二日酔い
- 2023.01.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
卓(たく)
奏(かなで)
翔琉(かける)
麗香(れいか)
■台本
社内。
翔琉「だーかーら! それだと効率悪いっていってんの!」
麗香「効率を重視しすぎて、クォリティが下がった意味ないでしょ!」
翔琉「クォリティを高くしても、納期に間に合わなかったらどうすんだよ!」
麗香「質の悪い物を出して、売れない方が致命的だと思うんだけど?」
翔琉「はあ?」
麗香「なによ?」
そんな二人の様子を見て、ため息をつく吾郎と奏。
吾郎「はあ……。また宮川先輩と幸田先輩っすか」
奏「毎日毎日、よくもああやって喧嘩できるわね。逆に感心するわ」
吾郎「喧嘩してる間に作業すればいいんじゃないっすかっていうのは野暮ですかね?」
奏「今はデスマーチ中だからね。ああやってガス抜きしてるのよ」
吾郎「どういうことっすか?」
奏「喧嘩してると見せかけて、じゃれてるの」
吾郎「ああ……。学生の頃、そういうやついたっすね」
奏「本人たちはあれで、イチャイチャして満足かもしれないけど、周りの私たちのことも考えてほしいわね」
吾郎「あれですか? やっぱり、2人は付き合ったり別れたりを繰り返してるんすか?」
奏「ううん。一回も付き合ってないらしいわよ。高校からずっと一緒だったらしいけど」
吾郎「ええ! 高校から就職先まで一緒なんですか?」
奏「普通はなかなかないわよね」
吾郎「……それ、絶対、どっちかが合わせましたよね?」
奏「でしょうね。じゃないと一緒の職場なんてそうそうないわよ」
吾郎「二人とも両想いなんすよね?」
奏「本人は否定してるけどね。はたから見れば、バレバレだけど。周りからは付き合ってないだけのカップル、なんて言われてるし」
吾郎「なんで付き合わないんっすかね? やっぱ、同じ職場で付き合うのは気まずいからなんですか?」
奏「さあ。こっちからすれば、さっさと付き合って結婚でもしてくれれば、こんな面倒くさいのを見なくて済むんだけどさ」
吾郎「じゃあ、付き合うように仕向けたらどうなんすか? 見る限り、一押しってところですよね?」
奏「無理無理。恥ずかしがっちゃって、告白なんてしないわよ」
吾郎「……高校生以下っすね」
奏「まあ、ね。……はあ、ホント、なんとかならないかしら」
場面転換。
居酒屋。
麗香「お疲れさまでした、かんぱーい!」
ジョッキで乾杯する音。
卓「はあ……」
奏「どうしたの? 打ち上げでため息なんて」
卓「いやあ、今回のデスマーチもきつかったなぁって思いまして」
奏「大丈夫、大丈夫。あと5回も経験すれば慣れるから」
卓「……そんなに経験したくないっす」
奏「ま、ぱぱーっと飲んでストレス発散すればいいわ」
卓「……」
奏「どうかしたの?」
卓「いや、あの二人ですけど……」
翔琉「お前のおかげで、乗り切れたよ。ありがとな」
麗香「何言ってんのよ。あんたが裏で調整してくれたからでしょ」
奏「……あの二人がどうかしたの?」
卓「普通に仲いいなって思いまして」
奏「だから言ったでしょ。あの二人は付き合ってないだけのカップルだって」
卓「……付き合わせてみませんか?」
奏「どうやって?」
卓「ここは居酒屋っすよ」
場面転換。
卓「先輩、お疲れ様です」
翔琉「おお、お疲れ。どうだ? 仕事には慣れたか?」
卓「ええ。今回で大分」
翔琉「そうか。よかったよかった」
卓「あれ? 先輩、ジョッキ空ですよ。すいませーん! 生一つ!」
翔琉「お、気が利くな」
場面転換
奏「お疲れー。今回は大変だったねー」
麗香「あ、お疲れ様です」
奏「あ、そうだ。カルーアミルク飲んだ? すっごい美味しいよ」
麗香「ホントですか?」
奏「飲んでみなよ、絶対気に入るから」
麗香「はい、飲んでみたいです」
奏「すいませーん! カルーアミルク一つ、お願いします」
場面転換
グビグビと生ビールを飲む翔琉。
翔琉「ぷはー」
卓「いやー、いい飲みっぷりですね。おかわりはどうっすか?」
翔琉「……そ、そうだな」
卓「すいません、生一つ追加でー」
翔琉「ふう。……少し酔ったかな」
卓「あ、そういえば先輩に相談があるんですよ」
翔琉「なんだ?」
卓「俺、今、好きな人がいて……」
翔琉「誰だ?」
卓「幸田先輩です」
翔琉「……え?」
場面転換
カクテルを飲む麗香。
麗香「あー、ホント、ここのカクテル美味しいですね」
奏「ねえ、そういえばさ、麗香ちゃんって、翔琉くんと付き合わないの?」
麗香「あはははは。何言ってるんですか。付き合うわけないですよ」
奏「……嫌いなの?」
麗香「いえ、嫌いってわけじゃないですけど」
奏「実はさ、翔琉くんに相談されてるんだよね」
麗香「どんな相談ですか?」
奏「麗香ちゃんのこと好きだけど、告白して断られるのが怖いんだって」
麗香「え? 翔琉が……?」
奏「どう? もし、告白されても断る?」
麗香「……それは」
場面転換
居酒屋の外。
ドアを開けて麗香が出てくる。
翔琉「あ、麗香。呼び出して悪かったな」
麗香「……話ってなに?」
翔琉「あのさ……。俺と付き合ってくれないか?」
麗香「……うん。いいよ」
翔琉「ホントか!?」
麗香「……ちゃんと結婚前提だよ?」
翔琉「もちろんさ」
それを見ている卓と奏。
卓「やりましたね」
奏「作戦、成功。でも、どうやってけしかけたの?」
卓「俺が幸田先輩が好きだから、仲を取り持って欲しいって言ったら、ダメだって言われて……」
奏「なんでダメなのかって突っついたのね」
卓「そういうことっす」
奏「はあ。これで二人のイチャイチャ喧嘩から解放されるわね」
場面転換。
通勤路。
奏と卓が歩いている。
卓「いやあ、昨日はビックリするくらい上手くいきましたね」
奏「そうね。さっそく今日から、一緒に出社するかもね」
卓「あ、噂をすれば、二人が一緒に歩いてますよ」
卓「先輩、おはようございます」
翔琉「おはよう……」
卓「あれ? どうしたんすか?」
翔琉「二日酔いだ。……頭が痛くてさ」
麗香「だっさ」
翔琉「なんだよ、お前だって二日酔いだって言ってただろ」
麗香「私はあんたと違って二日酔いでも表に出さないから」
翔琉「はあ?」
麗香「なによ!?」
奏「まあまあ。付き合ってるんだから、喧嘩はあとでやりなさいよ」
翔琉「え?」
麗香「……付き合ってるってなんですか?」
卓「え? いや、昨日、告白したじゃないですか」
翔琉「は? 告白? 誰が?」
卓「……」
奏「……もしかして。ねえ、二人とも、昨日のことはどのへんまで覚えてる?」
翔琉「……乾杯して、一杯目を飲んだくらいです」
麗香「ざっこ」
翔琉「お前はどうなんだよ!?」
麗香「私は三杯目まで覚えてるわ」
翔琉「ほとんど変わんねーじゃねーか」
麗香「はあ? 一杯と三杯じゃ全然違うわよ」
卓「……」
奏「……」
卓「面倒くさいっすね、あの二人」
奏「そうね……」
終わり。
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