【ラジオドラマ短編シナリオ】西田家の受難 西田怪談

【ラジオドラマ短編シナリオ】西田家の受難 西田怪談

人物表

西田 正志(17) 長男

西田 清 (17) 二男・正志の双子の弟

西田 総士(14) 三男

西田 隆 (5)  末っ子             

ミラ   (3)  猫

母親(40)

〇 シーン1
西田正志が茶の間に入ってきて、冷凍庫へ歩いていく。

正志「ふう、暑ぃ、暑ぃ。アイス、アイス」

  正志が冷蔵庫を開ける音。
  ガサガサとアイスを取り出す。

正志(N)「何気ない平日の夜のことだった」

  バリっと袋を開けて、棒アイスを頬張る。

正志(N)「それは本当に何気ない一言だった。あれが原因で、まさか、あんなことになるなんて……」

母親「ちょっと正志。あんた、昨日の夜、エアコン付けっぱなしで寝たでしょ!」
正志「いやいや、俺に死ねっていうの? あんな暑い中で、消して寝れるわけないじゃん(アイスを頬張りながら)」
母親「あ、そう。じゃあ、電気代高くなった分、あんたの小遣いから引くからね」
正志「消します!」
母親「ったく、あんたは……。じゃあ、お母さんは会合に行ってくるから、あんたたち、適当にごはん食べててね」

  母親が廊下に出て、歩いていく。

正志「これ以上、小遣い減らされてたまるか」

  正志がリモコンで、エアコンを消す。
  同時に、ドアが開き、総士が入ってくる。

総士「あっちぃ! なんだよ、今日の暑さ、殺す気か?」
正志「……総士。お前、よく、こんな暑い中、部活なんてやれるな」
総士「こういう日に練習するかで差が……って、おい、兄貴、それ、俺のアイスじゃねーの!?」
正志「違う。清のだ」
総士「ふーん。ならいいけど」
正志「(小声で)お前のはもう食べてしまったからな……」
総士「てか、なんでエアコン切ってんの? 死ぬ気か?」

  総士がエアコンのスイッチを入れる。

正志「おい! 俺の小遣いを減らす気か!」
総士「……何言ってんの?」
正志「今日から居間でのエアコンの使用は禁止するからな」
総士「はいはい」

  総士がエアコンの温度を下げ、風が勢いよく出る。

総士「ああー、涼しい!」
正志「総士……お前……」
総士「だいたい、こんな猛暑をエアコンなしとか無理だろ。兄貴一人で頑張れよ」
正志「待て待て。なにも俺は何の策もなく、エアコンをつけないと言ってるわけじゃないんだ」
総士「……なに? 打ち水でもすんの?」
正志「怪談だ!」
総士「……」

  そこに隆が入ってくる。

隆「正志お兄ちゃん、ミラ、知らない?」
正志「おお、隆。お前も俺の怪談話を聞いていけ」
隆「かいだん?」
正志「とーっても面白くて、涼しくなるお話だ」
隆「面白いの? うん! 聞く聞くー!」
総士「くだらねー」
正志「総士、逃げるのか?」
総士「あ?」
正志「怖いなら、怖いって言えよ」
総士「ふざけんな。どうせ、涼しくなるっていっても、シラケて寒いってオチだろ」
正志「とっておきのを聞かせてやる」

  正志が歩いて、パチンとスイッチを消す。

総士「な、なんで電気消すんだよ」
正志「雰囲気作りだ。……ああ、ごめんごめん。総士、怖かったらつけていいぞ」
総士「さっさと始めろよ」

  正志がこほんと咳ばらいをする。

正志「……ある年の夏休み。仲のいい大学生5人がキャンプをしようと計画を立ててたんだ」
隆「ぼくもキャンプ行きたい!」
正志「隆、話の腰を折るな。……で、当日。A君は風邪をひいて、一人、キャンプに行けなくなったんだ」
総士「……」
正志「でも、運が悪いことに、キャンプに行った四人は帰り道に車で事故にあって、死んでしまったんだ」
隆「……可哀そう」
正志「偶然、助かったA君は風邪をひいてよかったと思う。だけど、異変は三日後に起こった」
総士「(ごくりと生唾を飲み込む)」
正志「夜、A君が一人、家で寝てると……ぴちゃん、ぴちゃんと水が滴る音がするんだ。起きて、水道を見てみても、ちゃんと閉まっている。おかしいと思って、よくよく聞いてみると、その音は外からするんだ」
総士「……外」
正志「そして、今度は窓をバンバンと叩く音がするんだ」
総士「それって、まさか……」
正志「そう。そのA君の死んだ友達が迎えに来たんだよ」
総士「あれ? ちょっと待てよ、兄貴。そいつら、車の事故で亡くなったんだよな? なんで、水の音がするんだ?」
正志「……細かいことはいいんだよ。それより、この話には続きがある」
総士「……なんだよ?」
正志「昨日、この家にも来たんだよ」
総士「は?」
正志「昨日、深夜に喉が渇いてリビングに降りたんだ。そしたら、そこの窓の方からぴちゃん、ぴちゃんって音がしたんだよ」
総士「(ひきつって)あ、雨かなんかだろ?」
正志「昨日は雨なんて降ってない」

  そのとき、ぴちゃんぴちゃんと水が滴る音がする。

正志「そう。まさしく、こんな音……え?」
総士「あ、兄貴?」

  水が滴る音が続く。

正志「ははっ。雨かなんかじゃないか?」
総士「雨なんか降ってないだろ」
正志「総士。電気つけてこい」
総士「兄貴が行けよ」

  そのとき、バンバンバンと窓を叩く音が響く。

正志「ぎゃーー!」
総士「あわわわ……」
隆「うわーん。怖いよー」

  窓を叩く音がドンドン大きくなっていく。

正志「こういうのは一人犠牲になればいいんだ。行け、総士」
総士「ふざけんな!」

  バンバンバンと窓を叩く音。

正志「お前、隆に行けっていうのか!?」
総士「兄貴が行けばいいだろ!」
正志「俺は死にたくないから嫌だ」
総士「よし、俺が兄貴をぶっ殺してやる」
隆「うわーん! 清にいちゃーん!」

  パチッと音がして、明かりが着く。

清「……なにやってるの?」
正志「清!」

  窓を叩く音。

清「ん? 何の音?」

  清が窓に向かって歩く。

総士「清にぃ、ダメだ!」
正志「いや、清に犠牲になってもらおう!」
総士「兄貴って、ホントクズだな!」

  清が窓をガラガラっと開ける。

ミラ「にゃー!」

  ミラが部屋に入ってくる。

隆「あ、ミラだ!」
正志「なんだ、ミラかよ……。外に出てのか」
総士「じゃあ、水の音は?」
清「水の音……?」

  水滴がポタっと落ちる。

清「冷たっ!」
総士「清にぃ、大丈夫?」
清「……正兄ぃ、部屋のエアコン付けっぱなしでしょ? 室外機のダクトから水出てて、ベランダから水漏れしてるよ」
正志「……へ?」
清「外と部屋の温度差が激しいとダクトから水出るって言ったはずだけど」
正志「あ、ああ……そういえば、そうだった。じゃあ、昨日の音も……」

正志(N)「こうして、怪奇事件は無事に解決した。この事件は西田怪談として、西田家に代々語り継がれたとか、継がれなかったとか……」

終わり