器の大きさ

2023.01.24
ボイスドラマ（10分）

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■概要
人数：5人以上
時間：5分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
紅（こう）
雅史（まさし）
直紀（なおき）
おばあさん
不良
少年
蒼（あお）

■台本

河原。

紅「うおおおおお！」
蒼「おらあああ！」

紅と蒼が殴り合う。

場面転換。

紅「いててて……くそ」
雅史「今日も引き分けっすか」
直紀「紅さんと互角って、やべーよな」
紅「あいつとは絶対に決着つけてやる！　もちろん、俺の勝ちでな」
雅史「その意気っす！」
直紀「そういえば紅さん。なんで、蒼と喧嘩してるんですか？」
紅「ああ……それは……」

不良の声が響く。

不良「謝って済む問題か？　ああ？」
少年「す、すみませんでした……」
不良「だーかーら！　謝って済む問題じゃねーって言ってんだよ！」
少年「あ、あの……」
不良「金出せってんだよ！　殴られたくねーだろ？」
少年「は、はい……」
紅「おらっ！」
不良「ぐはっ！」
少年「え？　え？　え？」

雅史と直紀が走ってくる。

雅史「紅さん、いきなりどうしたんすか？」
紅「虐めを見つけたから、とりあえずぶっ飛ばした」
直紀「けど、事情もわからないのに、いきなり殴るのもどうかと思うんですけど……」
紅「あー、そうだな。もし、俺の勘違いなら、気が済むまで殴らせるよ」
雅史「見も知ないやつのためにそこまでするなんて……」
少年「あ、あの、ありがとうございました。この人にはいつも虐められてて」
紅「やっぱそうか。次にこいつが絡んできたら、紅のダチって言え。それでもダメならすぐに俺を呼べ」
少年「いえ、そこまでしてもらうわけには……」
紅「いいんだって。気にすんなよ。ほら、これ、俺の携帯番号。じゃあな」

スタスタと歩き始める紅。

雅史「あ、紅さん、待ってくださいよ」

雅史と直紀も慌ててついていく。

少年「あ、ありがとうございました！」

ぺこりと少年が頭を下げる。

直紀「さすがですね」
紅「なにがだ？」
直紀「いえ。ずっと、ついていきますから、俺」
紅「あん？」
雅史「あ、ズルいぞ、俺もついていくっすから」
紅「勝手にしろ……って、ん？」
雅史「どうしたんすか？」
紅「ちょっと待ってろ。

紅が走っていく。

紅「おい、ばーさん。向こうに渡りてーのか？」
おばあさん「え？　ああ、そうなんだよ。近くに信号もないし、どうしようかねぇ」
紅「ほら、おぶされよ」

紅がかがむ。

おばあさん「へ？」
紅「ほら、渡りたいんだろ？」
おばあさん「え？　ああ、じゃあ、お言葉に甘えて……」

おばあさんが紅の背中におぶさる。

紅「いくぜ。しっかり捕まってろよ。うおお！」

紅がおばあさんをおぶった状態で、車が行きかう道路を横断する。

場面転換。
紅が歩いてくる。

紅「すまん、待たせたな」
直紀「なんで、知らないばあさんのためにあそこまでするんですか？」
紅「あん？　困ってるやつがいるなら助けるのは当たり前だろ」
雅史「うわー。紅さん、やっぱ器が大きいっすね」
紅「は？　こんなの普通だろ」
直紀「いや、そんなことないですよ。なかなかできないです」
紅「ふーん。けど、ま、そんなのは別にどーでもいいだろ」
直紀「そういうところも器が大きいってところですよね」
雅史「そうそう。ホント、紅さんは器が大きいっす！」
直紀「……あ」
紅「どうした？」
直紀「いえ、そういえば蒼のやつとの因縁の理由が中途半端だったなって思いまして」
紅「ああ、蒼のことな。……あいつのことは絶対に許せねえ」
雅史「紅さんがそこまで言うってことは……相当なことを蒼のやつがしたってことっすね？」
紅「ああ。……あいつは５年前」
直紀「ゴクリ……」
紅「俺のシュークリームを食いやがったんだ」
直紀「……え？」
雅史「え、えっと、それだけっすか？」
紅「はあ？　すげー楽しみにしてたんだぞ！　それを食うなんて、ぜってーゆるせねえ！」
直紀「……」
雅史「……」
紅「あいつとは絶対に決着をつける。いや、叩きのめしてみせる！」