パワハラに遭わない方法
- 2023.03.20
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
真琴(まこと)
高山(たかやま)
純玲(すみれ)
■台本
社内。
怒られている真琴。
真琴「……す、すみません。チェックしたつもりだったんですけど」
純玲「真琴。私は言い訳を聞きたいわけじゃなく、いつまでに直せるかを聞いているんだ」
真琴「2時間で直します」
純玲「……2時間?」
真琴「うっ! ……1時間でやります」
純玲「よろしい」
場面転換。
勢いよく席に座る真琴。
真琴「ううー、あんなにチェックしたのにー」
高山「なんだ、真琴。珍しく部長に怒られたのか?」
真琴「はい……。あの殺気に満ちた目で睨まれました」
高山「そうか。それはゾクゾクするな」
真琴「はい。背筋が凍りましたよ」
高山「ま、ミスなんてもんは誰でもやらかすもんだ。気を落とすなよ」
真琴「……そうは言いますけど」
高山「なんだ?」
真琴「いや、俺って学生の頃からずーっと、怒られたりしたことなかったんですよ」
高山「あー、その世代は体罰だなんだって、教師も生徒に怒ったり殴ったりできないって話だよな」
真琴「はい。怒鳴られることもありませんでした。もちろん、俺自身、怒られないように気を付けていた、というのもありますけど」
高山「そっか。俺らの頃なんて、ゲンコツをもらうのなんて日常茶飯事だったけどな」
真琴「そのせいか、怒られることにものすごく恐怖を感じてしまうんです」
高山「……もしかしてお前、部長に詰めて貰えるのが怖いのか?」
真琴「そりゃそうですよ。今も膝がガクガクしてます」
高山「そりゃ、俺もそうなるけどさ……」
真琴「あー、もうダメです。2、3日は夜、寝れそうにないです」
高山「大げさだなぁ」
真琴「そんなことないですよ! 部長のあれは絶対、パワハラです! 俺、このままじゃ鬱になりますよ!」
高山「まあまあ、落ち着けって」
真琴「落ち着いてなんかられないですよ! ……そうだ! 俺、総務に掛け合ってみます! 部長がパワハラしているって!」
高山「やめろ!」
真琴「……先輩?」
高山「あー、いや、怒鳴ってすまん。俺の方がよっぽど、パワハラだな」
真琴「……いえ、そんなことは」
高山「いいか、よく考えろ。もし、お前がパワハラだと騒いで、部長が部署移動になったらどうするんだ?」
真琴「……いいことじゃないんですか?」
高山「……わかってないようだな。もしも、部長の次に来た人が、もっと厳しかったらどうする?」
真琴「え? えっと……それは、もう一度総務に掛け合ってみます」
高山「ふむ。じゃあ、総務の人間の立場になって考えてみろ。部長クラスとなれば、仕事ができると会社に認められた人間だ。そうだろ?」
真琴「そう……ですね」
高山「で、だ。下っ端の社員が、何度もパワハラしてくるから部長を変えろって言ってきたら、どう思う?」
真琴「……面倒くさい奴だと思います」
高山「そうだ。その場合、部長よりも下っ端社員が問題ありなんじゃないかって、考えるだろう」
真琴「……」
高山「変えることが、いいことに繋がるわけじゃないってことは常に考えておけ」
真琴「わ、わかりました……」
高山「じゃあ、どうすればいいかって話だ」
真琴「はい……」
高山「パワハラに遭わないようにすればいい」
真琴「それは今までしてきたつもりなんですけど」
高山「あー、すまん。言い方を間違えたな。パワハラと思わなければいい」
真琴「どういうことですか? 結局、我慢しろってことですよね?」
高山「……よし、いいだろう。お前に、この部署にいる人間のほとんどが使っているだろう、方法を教える。きっとお前ならできるはずだ」
真琴「なんでしょう?」
高山「言っておくが、これは諸刃の剣だ。最悪、後戻りできなくなる。それでも聞くか?」
真琴「俺……この会社が好きなんです。パワハラなんかで辞めたくはないです」
高山「……わかった。お前の覚悟は受け取った。じゃあ、その方法を教える」
真琴「……お願いします」
高山「よし、耳を貸せ」
真琴「……はい」
場面転換。
怒られている真琴。
純玲「真琴。何度言えばわかるんだ!」
真琴「はあ、はあ、はあ……すみません」
純玲「お前、やる気あるのか?」
真琴「もちろん、あります!」
純玲「……にやにやしてるんじゃない!」
バシっと資料で頭を叩かれる。
真琴「ああっ!」
純玲「……これ、どのくらいで直る?」
真琴「1時間でやります」
純玲「よし、頑張れ」
真琴「あ、やっぱり、2時間かかります」
純玲「な、ん、で、増えるんだっ!?」
グリグリと足を踏まれる真琴。
真琴「ああ……」
純玲「1時間でやれ、いいな?」
真琴「ありがとうございました……」
純玲「?」
場面転換。
自分の席にへたり込むように座る真琴。
真琴「はあ……」
高山「どうだった?」
真琴「凄かったです。今でも興奮で膝がガクガクします」
高山「そうだろう、そうだろう」
真琴「まさか、こんな方法があったなんて」
高山「まあ、この部署……いや、純玲部長にしか使えない方法だけどな」
真琴「そうですね。……総務に掛け合うなんて、俺が間違ってました」
高山「はっはっは。わかってくれればそれでいいんだ」
真琴「パワハラをご褒美だと思う。……究極の、パワハラに遭わない方法ですね」
高山「こちら側へようこそ、真琴」
真琴「ああ……。またご褒美をもらいたいです」
終わり。
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