魔王と勇者は忙しい7

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
グドラス
魔王
村人1~2

■台本

魔王の城。

玉座の間。

グドラス「お呼びですか、魔王様」

魔王「……おお、来たか。グドラス」

グドラス「随分とお疲れのようですね」

魔王「……ん? ああ、まあな。ここ500年の中で一番疲れた」

グドラス「何をやってたのですか?」

魔王「これ、作ってたんだ」

魔王がノートをグドラスに渡す。

魔王「今回の侵略計画書」

グドラス「っ!? まさか、これを魔王様自ら書かれたのですか?」

魔王「ふふ。まあな」

グドラス「うう……」

魔王「なぜ、泣く?」

グドラス「ご立派になられましたな。いつもは無茶苦茶な命令をするだけの、駄々っ子のようなことばかりされていたのに」

魔王「……お前、減俸な」

グドラス「褒めたのに、なぜ!?」

魔王「今回は気合を入れろよ。しっかりと計画書を読み込んでおくんだ。いいな?」

グドラス「承知しました」

ペラペラとページをめくるグドラス。

グドラス「あの……魔王様」

魔王「なんだ?」

グドラス「この計画書なのですが……」

魔王「ふふ。よくできてるだろう? 2日間徹夜して作ったのだ」

グドラス「我々、魔族側の動きを指定しているのは良いのですが、人間側の動きも指定されてますが?」

魔王「それがどうした?」

グドラス「……いえ、その……。この通りに人間たちが動くとは限らないのでは?」

魔王「……そこは、あれだよ。……お前が何とかしろよ」

グドラス「いやいやいや。敵側の動きをこちらが決められるわけないじゃないですか」

魔王「優れた軍師は、敵の動きを読むと言うぞ」

グドラス「それはニュアンスが違いますし、そもそも、魔王様は優れた軍師ではなく、愚鈍な軍師ですよね?」

魔王「お前、今月の給料なしな」

グドラス「本当のことを言っただけなのにっ!?」

魔王「と、とにかく、その計画書通りにやれ! これは命令だ!」

グドラス「ですが、その、台詞まで書かれてるのはさすがに無理です。これは計画書というより、台本です」

魔王「……」

グドラス「しかも、勇者の台詞まで書いてますが、勇者が現れるかもわかりません」

魔王「あ、それは大丈夫」

グドラス「なぜですか?」

魔王「そりゃ、お前……。あれだよ。来るって言ってたんだよ」

グドラス「……勇者がですか?」

魔王「そう」

グドラス「えーと、それはいつですか? というより、魔王様、勇者と話したことがあるのですか?」

魔王「あー、いや、あれだよ。面倒くさいな。ビビッと来たの! 絶対来るから!」

グドラス「ですが」

魔王「うるさいうるさいうるさい! 俺は疲れてんの! もう寝るから!」

グドラス「あっ、魔王様!」

魔王がツカツカと歩いて行ってしまう。

グドラス「はあ……。どうしたものか……」

場面転換。

村の広場。

村人1「魔王軍が攻めてくるって、大変じゃないですか!? すぐに逃げる準備を……」

グドラス「大丈夫だ。落ち着いてくれ」

村人1「ですけど……」

村人2「グドラスさん、なにか策でもあるのかい?」

グドラス「うむ。実はこういうものを手に入れた」

村人1「……魔王軍侵略計画書?」

グドラス「そうだ。ここには魔王軍がどう攻めてくるのかが事細かく記されている。これを逆手に取れば、撃退できるはずだ」

村人2「さすがグドラスさんだ。まさか、そんな凄い物を手に入れるなんて……」

村人たちがページをペラペラとめくる。

村人2「あの……グドラスさん」

グドラス「なんだ?」

村人2「これ、台詞とかも書いてあるんだけど。しかも村人1とかの指定が……」

グドラス「はあ……。そうなのだ。これを書いたのは無能で馬鹿でどうしようもない奴なんだ。だが、だからこそ、裏がかけるというものだ」

村人2「ほおー。さすがグドラスさんだ」

グドラス「ということで、お前たちはこの計画書通りに動いてくれ。もちろん、台詞もそのまま言うんだ」

村人2「それだと、村が潰されるんじゃないかい? これ、侵略計画書だろ?」

グドラス「……はあ。最後まで読んで見ろ」

村人1「え?」

ペラペラとページをめくる村人たち。

村人2「……これって」

グドラス「ああ。計画書の内容では、魔王軍の侵略は失敗する、つまり勇者が勝つという内容になっている」

村人1「あの、これって、『魔王軍の』計画書ですよね? なんで、魔王軍が負ける結果になってるんですか?」

グドラス「……知らん。あの馬鹿の思考がどうなってるのかなんて、千年かかってもわかる訳がない」

村人1「あの……ただ、ここには勇者が来ることが前提で書かれてますが、来なかったら終わりなのではないでしょうか?」

グドラス「……その点は大丈夫だ」

村人1「といいますと?」

グドラス「……呼んでおいた」

村人2「おおお! さすがグドラスさん! まさか、勇者と話が通ってるなんて」

グドラス「と、とにかく、お前らはなにも心配することなく、その台本……計画書に沿って行動するんだ。いいな?」

村人1「わかりました」

場面転換。

魔王軍が侵攻している。

ドドドという魔物たちの足音が響く。

グドラス(N)「負けるために進軍するというのも、妙な感じだな。とはいえ、そっちの方が私にとっては都合がいいのだが……。あとは、勇者が来るかどうかだな。まあ、来なかったら、計画通りにいかなかったということで引き返すか」

グドラス「よし、そろそろ、人間たちの村だ。各々、計画書通りに動けよ!」

村の入り口まで進んだ時、村の中がザワザワとしているのに気づくグドラス。

グドラス「ん? なんだ? 人間たちがなんか騒がしいな。台本ではそんなことは書かれていなかったのだが……。まあ、いい。とにかく、台本通りに行くか」

魔王軍の侵攻がピタリと止まる。

村人1「……なんで、こんなところに?」

村人2「どうする、こんなこと台本にはなかったぞ」

村人1「それより、勇者はどこだ? 勇者が着てないぞ!」

グドラス「愚かなる人間共よ! 今日こそは滅んでもらうぞ!」

魔王「……ふふふふ! 愚かなのは貴様らの方だ、魔王軍。ソフィアちゃんのために死んでくれ」

グドラス「……あの」

魔王「ん? なんだよ?」

グドラス「なんで、こんなところにいるのですか?」

魔王「……なにが?」

グドラス「なぜ、魔王様が人間の村にいるのですか?」

魔王「……は? 魔王?」

村人1「うわあああ! やっぱり、魔王だったのか!?」

村人2「こんなの台本にはなかったぞ!」

魔王「しまった! 疲れて寝ぼけてたせいで、変装するの忘れてた!」

グドラス「……あの?」

魔王「あー、えっと、これはあれだよ、侵入捜査ってやつだ」

グドラス「そんなことは計画書にはなかったと思うのですが?」

魔王「うるさい! 俺は、もう帰る! さらばだ!」

ドロンと消えてしまう魔王。

村人1「あっ! 消えた」

グドラス「はあ……。一体、なんなんだ」

場面転換。

廊下を歩く魔王。

魔王「あー、くそ。やっぱ2日連続で徹夜はヤバいな。頭が働かねー。……と、そろそろグドラスが文句を言いに来る頃か。変装から戻らないと」

ドロンと音を立てて姿を変える魔王。

同時にドアが開く。

グドラス「魔王様。計画書について……」

魔王「ご苦労だったな、グドラス」

グドラス「……なっ!」

魔王「どうした?」

グドラス「おのれ、勇者! いつの間に城に!」

魔王「しまった! 頭がボケてて、どっちがどっちかわからなくなってた!」

グドラス「ここであったが100年目! 覚悟しろ!」

魔王「くそ! さらばだ!」

ドロンと音を立てて逃げる魔王。

グドラス「……一体、なんなんだ。はあ……」

終わり。

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