どうすりゃいいんだよ!

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
寛人(ひろと) 18歳 高校3年生
円(まどか) 18歳 高校3年生 寛人の幼馴染
雅(みやび) 18歳 高校3年生 寛人の好きな人
占い師 ※年齢、性別自由
執事 50歳

■台本

寛人(N)「俺には今、好きな人がいる。というより、3年前からずっと片思いなのだ。あの子に振り向いてもらうために、俺は3年間、努力してきた。そして、俺は今日、その子に告白する」

場面転換。

学校裏。周りには寛人以外、誰もいない。

寛人「……(ごくり)」

雅が走ってくる。

雅「お待たせー、寛人くん。お話ってなあに?」

寛人「……雅ちゃん。俺……俺! 君が好きだ! 付き合ってくれ!」

雅「んー。ごめんね」

寛人「ええ! な、なんで……?」

雅「寛人くんの顔は、実は雅、結構好きなんだ」

寛人「そ、それなら……」

雅「でもぉ。寛人くん、お金持ってないでしょ?」

寛人「え? お、お金?」

雅「雅ね、将来はお金持ちの男の人と結婚して~、専業主婦になって、遊んで暮らすのが夢なんだぁ」

寛人「随分と……現実的というか、夢がないというか、男からしたら引く夢だね」

雅「っていうことだから、ごめんね~」

寛人「ちょっと待って、雅ちゃん!」

雅「な~に~?」

寛人「俺、頑張るよ! 絶対にお金持ちになってみせる! だから……」

雅「違う、違う~。これからじゃなくて、もうお金持ちじゃなくっちゃ。寛人くんがお金持ちになるまで、雅、待ってられなーい」

寛人「でも、それって親が金持ちじゃないと無理なんじゃ……」

雅「あははは~。そうだねー。ってことで、ごめんねー。じゃあ、これからも友達ってことで! ばいばーい!」

雅が走り去っていく。

その場に崩れ落ちる寛人。

寛人「……そんなの、どうすりゃいいんだよ」

場面転換。

夕方の通学路。

寛人と円が歩いている。

寛人「ああー、くそ。親が金持ちだったらなぁ」

円「そんなこと言ったって、しょうがないでしょ。男なら、諦めも肝心だよ」

寛人「うるさいなー。円は他人事だからそんなこと言えるんだよ」

円「別に他人事ってわけじゃ……」

寛人「うう……。俺の3年間は一体……」

円「……けどさー、雅さんも見る目ないよね」

寛人「ん? 何がだ?」

円「正直に言うと、寛人ってかなり優良物件だと思うんだよね」

寛人「……どういうことだよ」

円「だってさ、勉強も、運動も、学年上位でしょ? しかも、オシャレにだって気を使ってるし、話題も豊富だし、顔だってそこそこいいと思うよ」

寛人「……めっちゃ努力した結果だよ」

円「私はさ、近くでずーっと寛人の努力を見てきたから言うけど、そんな寛人をフル方が見る目ないと思う」

寛人「……雅ちゃんの悪口は言うなよ」

円「はははは。フラれた相手を庇うって、相当だね」

寛人「うるせー」

円「……ねえ、寛人」

寛人「なんだ?」

円「……私が、付き合ってあげようか?」

寛人「いや、いい」

円「なんでよ!?」

寛人「円はそういうんじゃないから」

円「そういうんじゃないって、どういうことよ」

寛人「なんていうか妹って感じ?」

円「なら、ちゃんと女として見てよ」

寛人「そう言われてもなぁ」

円「もう。それじゃ、私はどうすればいいのよ」

寛人「はあ……。とにかく、今日はふて寝するよ。じゃあな」

寛人が道を曲がって歩き出す。

場面転換。

道を歩く寛人。

すると、道の端に占い師が座っている。

占い師「随分と浮かない顔ですね。どうですか? 占っていきません?」

寛人「……こんなところで占いですか?」

占い師「なにか悩み事ですか?」

寛人「ええ、まあ」

占い師「お話だけでもしていきませんか?」

寛人「……はあ、話すだけなら」

場面転換。

占い師「なるほど。それで、フラれてしまったわけですね」

寛人「こんなこと、相談しても意味ないですよね。それじゃ、失礼します」

占い師「待ってください」

寛人「なんです?」

占い師「あなたの親が金持ちであればいいんですよね?」

寛人「そうですけど、親は普通の会社勤めですから」

占い師「この水晶に手を当てて、強く念じてみてください。大金持ちの家に生まれて育ったのだとリアルに想像するのです」

寛人「……想像」

寛人(N)「俺は強く念じた。もし、親が金持ちだったら、雅ちゃんにオッケー貰えたはずなんだ、と……」

するとギューンという音が鳴り響く。

寛人「あれ? なんだか、頭が真っ白に……」

場面転換。

寛人の家の前。

執事「坊ちゃま、どうされました?」

寛人「へ?」

執事「さあ、車にお乗りください。遅刻されますよ」

寛人「え? え? え? あなたは?」

執事「何をおっしゃいますか。私は坊ちゃまの執事ですよ」

寛人「……執事?」

執事「お早く、リムジンにお乗りください」

寛人「あ、ああ……」

寛人(N)「どうやら、あの占い師のおかげで俺の親は金持ちという世界線に来たということだろうか。……夢かと思ったが、違うようだ。だが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。これで雅ちゃんにオッケーしてもらえるはずだ」

場面転換。

学校の裏。

寛人「雅ちゃんのことが好きなんだ」

雅「んー。ごめんね」

寛人「ええ! な、なんで……?」

雅「寛人くんってー、お金持ちだし~、いいなって思うんだけど~」

寛人「けど……?」

雅「顔が好きくないんだよね~」

寛人「えええ!? でも、俺の顔、結構好きって……」

雅「雅ね、イケメンのお嫁さんになるのが夢なの」

寛人「そ、そんなー!」

寛人(N)「くそ。なんなんだよ。一体、俺はどうすりゃいいんだよ!」

場面転換。

夕方の通学路。

寛人と円が歩いている。

寛人「……なにが、どうなってるんだ」

円「まさか、寛人をフルなんてね。雅さんは見る目ないと思う」

寛人「……雅ちゃんの悪口は言うな」

円「……ねえ、寛人。私が付き合ってあげようか?」

寛人「いや、いい」

円「なんでよ!?」

寛人「円はそういうんじゃないから」

円「そういうんじゃないって、どういうことよ」

寛人「なんていうか妹って感じ?」

円「なら、ちゃんと女として見てよ」

寛人「そう言われてもなぁ」

円「もう。それじゃ、私はどうすればいいのよ」

寛人「はあ……。とにかく、今日はふて寝するよ。じゃあな」

寛人が道を曲がって歩き出す。

その後ろ姿を見ている円。

円「はあ……」

円が歩いていると、道にいる占い師に声を掛けられる。

占い師「いかがでしたか?」

円「あ、占い師さん。……それが、せっかく寛人がフラれる世界線にしてもらったんですけど……。ダメでした」

占い師「そうでしたか……」

円「あー、もう! どうすればいいのよー!」

終わり。

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