甘い顔

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
結城 柊(ゆうき しゅう)
結衣(ゆい)
優愛(ゆあ)
男子生徒
女子生徒
女性

■台本

教室。

柊「お、おい、ちょっと待てよ!」

男子生徒「待てって言われて、待つ奴がいるかよ」

柊「いい加減に……」

柊が走ると腕が花瓶にぶつかり、花瓶が落ちて割れる。

柊「あっ……」

優愛「あーあ。やっちゃったね、結城。こりゃ、結衣に怒られるんじゃない?」

男子生徒「俺、しーらね」

男子生徒がピューと逃げていく。

柊「……やっぱ、怒られるかな?」

優愛「だって、この花、昨日、結衣が持ってきたんだよ。しかも、割れた花瓶も結衣が気に入ってたし」

柊「……」

そこに結衣が歩いて来る。

結衣「みんな。どうしたの? そんなところに集まって?」

柊「あっ……」

優愛「結衣。結城が花瓶割っちゃったのよ。ふざけて走り回って」

結衣「……うそ」

柊「結衣……。ごめん。俺……」

結衣「はあ……。まあ、仕方ないわよ」

柊「え?」

結衣「ロッカーから、ホウキと塵取り取ってきて。片付けないと先生に怒られちゃうよ」

柊「お、おう……」

柊が歩いて行く。

優愛「相変わらず、結衣は結城に甘いんだから。幼馴染だからって、甘すぎるんじゃない?」

結衣「そんなことないよ」

優愛「もしかして、幼馴染ってだけじゃなくて、他にも理由があったりして」

結衣「もう、止めてよ! 私だって、花瓶が割れたの、滅茶苦茶ショックなんだから!」

優愛「あ、そっか。そうだよね。ごめん」

結衣「ううん。それより、今日の帰り、新しいの買いに行くの付き合ってくれる?」

優愛「それはいいけど……」

場面転換。

教室内。

男子生徒「おーい、柊、カバン投げてくれ」

柊「行くぞー」

男子生徒「おう!」

柊がカバンを投げる。

男子生徒「げっ! どこ投げてんだよ!」

ドンと女子生徒に当たる。

女子生徒「きゃっ!」

柊「あ、ごめん! 手が滑って……」

女子生徒「結城―! あんたねー! いつもうるさいのよ! 人に迷惑かけないと気が済まないの!?」

柊「そういうわけじゃ……」

女子生徒「ったく! 今度から気をつけなさいよ」

柊「え? もう終わりか?」

女子生徒「なにが?」

柊「……ほら、もっと文句言っても罰は当たらないっていうか、そんなに簡単に許していいのか?」

女子生徒「いや、別にそこまで痛くなかったし。あんたが、反省してるならそれでいいわよ」

柊「もっと、文句言ってもいいんだぞ」

女子生徒「だーかーら。もう、いいってば」

柊「そうか……」

場面転換。

教室内。

柊がカリカリと必死に、ノートを写している。

男子生徒「おい、柊! 早くノート貸せって!」

柊「まだ、写してるんだから、待てって」

チャイムが鳴る。

男子生徒「もう授業始まるだろ! 早く、ノートよこせって」

柊「もう少し!」

男子生徒「何言ってんだよ、俺が怒られるだろ」

男子生徒がノートを引っ張る。

柊「ちょ、待てって!」

柊がノートを渡さないように引っ張ると、ビリビリとノートが破れる。

柊「あっ!」

男子生徒「ああっ!」

そこに結衣と優愛が教室に入って来る。

結衣「授業始まるから、ノート返して……」

優愛「ああっ! 結衣のノートが……」

男子生徒「わ、悪い……」

結衣「はあっ!」

男子生徒「ぶべっ!」

バチンと男子生徒の頬にビンタをする結衣。

結衣「あんたねぇ! 宿題やってないっていうから、特別サービスでノート見せてあげたのに、破くってなんなの!?」

男子生徒「だ、だから謝ってるじゃねーか」

結衣「謝ればいいってわけじゃないでしょ!」

バチンバチンと頬を叩く結衣。

男子生徒「ぶべ! だから、ごめっ! ぐあっ!」

結衣「ったく!」

柊「な、なあ、結衣。俺も……その、悪いんだ」

結衣「……はあ。もう、先生来るから。散らばったノート拾い集めて」

柊「あ、ああ……」

柊がノートを拾い集める。

柊「ほら」

結衣「ありがと」

優愛「……」

場面転換。

結衣と優愛が並んで歩いている。

優愛「ねえ、結衣」

結衣「なに?」

優愛「あんたさー。結城のこと、好きなの?」

結衣「はああ? な、な、なんでそんなことになるの?」

優愛「いや、だって、ほら。結衣って、妙に結城に甘いじゃない。だから、好きなのかなーって」

結衣「……ああ、そのこと」

優愛「理由があるんでしょ?」

結衣「それは……」

そのとき、遠くから柊の声が聞こえてくる。

柊「お願いだ! もっと俺をなじってくれ!」

女性「ちょっと止めてってば!」

それを遠くから怪訝に見る優愛。

優愛「……結城だ。あいつ、何やってんの?」

結衣「はあ……」

女性「汚い手で触らないで!」

柊「もっと! もっと、きつい言葉で!」

結衣「あいつさー。超ドMなんだよね」

優愛「……」

結衣「だから、怒ったら、逆にご褒美になっちゃうのよ」

優愛「だから、逆に甘い顔してるの?」

結衣「そう」

優愛「じゃあ、結城のことは……?」

結衣「どっちかって言うと嫌いだよ」

優愛「……そっか」

終わり。

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