最高のガイド
- 2022.12.26
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
カイル
ジェイク
フィー
ケイト
冒険者1~2
■台本
ダンジョンの入り口。
冒険者1「ありがとうございました。ガイドさんのおかげで、無事、30層まで到達できました」
冒険者2「……」
カイル「いえいえ。あなた達の実力ですよ。パーティーランクDなのが、不思議なくらいです」
冒険者2「当然だ」
冒険者1「お前は黙ってろ。ったく。……すみません。そんなこと言われると本気にしちゃうので止めてくださいよ」
カイル「何を言ってるんですか。本気で言ってるんですよ」
冒険者1「ありがとうございます。では、その言葉、受け取っておきます。あと、これ、ガイド料です」
冒険者1がお金をカイルに渡す。
カイル「え? こんなに? 悪いですよ!」
冒険者1「いえ、受け取ってください。ほんのお気持ちです」
カイル「……では、お言葉に甘えて」
冒険者1「あの……また、お願いしてもいいですか?」
カイル「もちろんです」
冒険者1「では、私たちはこれで失礼しますね」
カイル「はい。今日はゆっくりお休みください」
冒険者1と2が歩き出す。
冒険者2「……」
冒険者1「おい、何をそんなにむくれてるんだ?」
冒険者2「だってさー、あのガイド、全然、役に立たなかったじゃん。なのに、報酬に色なんかつけてさ。何考えてるんだよ」
冒険者1「何言ってるんだ。彼は最高のガイドだよ」
冒険者2「はあ? お前、本気で言ってるのか?」
冒険者1「ああ、本気さ」
場面転換。
ダンジョン入り口。
カイル「ダンジョンガイドのカイルです。今日はよろしくお願いいたします」
ケイト「ケイトです。よろしくお願いいたします」
ジェイク「ジェイクだ」
フィー「フィーです」
カイル「えーっと、あなた達は、今回がダンジョン初なんですよね?」
ケイト「はい、そうです」
カイル「事前にそれぞれのステータス表は見せていただきました。今回は5層までを目指しましょうか」
ジェイク「はあ? 初だからって舐めてるのか? 10層まで案内しろ」
ケイト「ちょっと、ジェイク……」
カイル「……とりあえず、5層まで行きましょう。そこで、さらに進むかどうか、決めるということでどうでしょうか?」
フィー「それでお願いします」
ジェイク「おい、フィー!」
フィー「ジェイク。ここは経験豊富なガイドに任せるのが一番だよ」
ジェイク「けっ!」
カイル「それでは行きましょうか」
場面転換。
ダンジョン内。
カイル「このダンジョンは比較的、新しく発見された場所で、現在では50層まで到達が確認されています」
ジェイク「ってことは、その先からはまだお宝がたくさん眠ってるってことだな?」
カイル「いえ、その可能性は低いでしょうね」
フィー「といいますと?」
カイル「50層まで進んでみましたが、あまり宝と呼べるものはありませんでした」
ケイト「なので、まだ50層までしか進まれていないんですね?」
カイル「ええ。ですが、このダンジョンに潜んでいるモンスターや罠に関しては程よい難易度になってまして、冒険者として経験を積むにはよい場所となっています」
フィー「なので、このダンジョンが人気というわけなんですね」
カイル「はい。なので、あなたたちも、このダンジョンでノウハウを学んでくださいね」
ジェイク「けっ! 初心者向けかよ。じゃあ、どうせなら60層を目指そうぜ!」
フィー「おい、ジェイク……」
カイル「いいですか? いくら初心者向けだと言っても、ダンジョンはダンジョンです! 気を抜けば死にます――」
急にカイルの足元の落とし穴トラップが発動する。
カイル「よーーーーー!」
カイルが落とし穴に落ちていく。
場面転換。
カイル「死ぬかと思いました」
ケイト「大丈夫ですか?」
ジェイク「けっ! ガイドのお前が死にそうになるなんざ、洒落になってねーな」
カイル「ははは……。お恥ずかしい。このように油断すると死に直結しますから、足元には十分注意してください」
フィー「……」
カイル「それでは行きましょう」
場面転換。
4人が歩いている。
ケイト「……あ、あの、さっきから同じところを歩いているような気がするのですが……」
カイル「……やっぱり、そう思いますか?」
ジェイク「おい! 迷ったのかよ!」
カイル「こ、こういうときはですね、おお落ち着くのが重要です!」
ジェイク「お前がまず、落ち着けよ」
カイル「えっと、まずは一旦、頭の中の地図は考えないようにしましょう。どうやら、間違えて覚えてしまったようです」
ジェイク「けっ! すぐに捨てちまえ、そんな地図」
カイル「いやあ、経験が逆に仇になるという良い見本ですね」
ジェイク「お前がポンコツなだけだろ」
ケイト「こういうときは、どうするのがいいんですか?」
ジェイク「そうですね……。光り草はありますか?」
ケイト「え? ……あ、種が5つしかありません」
カイル「そうですか。ここで使うのは危険ですね。ここは比較的、明るい場所ですから、地面になにか目印を残しておきましょう」
フィー「どんな目印がいいんですか?」
カイル「わかればなんでもいいんですよ。いらない物を置いておくとか」
ジェイク「なかったらどうするんだよ?」
カイル「そうですね。……あまりお勧めはできませんが、最悪な場合は、こうします」
ナイフでピッと指を切るカイル。
カイル「こうして、血を数滴、地面に残しておきます。そうすれば、目印になるのですが……」
グルルルルと魔物の唸り声。
ジェイク「おい、魔物だぞ」
カイル「このように、血の匂いに誘われて、魔物がやってくるので注意です……」
魔物が唸り声を上げて、襲ってくる。
カイル「逃げる準備をしてください」
ジェイク「はあ? 戦った方が早くないか?」
カイル「あれはシャドーウルフ。強くはないですが、無限に沸いて出ます。囲まれたら一巻の終わりです」
ジェイク「それを早く言え!」
カイル「全力で逃げますよー!」
カイルがいの一番で逃げる。
ジェイク「おい! こういうときは、お前が足止めするんじゃねーのかよ!」
場面転換。
ボロボロでヨロヨロとした足取りの4人。
カイル「はあ、はあ、はあ……。よ、ようやく5層に到着しました」
ジェイク「くそ、もう限界だ」
ジェイクがドサッと座り込む。
カイル「どうですか? まだ進みます?」
フィー「いえ。もう戻ります。いいよな、ジェイク?」
ジェイク「……ああ」
カイル「助かりました。もし進むと言われたら、どうしようかと思いましたよ。最悪、私だけリタイアになるところでした」
ジェイク「けっ! 情けねえガイドだぜ」
カイル「ははは。お恥ずかしい……」
場面転換。
ダンジョン入り口。
ケイト「ありがとうございました」
フィー「あの、これ、今回の依頼料です」
カイル「ありがとうございます」
カイルがフィーからお金を受け取る。
カイル「え? こんなに!? 受け取れませんよ」
フィー「いえ。受け取ってください。僕たちからの気持ちです」
ジェイク「おい、フィー! こんな役立たずに金を払う必要はねーよ! こいつは罠という罠を全部、引っ掛かりやがったんだぞ! 逆に俺たちが助けたくらいだ。本来なら、違約金を俺たちがもらってもいいんじゃないのか?」
フィー「ジェイク。お前は黙ってろ。……それじゃ、僕たちはこれで失礼します」
カイル「はい。今日はゆっくり休んでください」
フィー「あの、またお願いしてもいいですか?」
カイル「もちろんです」
フィー「ありがとうございます。じゃあ、行くぞ、ジェイク、ケイト」
3人が歩き出す。
ジェイク「おい、フィー。金を貰うっていうのは冗談だけどよぉ、値切ってもいいくらいじゃなかったのか?」
フィー「いや。謝礼はあれでも足りないくらいさ」
ジェイク「はあ?」
ケイト「私たち、装備も知識も覚悟も、何もかも足りなかったみたいね」
フィー「ああ。それを、身をもって、彼が教えてくれたんだ」
ジェイク「何言ってんだ、お前?」
フィー「彼は最高のガイドだよ」
ジェイク「意味わかんねー」
終わり。
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