日常と幸せ

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
教授
デイジー


■台本

ガチャリとドアが開き、デイジーが入って来る。

デイジー「教授。全員揃いました」

教授「うむ。では、一人目に入ってもらってくれ」

デイジー「わかりました」

場面転換。

ガチャリとドアが開き、Aが入って来る。

A「こ、こんにちは」

教授「わざわざ来てもらって、すまないね。私は今、人の幸福について研究しているんだ」

A「幸福……ですか?」

教授「君は今、自分が幸せだと思うかね?」

A「思いません」

教授「なぜだね?」

A「つまらないからです」

教授「つまらない?」

A「毎日が同じことの繰り返し、嫌になります」

教授「なるほど。では、君の言う、繰り返しの毎日がどんなものかを教えてくれるかな?」

A「えっと、朝起きて、ご飯を食べて、学校に行きます。帰ってきて、テレビを見て、ご飯を食べて、寝ます」

教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」

A「はい。普通の毎日なんか、嫌です。もっと楽しいのがいいです」

教授「わかった。ありがとう。では、こちらの椅子に座って、他の子の話を聞いていてくれ」

A「はい」

教授「じゃあ、次の子、入ってくれ」

ガチャリとドアが開き、Bが入って来る。

教授「さっそく、質問したいのだが、君は今、幸せかね?」

B「いいえ。幸せじゃないです」

教授「なぜかね?」

B「毎日が同じ繰り返しで、飽き飽きしてます」

教授「なるほど。では、君の毎日がどんなものか、教えてくれるかね?」

B「はい。まず、朝起きて、朝食まで勉強します。学校に行って、帰ったら塾に行きます。塾が終わったら、家で勉強して寝ます」

教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」

B「はい。もっと普通の毎日がいいです」

教授「わかった。ありがとう。では、こちらの椅子に座って、他の子の話を聞いていてくれ」

B「はい」

教授「じゃあ、次の子、入ってくれ」

ガチャリとドアが開いてCが入って来る。

教授「よく来てくれたね。では、さっそくだが、質問をさせてほしい。君は今、幸せかね?」

C「幸せ? あははは。んなわけねーじゃん」

教授「なぜだね?」

C「決まってんじゃん。毎日が同じことの繰り返しで、飽き飽きだよ」

教授「なるほど。では、君の毎日がどんなものか、教えてくれるかね?」

C「ん? えーっと、まず、5時に起きて、ランニング。帰ったら300本の素振り。学校に行って、授業が終わったら部活。帰ってから300本の素振りして寝るだけ。こんなの面白いわけないよ」

教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」

C「だから、そう言ってんじゃん。もっと普通の毎日が良い」

教授「そうか。ありがとう。では、みんな。最後に一つアンケートを取らせてほしい。別室で答えてくれ」

場面転換。

ガチャリとドアが開いて、デイジーが入って来る。

デイジー「教授、アンケート結果が出ました」

教授「どうなったかね?」

デイジー「全員が、Aくんの毎日がいいと出ました」

教授「Aくんもかね?」

デイジー「はい」

教授「ふむ。そうか」

デイジー「次はどんなアンケートを取りますか?」

教授「次は20年後だな」

デイジー「……20年後……ですか」

教授「ああ。しばらくは別の研究をしよう」

デイジー「わかりました」

場面転換。

20年後。

ガチャリとドアが開き、デイジーが入って来る。

デイジー「教授、お呼びでしょうか?」

教授「君は20年前のアンケートのことを覚えているかね?」

デイジー「20年前……ですか?」

教授「幸せについての研究だよ」

デイジー「……ああ、ありましたね。3人の子供にアンケートを取った研究ですね」

教授「そうだ。あれから20年経った今、もう一度、あの3人にアンケートを取ったんだ」

デイジー「どんなアンケートですか?」

教授「今、A、B、Cの中で、どの人生を歩みたいか、というものだ」

デイジー「その結果はどうだったのですか?」

教授「BとCはそのまま自分を選んだよ」

デイジー「Aはどう答えたんですか?」

教授「BかC。つまり、今の自分以外ならだれでもいい、だそうだ」

デイジー「……子供の頃は全員がAを選んだんですがね」

教授「そうだな。幸せというものは、そのときだけではなく、相対的に見ないといけないのかもしれんな」

デイジー「……難しいです」

教授「ふむ。これこそ、研究のし甲斐があるというものだよ」

終わり。

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