究極の選択
- 2022.11.14
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:1人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
ケリー
■台本
ガチャリとドアが開いて、ケリーが入って来る。
ケリー「はあ、はあ、はあ」
ドサリと倒れこむケリー。
ケリー(N)「ようやくここまで辿り着いた。10万人に1人の確率でしか合格できない、特別A級エージェント。様々な試験を潜り抜けて、最終試験の場に辿り着いたんだ。ここまで来たら、どんなことをしてでも、合格して見せる!」
立ち上がるケリー。
ケリー「……ん? おい! 最終試験を早くしてくれ!」
すると、ウィーンという音が出て、壁の中から机が出てくる。
その机の上には2つの皿が載っている。
ケリー「なんだ、これは? 皿が2つ……? なんだ? 紙が載っている……」
カサッと紙を手に取り、読み上げる。
ケリー「えーっと、なになに? 究極の選択。一皿を完全に食せ? なんだ? こんな簡単なことが最終試験だと?」
考え込むケリー。
ケリー「……あっ!」
紙の裏を見る。
ケリー「やはり、追加の情報があったか。紙の裏って、意外と盲点だよな。えーっと、なになに? 一皿はうんこ味のカレーで、もうひと皿はカレー味のうんこ……だと?」
じっと皿を見るケリー。
ケリー「うんこ、うんこ、うんこ! くだらない。本当にくだらない。子供の発想だ」
イライラして壁を蹴るケリー。
ケリー「だが、実際にやられると、これほどキツイものはない。……まさか、こんな選択を強いられることが、生きているうちにあるとは……」
ガンガンと壁を蹴るケリー。
ケリー「普通に考えれば、うんこ味のカレーか? だが、どうだ? 一皿を食べきると考えると、カレー味の方が容易か?」
考え事をするケリーがコンコンと壁を叩く。
ケリー「落ち着け。落ち着くんだ。プライドを捨てるわけにはいかない。そう。俺は超A級エージェントを目指したときに決めたはずだ。どんなときでも、プライドは捨てない。……今まで、そうやってきたんだ」
テーブルの方へ歩くケリー。
ケリー「……」
皿を手に取る。
ケリー「いくぞ……。うっ! だ、ダメだ! 無理だ! くそ! くそ! くそ!」
一度、皿をテーブルの上に置く。
ケリー「まさか、あの超難関な試験の最後が、こんなくだらないこととは思わなかった……」
ガンガンガンと壁に頭を打ち付けるケリー。
ケリー「くだらない! くだらなすぎる!」
そのとき、ピタリと動きを止める。
ケリー「待て。待てよ。考えてみるとおかしい。今までの試験は頭をフルに使った試験ばかりだった。それなのに、最後だけ、こんなくだらない試験なのか?」
ガサガサと紙を取り出して、もう一度見る。
ケリー「……試験の内容は一皿を完全に食す……。そ、そうか! わかったぞ!」
バンと紙をテーブルに叩き付ける。
ケリー「危うく、罠にはまるところだったぜ。内容には、一言も、『どちらかの皿を』と書いていない。つまり、第三の選択ができるってことだ!」
肩を震わせて笑うケリー。
ケリー「ふふふふ。まさか、こんな土壇場で、二択ではなく、三択を選べるかを見る試験だったのか。見破れる奴はそれほどいまい。ならば、選ぶのは一つ。……ふん。この俺がうんこなんて食ってたまるか!」
思い切り、バンと机を叩く。
ケリー「俺が選ぶのは、うんこ味のうんこだ!」
シーンと辺りが静まり返る。
ウィーンと壁からもう一つ皿が出てくる。
ケリー「しまったーーーー! 言い間違えたー!」
終わり。
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