僕は結婚したくない 5話

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト
千金良イノリ(ちぎら いのり)
青手木シオ(あおてぎ しお)
月見里カヤ(やまなし かや)

■台本

イノリ「改めて、明けましておめでとう、青手木」
シオ「明けましておめでとうございます、イノリさん」
イノリ「あー、いや、その……青手木」
シオ「なんでしょう?」
イノリ「着物で、三つ指ついて頭を下げるのは止めてくれ。普通にちょっと頭を下げるくらいでいい。なんか、僕が青手木を叱っているように見える」
シオ「わかりました」

シオがすっと立ち上がる。

シオ「それじゃ、イノリさん」
イノリ「ん? 初詣にでも行くか?」
シオ「姫始めをしましょう」
イノリ「ぶっ! おまっ! いきなり何をいってるんだよ!?」
シオ「あれ? おかしいです。お母さんがそう言えば喜ぶと言っていたのですが……」
イノリ「ああ……。あの人の入れ知恵か。いいか、青手木。あの人の言うことは忘れろ。それが今年初めの、青手木の使命だ」
シオ「よくわかりませんが、わかりました」
イノリ「ふう。新年早々、心臓が止まりそうなことを言われるとは思わなかったよ」
シオ「あ、イノリさん、これ」
イノリ「なんだ?」
シオ「お年玉です」
イノリ「……あー、えっと、青手木」
シオ「なんでしょう?」
イノリ「どれから突っ込めばいいのかな。まず、なんで、そんなに袋が分厚いんだ? いくら入れたんだよ?」
シオ「えっと100万です」
イノリ「入れすぎだ!」
シオ「そうなんですか?」
イノリ「どこの大富豪の子供だよ。お年玉に100万って。それに、そもそも、僕が青手木にお年玉をもらう意味がわからない」
シオ「そう……なんですか? イノリさんは色々と金銭的に厳しいから喜ばれると聞いたのですが……」
イノリ「ああ、これはメイド長さんの仕業か。いいか、青手木。お前の今年二番目の使命は、これをメイド長さんに戻すことだ」
シオ「すみません。……お年玉というものが、よくわかってなくて……。戻しておきます」
イノリ「さてと、じゃあ、せっかくだし、初詣にでも行くか」
シオ「はい」

そのとき、バンとドアが開く。

カヤ「イノリん、あけおめー」
イノリ「あ、月見里さん。明けまして、おめでとう」
カヤ「一緒に初詣に……って、シオりんに先越されてるー!」
イノリ「ああ、気にしないで。青手木は31日の23時59分に、よいお年をって帰って、0時ピッタリに来たんだ」
カヤ「ええー! それはそれでダメじゃん! めちゃめちゃ先越される―!」
シオ「カヤさん、明けましておめでとうございます」
カヤ「あ、うん。明けましておめでとう、シオりん。今年もイノリんを取り合おうね」
シオ「はい。負けません」
イノリ「……なんだか、本人を目の前にそういわれると恥ずかしいような、恐ろしいような」
シオ「あ、そうです。カヤさん、これ、お年玉……」
イノリ「使いまわすなっ!」
カヤ「あははは。同級生からお年玉はもらえないよー」
シオ「そうですか……」
カヤ「あ、そうだ、イノリん」
イノリ「なに?」
カヤ「お年玉ちょうだい!」
イノリ「……さっき、同級生からもらえないって言ってなかった?」
カヤ「彼氏としてほしいなぁ」
イノリ「あれ? 彼氏って、彼女にお年玉渡すもんだっけ?」
シオ「ですが、イノリさんは、日々の生活もキツイくらいで、お金は持ってないかと……」
イノリ「う、うん。そうなんだけど、ズバッと言われるとなんか凹むな」
カヤ「うん。だから、お金じゃなくて、愛でお年玉をちょうだい」
イノリ「あ、愛!?」
カヤ「キスして」
イノリ「ええええ!」
シオ「……イノリさん。私も欲しいです、お年玉」
イノリ「いやいやいや! お年玉にキスなんて聞いたことないよ!」
カヤ「そんなことないよ、常識だよ、常識」
シオ「はい。常識です」
イノリ「さっき、お年玉のことはよくわからないって言ってただろ!」
カヤ「さあさあさあ! お年玉をいただきましょーか!」
シオ「お年玉をもらうまで帰りません」
イノリ「ちょ、ちょっと二人とも、怖いんだけど……」
カヤ「とりゃー!」
イノリ「うわー!」
カヤ「ちっ! 避けられた!」
シオ「甘いです」
イノリ「うわっ! いつの間に背後に!?」
シオ「今です。押さえつけているので、お年玉を奪ってください」
カヤ「さすが、シオりん、いい仕事するね!」
シオ「私も後で、お年玉をもらうのを手伝ってください」
カヤ「おっけー!」
イノリ「いや、おっけーじゃなくて……」
カヤ「それじゃ、いただきます!」
イノリ「ぎゃあああー!」

イノリ(N)「こうして、新年早々、僕はひどい目にあった……。ん? あれ? お正月早々、彼女からキスされるなんて、いいことじゃないのか? うーん。なんだろ? 嬉しいことのはずなのに、トラウマになるって。……とにかく、今年も色々と大変な年になりそうだ」

終わり。

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