ゾロ目
- 2022.10.21
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
一 一一(にのまえ かずいち)
二三(ふみ)
男子生徒1~2
■台本
チッチッチと時計の針の音。
一一「……うーん。なんだろ。変な時間に目が覚めたな。今何時だろ?」
携帯の時計を見る。
一一「……また、4時44分だ」
一一(N)「僕の名前は一(にのまえ)一一。……どう考えても、親がふざけて付けたに決まっている。よく名は体を表すというけれど、僕はこの名前のせいで、色々と迷惑しているのだ。それはよく、ゾロ目になるってことだ」
場面転換。
学校の教室内。
男子生徒1「よお、ゾロ目。さっき、返ってきたテスト、何点だった?」
一一「……何点だっていいだろ」
男子生徒1「いいから、見せろって」
バッと男子生徒1がテストを取り上げる。
一一「あっ!」
男子生徒1「ぷっ! あははははは。44点! さすがゾロ目だぜ」
クラスのみんながドッと笑う。
一一「返せよ!」
男子生徒1「いやー、ゾロ目は期待を裏切らないな。それとも狙ってやってんのか?」
一一「……」
男子生徒1「けどさ、この前の中間テスト、学年で333位だったんだよな?」
一一「……」
男子生徒1「で、後ろから数えて11人目。これ、狙ってやるの無理だろー」
またクラス中で笑い声が上がる。
一一「……」
場面転換。
スタスタと道路を歩く一一。
一一「……」
そこに二三がやって来る。
二三「なーに、トボトボ歩いてるのよ」
一一「……二三ちゃん」
二三「クラスで言われたこと、まだ気にしてるの?」
一一「うるさいな」
二三「ゾロ目になるのが嫌なら、ちゃんと頑張りなさいよ」
一一「……」
二三「同じゾロ目でもさ、99点だったらすごーいってなるでしょ。学年順位だって11位とかだってゾロ目になるんだから」
一一「……したよ」
二三「え?」
一一「ちゃんと勉強して、これなの!」
二三「……そ、そうなの?」
一一「もういいんだ。僕の人生はゾロ目に取りつかれてるんだよ。一一一なんて名前、大嫌いだ!」
二三「一一……」
一一「もう、放っておいてよ!」
一一が走って行く。
場面転換。
学校の教室。
男子生徒1「よーし! 上がった! 俺の勝ち! これで11連勝!」
一一「……」
男子生徒2「お前さー、双六で全部1が出るって、ある意味凄くないか?」
男子生徒1「あははは。もうこれは才能だよな。ダメな才能」
一一「……」
男子生徒2「もう止めてやれよ。ゾロ目、泣きそうじゃん」
男子生徒1「いやー。俺だって、たまにはゾロ目に負けてみてーよ。なあ、俺に勝ってくれよーお願いだよー」
クラスの何人かがクスクス笑う。
一一「……」
二三がやってくる。
二三「ちょっと! イジメするなんて情けないと思わないの!?」
男子生徒1「いやいや。イジメなんかじゃねーって。正々堂々と勝負してるんだぞ」
二三「じゃあ、一一が一回でもあんたに勝ったら、今までのこと、謝りなさいよ」
男子生徒1「勝てばな」
二三「土下座よ」
男子生徒1「ああ。ゾロ目が勝てばやってやるよ。その代わり、ゾロ目が負ければ今月いっぱい、毎日一本ジュースを奢ってもらうからな」
二三「いいわよ」
一一「ちょ、ちょっと、二三ちゃん!」
男子生徒1「で? なにで勝負するんだ」
二三「ふふふ。これよ」
サイコロが転がる音。
二三「チンチロよ!」
場面転換。
教室内がワッと盛り上がる。
男子生徒2「すげー! ゾロ目、またピンゾロの5倍づけだ!」
一一「……」
男子生徒1「お、俺の負けだ」
二三「ふふん。どんなもんよ」
男子生徒1「くそ……」
二三「じゃあ、約束通り謝ってもらうわよ」
男子生徒1「うっ!」
二三「も、ち、ろ、ん、土下座でね」
男子生徒1「くそー」
男子生徒1が膝をつく。
一一「いいよ、土下座なんかしなくても」
二三「一一……」
男子生徒1「ゾロ目……」
一一「その代わり、また一緒にチンチロで遊んでよ」
男子生徒1「うっ! それはそれで嫌だな……」
場面転換。
一一と二三が歩いている。
二三「どう? ゾロ目でもいいことあるでしょ?」
一一「うん」
二三「いい? 最初から諦めたらダメ。ゾロ目に取りつかれてるなら、それを利用すればいいんだから」
一一「ありがとう、二三ちゃん。今回のことで少しゾロ目が好きになったよ」
二三「それに、一一一っていい名前だと思うけどな」
一一「そうかな……。名前はやっぱり好きになれないけど」
二三「そんなことないと思うわよ。だって、もし、私と一一が結婚したら、私の名前が一、二、三になるじゃない? 私は面白くていいなーって思うけど」
一一「え? そ、それって……」
二三「あー、でも、チンチロだとヒフミで2倍払いになっちゃうから、やっぱり嫌かも」
一一「もう! なんなんだよ、それ!」
二三「あはははは」
一一(N)「とにかく、今回のことで少しだけ自分の名前が好きになったのだった」
終わり。