親友
- 2022.10.10
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
千裕(ちひろ)
幹久(みきひさ)
智和(ともかず)
男子生徒1~2
■台本
千裕(N)「僕には親友がいる。幹久ってやつで、学校にも一緒に行って、一緒に帰って、そのまま暗くなるまで遊ぶ。でも、そんな僕たちに付きまとうようにして、いつも後ろをついて来るやつがいた」
通学路を歩く千裕、幹久、智和。
幹久「なあ、千裕。後でさー、宿題写しっこしようぜ」
千裕「いいよー。僕、国語やるから、幹久は算数ね」
幹久「ええー、俺も国語がいいー」
千裕「じゃあ、半分半分で」
智和「……」
千裕「このまま幹久の家に行ってもいい?」
幹久「いいぜ」
千裕「……智和くんはどうする?」
智和「え? ……あの」
幹久「(小声で)おいおい、智和まで来るのかよ」
千裕「(小声で)いや、でも、ほら、仲間外れにしたら先生に怒られるんじゃない?」
幹久「(小声)んー。てかさ、そもそも、あいつ、友達なのか? ただ、ずっと着いて来てるだけじゃん」
千裕「(小声で)……ま、まあ、友達なんじゃない? ずっと着いて来てるしさ」
智和「……いいの?」
千裕「え?」
智和「……僕も……行っていいの?」
千裕「も、もちろんだよ。ね? 幹久」
幹久「お、おう。いいぞ」
智和「ありがとう……」
千裕「……」
幹久「……」
千裕(N)「こんな感じで、いつもほとんどしゃべらず、ついて来るだけ。で、時々、こっちから話をしたら答えるって感じ。……智和くんは、こんなんで、僕たちと一緒にいて楽しいのかなぁ?」
場面転換。
街はずれ。
男子生徒1「いいか、この奥に壊れた家があるから、その中に入って、お札を取って来い」
千裕「……え? ど、どうしてですか?」
男子生徒1「うるせー、さっさと行け!」
幹久「ち、千裕、行こうぜ。パパっと言って、パパっと帰ってこよう」
千裕「う、うん……」
智和「……」
場面転換。
廃墟の中を歩く、千裕、幹久、智和。
千裕「……ねえ、なんで、こんなことさせるんだろうね?」
幹久「あいつ、6年の有名なやつだよ。イジメとかしてるみたいだぞ」
千裕「じゃあ、これもイジメってこと?」
幹久「多分な。こうやって怖い所に行かせて、泣いて戻って来るのを見て、笑うんだろ」
千裕「……それの何が面白いんだろうね」
幹久「さあな。けど、怖がったら、面白がられるから、平気な顔で戻ろうぜ」
千裕「う、うん……」
3人の足音が響く。
千裕「……ちょ、ちょっと怖いね」
幹久「だ、大丈夫だって。ただ、暗いだけだって」
どこかで、ガタンという音がする。
千裕「ひいっ!」
幹久「うわっ!」
千裕「……い、今の、なんだろ?」
幹久「き、気のせいだよ。気のせい」
智和「……」
千裕「あー、もう、ヤダ。帰りたい」
幹久「泣くなよ。あいつに笑われるぞ」
千裕「……ねえ、幹久。おいてったりしないでね」
幹久「当たり前だろ。お前も……逃げたりするなよ、絶対」
千裕「うん。もちろんだよ」
幹久「お、俺達、親友だもんな」
千裕「そうだよ、僕達、親友だから」
智和「……」
すると、不気味な声が聞こえてくる。
男子生徒2「(不気味な声で)うーらーめーしーや」
千裕「ぎゃあああああ!」
幹久「うわああああああ!」
智和「……」
男子生徒2「(不気味な声で)こーこーかーらーでーてーけー」
千裕「ひ、ひい……」
幹久「お、おい、千裕、逃げるぞ!」
千裕「だ、ダメ。足が動かない……」
幹久「なにやってんだよ! いいから、行くぞ!」
千裕「無理だよ……」
男子生徒2「(不気味な声で)でーてーけー」
幹久「うわああああああ!」
千裕「あ、幹久!」
幹久が走って逃げていく。
千裕「ま、待ってよー」
男子生徒2「(不気味な声で)早く行けー!」
千裕「だ、だから、無理だよ……」
智和「……」
男子生徒2「なんだ、お前、逃げないのか?」
千裕「……と、智和くん?」
智和「大丈夫? 落ち着いて」
千裕「智和くん……逃げないの?」
智和「うん。僕達、親友でしょ?」
千裕「え? あ……」
智和「深呼吸して。大丈夫。ゆっくりでいいから、足を動かして」
男子生徒2「なんだよ! お前もこいつを置いて逃げろよ!」
智和「うるさいな!」
男子生徒2「うっ!」
智和「千裕くん、どう?」
千裕「う、うん。なんとか……」
千裕(N)「この後、外に出たら、先生たちが来て、あの6年生たちは怒られていた。幹久はこそっと帰って来て、ごめんと謝ってきたから、別にいいよって言った。だって、僕だって、逆だったら逃げたかもしれないから」
場面転換。
通学路を千裕、幹久、智和の3人で歩いている。
幹久「でさー、懸賞でゲーム当たったんだよ。やりにくるだろ?」
千裕「うん、行く行く! 智和くんも行くでしょ?」
智和「うん、行く」
幹久「お、おう」
千裕「ねえ、智和くんもなんか、ゲーム持ってるの?」
智和「うん。この前発売した、KK5(けーけーふぁいぶ)を持ってるよ」
千裕「えー、ホント? それ、持ってきてよ」
智和「うん、いいよ」
幹久「じゃあ、3人でゲーム三昧だな」
千裕が大人になっている。
千裕(N)「智和とは、社会人になった今でも、交友は続いている」
終わり。