闇の眷属 厨二の男子

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■関連シナリオ
<闇の眷属>
<闇の眷属 最強の能力>

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト
田中 透真(たなか とうま)
八神 華憐(やがみ かれん)
悪魔
天使

■台本

放課後の部室内。

華凜「……ふーむ」
悪魔「華凜様、いかがなさいましたか?」
華凜「透真のことなんじゃが……」
悪魔「はい」
華凜「忌憚のない意見を聞かせてくれ」
悪魔「なんでしょう?」
華凜「……もしかして、あやつは……闇の眷属ではなく、ただの人間じゃないかと思ってのう」
悪魔「……今更……ですか?」
華凜「なに?」
悪魔「あ、いえ。……実は私も裏で色々と調べてみたのですが」
華凜「また、勝手に動いたのか。まあ、よい。で?」
悪魔「あの、透真という人間は100%純正の人間です。また、闇の眷属側からのアプローチをしたのですが、人間と関わったという情報を一切、見つけられませんでした」
華凜「なるほどな。つまり、現状では透真が闇の眷属であるという根拠が何もないというわけじゃな?」
悪魔「はい」
華凜「……本人からも闇の力どころか、魔力さえも微塵も感じん」
悪魔「はい」
華凜「つまり、儂はこの半年という時間をただの人間と無駄に過ごしたというわけじゃ」
悪魔「……」
華凜「儂らからすれば、短い時間だが、無駄にしたということは変わらん」
悪魔「……姫。人間を知るという点で見れば、すべてが無駄とも言えません」
華凜「……ふん。慰めなど不要じゃ」
悪魔「いえ、そのようなことは……」
華凜「まあ、よい。このところ、天使のやつらも人間界に降りてきている。儂らも動かざるを得ないじゃろう」
悪魔「……では」
華凜「うむ。華凜という名も、今日限りじゃ。ここを引き払い、魔界に帰るぞ」
悪魔「はい」

そのとき、ガラガラとドアが開く。
悪魔がシュッと音を立てて消える。

透真「華凜さん、お待たせ―。掃除が長引いてって、あれ? 今、ここに誰かいた?」
華凜「いや、別に」
透真「そっか。気のせいかな。それより、今日の活動なんだけど……」
華凜「儂は帰る。お主一人で活動するがよい」
透真「え? 華凜さん、帰っちゃうの?」
華凜「二度、言わせるな」
透真「どこか具合悪いの?」
華凜「はは。儂が、か? そんなわけなかろう」
透真「……じゃあ、どうして?」
華凜「馬鹿々々しくなった」
透真「え?」
華凜「貴様に付き合っている時間が無駄じゃと気づいただけじゃ」
透真「……ご、ごめん、華凜さん。僕、なんかした? 謝るから許してよ」
華凜「……別に。貴様のせいではないな。儂が愚かだっただけのことじゃな」
透真「そんなことない!」
華凜「む?」
透真「華凜さんは愚かなんかじゃない! 誰がそんなこと言ったの? 華凜さんを悪く言うやつは僕が……いや、闇の眷属である我が塵に変えてやる!」
華凜「透真よ」
透真「なに?」
華凜「もうよいのじゃ」
透真「え?」

華凜が歩き出す。

華凜「……透真よ。元気でな」
透真「華凜さん?」

華凜がドアを開けて部室から出る。

場面転換。
廊下を歩く華凜。

華凜「……」
悪魔「姫。どうなされました?」
華凜「何がじゃ?」
悪魔「魔力がかなり乱れております」
華凜「……」
悪魔「なにかしら、精神的負担が掛かっている可能性があります。すぐに魔界へ戻り……」
華凜「少し、黙っておれ」
悪魔「……は」

悪魔がシュッと消える。
廊下を歩き続ける華凜。

華凜「……学校か。なんとも不思議な場所じゃ」

そのとき、何かが飛来してくるような音がする。

華凜「むっ!?」

ガラスが割れ、爆発音が響く。

天使「あらあら。人間界に悪魔が滞在してるってきいていたけど、随分と大物が釣れたわね」
華凜「……天使か」
天使「まさか、魔界の王の娘とこんなところで出会えるとは思わなかったわ」
華凜「貴様。儂が結界を張るのが遅れたら、学校自体が吹き飛んでおったぞ!」
天使「あははははは! それがなに? 人間の作った建物の一つや二つ、吹き飛んだところでなんだというのかしら?」
華凜「ふむ。実に天使らしい、無粋な奴じゃな」
天使「あははははは。悪魔ごときが私を馬鹿にするなんてね。……死にたいのかしら?」
華凜「はあ……。貴様の面は見るに堪えん。さっさと来い。格の違いを見せてやるわ」
天使「……ふふふ。あははははは! くたばりな!」
悪魔「おっと、これ以上はやらせませんよ」
天使「……下級悪魔はお呼びじゃないわよ」

天使が聖なる力を放つ。

悪魔「ぐあああああああああ!」

悪魔がどさりと倒れる。

華凜「な、なんじゃ? あの程度の力で?」
天使「あらあら。まだ気づかないのかしら? この街全体に、結界が張られていることに」
華凜「……まさか」
天使「その、ま、さ、か、よ。魔の力を完全に封じる結界を張っていたの。そして、さっき、その効果を発動させたわけよ」
華凜「くっ!」
天使「なんのためか知らないけど、人間界なんかに来たのが運の尽きね」
華凜「……」
天使「さあ、滅びなさい!」

天使が巨大な聖なる力を放つ。

華凜「……ここまでか」

ピタリと音が止む。
そして、爆発音が響く。

天使「なっ!」
透真「ぷはー。危なかったぁ」
華凜「と、透真? 何をしておる?」
透真「時間を止める眼帯、役に立ったみたいだね」
華凜「透真よ、ここは危険じゃ! 早く逃げろ」
透真「よくわかんないけど、華凜さんがピンチってことだよね? なら、僕が助けないと!」
華凜「そんなこと言ってる場合ではない!」
透真「貴様……。華凜に手を出すとは、命がいらんということだな?」
天使「な、なんだ、貴様は?」
透真「我は闇の眷属」
天使「闇の眷属だと!?」
透真「死にたくなければ退くがよい。今、退けば命までは取らん」
天使「く、ここまで来て、諦められるわけないわ!」

再び、聖なる力を放つ。

透真「へ?」
華凜「透真!」
透真「うわわわわ!」

音がピタリと止まった後、爆発音が響く。

透真「ぷはー。危なかった……」
天使「しゅ、瞬間移動!?」
透真「ふははははは。瞬間移動だと? 我はゆっくりと動いたつもりなのだが?」
天使「く……」
透真「さて、そろそろ、避けるのも飽きてきたな。こちらから行かせてもらおうか」
天使「お……覚えてなさいよ!」

天使がピューと飛び去って行く。

透真「……はあ。よかった。逃げてくれた」
華凜「透真!」

華凜が駆け寄ってくる。

透真「あ、華凜さん。大丈夫? 怪我はない?」
華凜「儂よりも、お主は? どこも痛いとこはないか?」
透真「あははは。大丈夫。……って、それにしても華凜さん、すごい友達だね」
華凜「む?」
透真「爆発のトリックとかびっくりしたよ。でも、ちょっとやり過ぎだと思うよ」
華凜「……はは。そうじゃな」
透真「……あれ? もしかして、さっきの子が華凜さんを愚かって言ったの? それなら、誤らせないと!」
華凜「いや、そうじゃないんじゃ。あやつは違うんじゃよ」
透真「そっか」
華凜「……にしても」
透真「ん?」
華凜「お主は凄いな」
透真「ふははははは! 当然だ! 我は闇の眷属だからな」
華凜「ふふ。そうじゃな」

場面転換。
放課後の部室内。

悪魔「姫。……魔界に帰る話はどうされたのですか?」
華凜「ふむ。あの話は白紙じゃ」
悪魔「え?」
華凜「それに、儂のことは華凜と呼べ」
悪魔「……」

そのとき、ガラガラとドアが開く。
悪魔がシュッと音を立てて消える。

透真「華凜さん、お待たせ―。また、掃除が長引いてって、あれ? 今、ここに誰かいた?」
華凜「いや、別に」
透真「そっか。気のせいかな。それより、今日の活動なんだけど……」
華凜「そうじゃな。今日は魔力の引き出し方の研究をするというのはどうじゃ?」
透真「うん! じゃあ、それで!」
華凜「今日は厳しくいくぞ。ついてこれるかな?」
透真「ふははははは! 当然だ! 我は闇の眷属だぞ」
華凜「ふふふふ。そうじゃな」

終わり。

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