異世界でもモテるのは子供にだけ

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
シロウ
セシル
エーリア

■台本

シロウ(N)「俺は昔から子供に好かれることが多かった。中学時代も、小学低学年の子たちの面倒を見ること少なくなかった。そんな俺はなんとなく保育士を目指し、無事に保育士なることができた。このまま俺は子供の面倒を見ていく人生を送っていくのだと信じてやまなかった」

場面転換。
ドラゴンの咆哮が響く。

シロウ「うあああああ!」
セシル「シロウ! 受け取れ!」

鞘に収まった剣を投げるセシル。

シロウ「すまん、セシル!」

受け取って、剣を抜き、ドラゴンに斬りかかる。

シロウ「うおおおおおお!」
ドラゴンが炎を吐く。

シロウ「うわっ!」

シロウが剣を振るうと炎が切れる。

シロウ「おお、すごい! 炎が切れた」
セシル「止めだ、シロウ!」
シロウ「やあっ!」

シロウがドラゴンの頭に剣を突き刺すと、ドラゴンが断末魔を上げ、倒れる。

シロウ「ふう、倒せた……」
セシル「よくやったな、シロウ」
シロウ「セシルの剣のおかげだよ、ありがとな」
セシル「ふふっ! 当然よ、私の自信作なんだからね!」

シロウ(N)「俺は散歩の途中に、道路へ飛び出した園児を庇い、車に轢かれてしまった。そして、絶命した俺はなぜか異世界へと転生されたというわけのわからない状況に陥っているのだ」

場面転換。
夜の森。
野営をしているシロウとセシル。

シロウ「……ごめんな、セシル。今日も野営になっちまって」
セシル「もう、いつも言ってるじゃない。野営なんて平気なんだから、気にしないでって」
シロウ「うん……。けどさ、やっぱり、その小さな体に負担になると思うんだよ」
セシル「だーかーら! シロウは気にしすぎ。こんなこと、私の一族じゃ普通のことなんだから」
シロウ「……それはわかってるけどさ」
セシル「そんなのことより、はい、できたわよ」
シロウ「うわあ、美味しそう!」
セシル「でしょ! ドラゴンのヒレステーキと山菜のサラダ」
シロウ「あ、ごめん……。また料理作ってもらっちゃって……」
セシル「いいのよ。シロウはいつも後片付けしてくれるでしょ」
シロウ「いや、料理の方が大変だろうし、それじゃセシルの方が負担大きいでしょ」
セシル「私、料理好きだし、シロウにはバトルをしてもらったんだから、負担の割合的にはシロウの方が大きいわよ」
シロウ「……セシルはいいお嫁さんになるよ、きっと」
セシル「ちょ、急に何言ってるのよ!? 変なこと言ってないで、食べるわよ!」
シロウ「ああ」

シロウ(N)「この世界に来て、右も左もわからない俺に、声を掛けてくれたのが、セシルだ。転生されても、子供に好かれる体質は変わってないらしい。なんでも、特殊な鉱石を探して一人旅をしているらしい。小さいのに本当にしっかりしている。10歳にも満たないだろうに、一人旅をするなんて本当に凄い。けど、保育士としてこんな小さな女の子を放っておけなかったので、セシルの旅に同行することにした。本当は面倒を見るつもりだったのに、完全に面倒を見てもらっている状態だ」

場面転換。
焚火の音。

シロウ「はい、コーヒー」
セシル「ありがとう! シロウの淹れるコーヒーは本当に美味しいわ」
シロウ「ありがとう。でも、すごいな」
セシル「なにが?」
シロウ「ブラックで飲むのがさ。大体、ミルクや砂糖を入れないと飲めないのに」
セシル「ん? シロウだってブラックで飲んでるじゃない」
シロウ「まあ、俺は大人だから」
セシル「……また、私を子ども扱いして」
シロウ「ごめんごめん。そんなつもりじゃなくて」
セシル「まあいいわ。それより、明日にはエルフの里に着くから、2、3日滞在させてもらいましょ」
シロウ「助かるよ。色々、備品も足りなくなってるし、集めた素材なんかも、お金に換えたい」
セシル「今回のドラゴンの角は、結構、いい値段が付くと思うわよ」
シロウ「ホントに? 楽しみだなぁ」
セシル「高く売れたら、美味しい物でも食べましょ」
シロウ「そうだな。けど、俺はセシルの料理が一番美味しいと思うけど」
セシル「ちょっ! もう、またそういうこと言って!」
シロウ「セシルは美人で、料理もできて、しっかりしてて……。ホント、いいお嫁さんになるんだろうね」
セシル「……もう、そういうこと、真顔で言わないでよ」
シロウ「はは。それだけに残念だよ」
セシル「なにが?」
シロウ「もう少し、遅く……10年くらい遅く生まれたかったなぁって」
セシル「ん? 10年? どういうこと?」
シロウ「あーいや、ごめん。なんでもない」

シロウ(N)「危ない、危ない。子供相手に何を言ってるんだ、俺は。元の世界だったら、職質されてもおかしくない発言だったな。気を付けないと」

シロウ「さてと。じゃあ、そろそろ寝るか」
セシル「……ね、ねえ、シロウ。今日も、その……一緒に寝るの?」
シロウ「ん? ああ。夜も冷えるし、その方がよくないか? あ、もしかして、おっさんと寝るのは嫌か?」
セシル「いや、違うの。そうじゃなくて……その逆というか……」
シロウ「ん?」
セシル「な、なんでもない! じゃあ、寝床の準備するね」
シロウ「手伝うよ」

場面転換。
シロウとセシルが森の中を歩いている。

セシル「あ、シロウ。見えたわよ、エルフの里」
シロウ「ふう、やっとか。さ、もうひと頑張りだ、行こうぜ」
セシル「うん」

場面転換。
エルフの里。

エーリア「こんにちは。エルフの里へようこそ」
セシル「こんにちは。これ、一族の長の紹介状よ」
エーリア「確かに。では、どうぞ。ごゆっくりください」
セシル「さ、行きましょ、シロウ」
シロウ「ああ」

村の中を歩く、エーリア、セシル、シロウ。

セシル「あ、最初に里の長に挨拶しておきたいんだけど、会えるかしら?」
エーリア「ええ。あそこの高台の家にいらっしゃいます」
セシル「じゃあ、私、挨拶に行ってくるわ」
シロウ「あ、俺も行くよ」
セシル「いいのよ。シロウは先に、宿に行ってて。疲れてるでしょ」
シロウ「疲れてるのはセシルも一緒……」

セシルがさっさと走って行ってしまう。

シロウ「あ、行っちゃった」
エーリア「ふふ、いい奥さんですね」
シロウ「ええ……って、いやいやいや、違いますよ!」
エーリア「え? 違うんですか?」
シロウ「大体、全然、年が違いますから。奥さんというより、子供の方が近いんじゃないんですかね?」
エーリア「……そうですか。失礼ですが、お年をお聞きしても?」
シロウ「29です」
エーリア「んー。なら、そこまで離れてませんよね?」
シロウ「へ?」
エーリア「彼女とです。おそらく、24、5歳ですよね?」
シロウ「セシルが、ですか?」
エーリア「ええ」
シロウ「いやいや、どうみても10歳くらいですよね?」
エーリア「いえ、ドワーフ族はあのくらいだと思いますが」
シロウ「ドワーフ族? 誰がですか?」
エーリア「彼女です」
シロウ「……え? じゃ、じゃあ、セシルはドワーフ族で23、4歳ってことですか?」
エーリア「はい」
シロウ「ええええええ!」

シロウ(N)「……嘘だろ。じゃあ、お嫁さんになるとか、一緒に寝るとか、年頃の女の子にしてたってことか? ……ヤバい、どうしよう? 俺、このあと、どうやってセシルと接すればいいんだ?」

終わり。

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