てていたという。それなのに、電話の声を変えないなんて、初歩的なミスをするだろうか……?」

そのとき、耳元で、ガガガという気か音がする。

ライリー「むっ! なんだ? ……最近、補聴器の調子が悪いな」

補聴器を取り出して見てみるライリー。

ライリー「まさか、壊れたか……?」

回想。

ケイ「ライリーさん、ようこそいらっしゃいました。また会えて、嬉しいですわ」

ライリー「やあ、ケイさん。私もです。……ただ、その、随分と声変りがしましたね」

回想。

マリー「初めまして、マリーです。両親の事件の際は、お世話になったようで」

ライリー「初めまして、ライリーです。……あなたも、変わった声の持ち主ですね」

回想終わり。

ライリー「……まさか、ちゃんと変えていたのか?」

ライリー(N)「……私の名前はライリー。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた名探偵だ」

終わり。

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