あの日の奇跡

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
貴教(たかのり)
玲(れい)
美弥(みや)

■台本

玲「私ね、貴教と出会えたことは奇跡だと思うんだ」
貴教「大げさだよ、玲」
玲「あら。貴教はそう思ってないってこと?」
貴教「もちろん、玲と出会えたことはよかったと思ってるよ。でも、それよりももっと大切なことがあるんじゃないか?」
玲「なに?」
貴教「この先もずっと一緒にいられること」
玲「あー。確かに。出会ったことよりも、この先もずーっとずーっと一緒にいられる奇跡の方が大事だね」
貴教「だろ?」
玲「うん。……ねえ、貴教。これからも、ずっと私と一緒にいてくれる?」
貴教「当たり前だろ」
玲「よかった。約束だからね? 破ったら、許さないから」
貴教「……ああ。絶対の約束だ」

貴教(N)「このときの、玲とのやりとり。今でも俺は後悔している。……どうして、俺は、玲にも、ずっと一緒にいてくれと約束しなかったのか」

場面展開。
部屋の中。
貴教がスマホを操作している。

貴教「……」

ドアが開く音。

美弥「兄貴、お昼ご飯できたって」
貴教「んー。今、行く(操作しながら)」
美弥「兄貴、いつもスマホで何してるの? ゲーム?」
貴教「いや……そうじゃなくて……(操作しながら)」
美弥「わかった。エロゲ―でしょ?」
貴教「違うって」
美弥「すぐ否定するのが怪しい。そりゃー!」

美弥が貴教のスマホを奪う。

貴教「ちょ、何するんだよ」
美弥「どれどれ? どんなゲームかなっと……って、メール?」
貴教「返せ」
美弥「なになに? ……これ、日記? メールにしては長くない?」
貴教「か、え、せ」
美弥「これ、女の子にでしょ? 付き合ってるの?」
貴教「……」
美弥「うわー、結構、臭いこと書いてある……あっ! 送っちゃった」
貴教「おい!」
美弥「……あれ? エラーで返ってきたよ? アドレス違うって」
貴教「……っ!」

貴教が美弥からスマホを取り返す。

貴教「……」
美弥「……もしかして、そのメールって玲さんに?」
貴教「……」
美弥「兄貴、玲さんは……」
貴教「わかってるよ!」
美弥「じゃあ止めなよ、こんなこと!」
貴教「……」
美弥「もう、忘れなくっちゃ……」
貴教「……ほっといてくれよ」
美弥「そんなんじゃ、玲さん、天国で安心できないよ」
貴教「出てけ」
美弥「え?」
貴教「ご飯はいらない。もう、部屋から出てってくれ」
美弥「……兄貴」

貴教(N)「突然の事故だった。車に轢かれて即死だったらしい。……玲の最後言葉は――」

玲「じゃあ、貴教。また後でね」

貴教「……だった。どうしてだ? なんで、急に俺の前からいなくなってしまったんだ……。お前がいなくなったら、一緒にいられないじゃないか。俺に約束を守らせてくれよ」

場面転換。
部屋の中。
貴教がメールを打っている。

貴教「玲。今日は久しぶりに外に出てみたんだ。すごく天気がよくて、空が青くて、透き通ってた。……前にも一緒に空を見上げたよな。あの日はすごく天気が良くて、星が綺麗に見えそうってことで、山に星を見に行ったら、急に雨が降ったんだよな。二人で大笑いして、雨が降る街の景色を見たんだよな。……そっちは今、どうなんだ? 綺麗な空は見えるのか?」

貴教が送信ボタンを押す。
すると、すぐにエラーメッセージが戻ってくる。

貴教「玲……。玲……。お願いだ。俺を一人にしないでくれ」

場面転換。
部屋の中。
貴教がメールを打っている。

貴教「玲。ごめん。もう、限界だ。……もういいよな? お前のところに行っても。……そうだよ。だって、俺はお前とずっと一緒にいるって約束したもんな。……だから、玲のところに行くよ」

メールの送信ボタンを押す。
そして、立ち上がり、ロープの前に立つ。

貴教「……」

そのとき、貴教のスマホの着信音が鳴る。

貴教「……え?」

貴教がスマホを手に取る。

貴教「メール? 誰から……え? 玲……?」

貴教がメールを開く。

玲「もう。だらしないなぁ。私が一緒にいたいって思った貴教は、あのときのように格好いい貴教だよ。大丈夫。貴教は私がいなくても、頑張れるって」

貴教が慌ててメールを打つ。

貴教「……違う。俺は玲がいたから、俺でいられたんだ。だから頼む。約束通り、そっちに行かせてくれ」

メールを送信する貴教。
するとすぐに着信がある。

玲「ふふ。そりゃさ、少しは落ち込んでくれないと、私も寂しいなぁーって思うよ。でもね。約束は守ってくれてるよ」

目を見開く貴教。

貴教「……え?」

また、メールが届く。

玲「これからも、ずっと一緒だからね」
貴教「……う、うう」

泣き始める貴教。

貴教(N)「あの日以外、玲からのメールが届くこともなかったし、俺のメールもエラーで返ってくる。でも俺は……」

美弥「ホントにいいの? 玲さんのアドレスを消しちゃって」
貴教「ああ。いいんだ。メールは届かなくても、玲は一緒にいてくれるから」

終わり。

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