土の下
- 2022.11.06
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
綾斗(あやと)
藍子(あいこ)
蓮(れん)
女子生徒
■台本
教室内。
藍子「ねえねえ、綾斗くん」
綾斗「え? ああ、藍子さん。なに?」
藍子「私のお母さんね、毎日、高校に行ってるんだ。なんでだと思う?」
綾斗「へ? えーと。んー。なんか、用事があるから……とかか?」
藍子「ぶぶー! 正解は、高校教師だからでしたー!」
綾斗「……あれ? 藍子さんのお母さん、主婦じゃなかったか?」
藍子「もう! なぞなぞだよ、なぞなぞ!」
綾斗「そ、そうなのか……」
藍子「あははは! 綾斗君は、もう少し頭柔らかくした方がいいよー。固すぎー」
綾斗「うるさいなー」
藍子「じゃーねー!」
藍子が行ってしまう。
綾斗「……」
蓮「綾斗。お前……藍子のどこが好きなんだ?」
綾斗「へ? な、何言ってんだよ、蓮」
蓮「いやいやいや。バレてないと思ってんの?」
綾斗「……マジで? バレバレ?」
蓮「バレバレ」
綾斗「……」
蓮「あははは。大丈夫だって。頭抱えるなよ。クラスで知らないのは、藍子だけくらいなんだからさ」
綾斗「……なんで、それで大丈夫なんだよ?」
蓮「男子は、お前が好きだって知ってるから、藍子に近づく奴はいないし、女子は何かとお前らをくっつけようとしてくれてるんだぞ」
綾斗「そ、そうなのか?」
蓮「……あんなにわかりやすいのに、やっぱ、気付いていなかったか」
綾斗「……」
蓮「だーかーら、今頃、恥ずかしがるなって」
綾斗「どうすりゃいいんだよ。てか、もう帰りたい」
蓮「まあまあ。ここは割り切ろうぜ。みんなが協力してくれるんだ。藍子と付き合うのはすぐだよ、すぐ」
綾斗「藍子と付き合う……。うわ、すげードキドキする」
蓮「んー。よく、あの藍子のことをそこまで想えるな。まあ、可愛いっちゃ、可愛いけど、不思議過ぎてついていけねーよ」
綾斗「その不思議なとこもいいんじゃーねか」
蓮「はいはい。ご馳走様」
場面転換。
放課後。
廊下を歩いている綾斗。
そこに、女子生徒が走って来る。
女子生徒「ねえねえ、綾斗くん」
綾斗「ん? なに?」
女子生徒「これ、藍子から」
綾斗「……手紙?」
女子生徒「ふふ。きっと、ラブレター、じゃない?」
綾斗「え?」
女子生徒「じゃ、頑張ってね」
綾斗「あっ!」
女子生徒が走って行く。
綾斗「うーん。ホントに、みんなにバレてるんだな……。っと、手紙、何が書いてあるんだ?」
ガサガサと手紙を開く綾斗。
綾斗「なになに? 土の下。朝9時に、中庭の伝説の木のところで待ってます」
綾斗が深呼吸する。
綾斗「ま、まさか、これって告白か? マジで? ……って、ちょっと待て。伝説の木ってなんだ?」
廊下をウロウロと歩きながら考える綾斗。
綾斗「……とりあえず、中庭に行ってみるか」
場面転換。
中庭。
歩き回る綾斗。
綾斗「あ。この木。伝説って、文字が彫ってある。……きっと藍子が彫ったんだな。じゃあ、ここか。で、朝9時って書いてあるから明日か。明日は土曜だから、誰にも見られないよな。よし、明日の9時にここに来ればいいんだな」
場面転換。
朝。中庭。
木の下に立っている綾斗。
綾斗「……緊張するな。昨日の夜は全然、眠れなかった。……って、あれ? 遅くないか?」
綾斗が携帯を出して、時間を見る。
綾斗「あれ? もう10時だぞ?」
ガサガサと手紙を出す、綾斗。
綾斗「朝9時って書いてあるよな……。藍子が時間を守らないってことはなさそうなんだけど……。って、ちょっと待て。土の下って書いてあるな」
考え込む、綾斗。
綾斗「もしかして……土の中に隠れてるのか?」
場面転換。
ざくざくとスコップで土を掘る綾斗。
綾斗「くそ、見つからない」
ざくざくとスコップで土を掘る綾斗。
綾斗「……これは藍子からの挑戦と見た。どんなに苦労しても、藍子の元に辿り着く。それが、俺の答えだ!」
場面転換。
ざくざくとスコップで土を掘る綾斗。
綾斗「ごめん、藍子。もうすぐだ。もうすぐ見つけるからな」
場面転換。
ざくざくとスコップで土を掘る綾斗。
綾斗「絶対に諦めないからな」
場面転換。
ざくざくとスコップで土を掘る綾斗。
ピタリと手を止める。
綾斗「……くそ。もう朝になっちまった」
そこに藍子がやってくる。
藍子「あれ? 綾斗くん、なにやってんの?」
綾斗「え? 藍子?」
藍子「9時って書いてあったよね? まだ、8時半だよ?」
綾斗「いや……。あれ? 土の下で待ってるって……」
藍子「……ああー! 土の下っていうのは、月火水木金土日(げつ、か、すい、もく、きん、どう、にち)って縦に書いたら、土の下は日ってことで、日曜日って意味だよ」
綾斗「……」
藍子「なぞなぞだよ。もう、綾斗くんは頭固いぞ。もう少し柔らかくしないと。ホントに土を掘ったらダメだよー」
綾斗「うるさいなー」
藍子「でも、そんな綾斗くんだから好きだよ」
綾斗「……お、俺も、そんな藍子だから、好きなんだと思う」
終わり。
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