有名な護衛人

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
セラ
カイル
ジイや

■台本

セラ「ジイや! しっかりして、ジイや!」

爺「セラ様……。どうか、どうか無事に国までたどり着いてください」

セラ「ジイやーーー!」

場面転換。

ギルド内。

カイル「う、うう……。自分の身を犠牲にして、姫を守るだなんて。ジイの鏡だ!」

セラ「ってことで、私のカーラ王国まで送り届けてほしいってわけ」

カイル「うんうん。わかった、俺に任せろ」

セラ「でさ、疑うわけじゃないんだけど、あんたの腕が信用できるか確かめたいんだけど」

カイル「ふふっ。この話を聞けば、おのずと信用できるはずだ。なんと、俺が今まで引き受けた依頼は100を超える」

セラ「へー。すごいわね。で、成功した件数は?」

カイル「……0だ」

セラ「まったく信用できないっ!」

カイル「なんだと!? 依頼を失敗することに関しては、この町の住人全員のお墨付きだ!」

セラ「……ちょっと待って。あんたはこの町で一番有名な護衛人って噂を聞いたんだけど?」

カイル「うむ。この町で俺の名前を知らない奴はいないだろうな。負け犬カイルの名は伊達ではない」

セラ「……失礼するわ。さよなら」

セラが席を立つ。

カイル「ちょっと待てよ。今、この町には大口の案件が入っていて、猫の手も借りたいほど忙しいんだ。俺以外、手の空いてる護衛人はいねえぜ」

セラ「……ってことは、あんたは猫以下ってことよね?」

カイル「ははは」

セラ「笑って誤魔化すな」

カイル「まあまあ、いいじゃねーか。失敗しても死ぬだけだし問題なしだろ」

セラ「大問題よ」

カイル「それに、お前。依頼料5ゴールドってなんだよ。こんなの、スライム一匹倒すより安いじゃねーかよ」

セラ「……うるさいわね。その依頼料を倍にするためにカジノに行ったらなくなっちゃったの!」

カイル「ギャンブルで身を亡ぼすタイプだな。ホント、ダメダメな奴だ」

セラ「あんたに言われたくないわよ!」

カイル「ジイやの遺産とかないのか?」

セラ「いや、遺産って……。生きてるし」

カイル「へ? さっき、あんたを庇ったって」

セラ「そうよ。山に生えてたキノコを私の代わりに毒見して、今はトイレの中で格闘中よ」

カイル「うわあ……。聞かなきゃよかった」

セラ「うう……。時間がないのにぃ!」

カイル「なら、俺を頼るしかないだろ。ほら、行くぞ!」

セラ「いや、頼れないから悩んで……って、こら離せ! 人らさらいー!」

場面転換。

森の中。

そこら中から猛獣のような声が響き渡っている。

セラ「ね、ねえ。さっきから聞こえてくる声って、なんの声?」

カイル「あー。聞かない方がいいと思うぞ」

セラ「う、うう……。どうして、私がこんな目に」

カイル「大丈夫だ! 約束する! この飛竜の谷を抜けて、必ず生きて国にたどり着いてやる!」

セラ「……カイル」

カイル「俺が」

セラ「お前がかよ! 私は!?」

カイル「……保証は……できない」

セラ「そこを一番優先しろよ!」

カイル「いや、自分の身が一番可愛いし」

セラ「お前、護衛人辞めろ!」

カイル「よし、話が済んだところで、行くぞ!」

セラ「済んでないっ!」

場面転換。

森の中を突き進むセラとカイル。

だが、カイルがピタリと立ち止まる。

カイル「む?」

セラ「どうしたの?」

カイル「分かれ道だ」

セラ「ちょっと待って。今、地図を出すわ」

カイル「いや、この道はどっちを通っても、谷を抜けられるんだ」

セラ「じゃあ、どっちを行った方が近いの?」

カイル「いいか、覚えておけ、セラ。俺の経験上、こういうとき、安易に近い方を選ぶと返って危険で遠回りになったりするもんなんだ」

セラ「あんた以外のセリフなら説得力あるんだけどね……」

カイル「ふふふ。だが、こういうとき、俺の真価が発揮されるところだ」

セラ「ふーん」

カイル「反応薄いな! もっと盛り上げろよ!」

セラ「御託はいいから、どうするか早く言いなさいよ」

カイル「ちっ! 可愛くない奴だ」

セラ「なんか言った?」

カイル「なんでもないので、足を踏むのをやめてください……」

セラ「で? どうするの?」

カイル「スキルを使う」

セラ「あんた、スキル持ちなの?」

カイル「まあな。いくぞ! 『コレクトルート』発動!」

ピコンとコミカルな音が響く。

セラ「……何今の? 空中にマルの文字が出たけど」

カイル「俺のスキルは正解を示してくれるという能力なんだ」

セラ「へー。便利ね」

カイル「だろ? じゃあ、こっちに行くぞ」

場面転換。

カイルとセラが全速力で走っている。

その後ろを猛獣が追っている。

猛獣「ガアアアアアア!」

セラ「ちょっと! これのどこが正解なのよ!」

カイル「アホ! 逆に行ってたら、もっとヤバいのがでてきたんだっての!」

場面転換。

森の中で、火を焚いて料理をしているカイルとセラ。

セラ「ねえ、このキノコ、食べられると思う?」

カイル「ふふ。こんなときは『コレクトルート』発動!」

ピコンというコミカルな音。

カイル「食えるようだな。よし! 一口! (食べて)旨い!」

場面転換。

カイル「ぎゃああああ! は、腹が……」

セラ「ねえ。あんたのスキル、ホントに大丈夫なの?」

カイル「もちろんだ。今のはここで食っておかないと、もっと大変になるって意味なんだ。……ぐおおお!」

場面転換。

危険な場面。

セラ「きゃあああ!」

カイル「ぎゃああああ!」

場面転換。

危険な場面。

セラ「いやああ! 死ぬー!」

カイル「うぎゃあああ!」

場面転換。

セラ「落ちるーー!」

カイル「助けてくれー!」

場面転換。

ヨロヨロしながら、歩くカイルとセラ。

セラ「も、もうダメ。無理。死ぬ」

カイル「はあ、はあ、はあ……。さすがに俺も死ぬかと思った」

歩き続ける2人。

カイル「あ、また分かれ道だ。よし! 『コレクトルート』発動!」

ピコンというコミカルな音。

カイル「よし、こっちだ」

セラ「……ちょっと待ちなさい」

カイル「なんだよ?」

セラ「こっち行くわよ」

カイル「なんでだよ? そっちは不正解の方だぞ」

セラ「いいから!」

カイル「……どうなっても知らねえぞ」

場面転換。

歩いている2人。

セラ「あ……やったわ! 谷を抜けたわよ!」

カイル「うおおお! すげー! ……けど、おかしいな」

セラ「なにがよ?」

カイル「ほら、途中からお前が、俺が出した正解と逆の方に行くようにしたじゃねーか」

セラ「そうね」

カイル「なんで、こうも上手くいったんだ? 不正解を選んだのに」

セラ「はあ……。気づいてないようね。あんたのそのスキル! あんたくらい使えないのよ!」

カイル「どういうことだ?」

セラ「つまり、不正解の方を選んでたのよ」

カイル「へ?」

セラ「だから、あんたのスキルが選んだ逆をいけば、安全な正解の道ってわけ!」

カイル「じゃ、じゃあ……今まで依頼が失敗してたのは……?」

セラ「まあ、そういうことね」

カイル「なんてこった!」

セラ(N)「この後、私は無事に国帰ることができた。そして、彼はその後、世界で一番有名な護衛人になった」

終わり。

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