【声劇台本】オカマさん天使を拾う

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
寛人
天使
警察

■台本

寛人「あらあら、それは大変だったわね。でも、平気よ。その経験は絶対、あなたにとってプラスになるわ。いつか、きっとわかるときがくる。……そうね。その日が来るまでは一旦、忘れておこっか。……はい。これは私からの、お、ご、り。ぱぱーっと飲んじゃって」

カランカランとドアのベルが鳴り、お客が入ってくる。

寛人「あらん、きょーちゃん、いらっしゃい。今日も来てくれたのね、うれしいわ」

寛人(N)「しがないバーのママ。おかげさまで、食べていくのに困らないくらいのお客さんが来てくれる。色々なお客さんから、色々なお話を聞ける、この仕事はとっても楽しいけど……人間の汚い部分も見えちゃうのよね。あーあ、なんだかこっちの心も荒んじゃいそうで怖いわ。たまには純粋無垢な子供と接して、心を浄化したいわね」

道を歩く寛人。

ゴキゴキと肩を鳴らす。

寛人「あー、肩凝ったわね。マッサージにでも行こうかしら。……ん?」

寛人が立ち止まる。

寛人「……金色の卵? 随分と大きいけど、なんの卵かしら? ……どうみても、捨ててあるわよね? 拾ってしまっても大丈夫かしら」

寛人が卵を持ち上げる。

寛人「よっと! あら、随分と軽いわね。さ、卵ちゃん。一緒に帰りましょうねー」

寛人が再び歩き始める。

場面転換。

寛人「うーん。調べてみたけど、なんの卵かわからないわね……。作り物かしら?」

そのとき、卵にピシピシとヒビが入る。

寛人「あら? あららら?」

卵が割れて、ピカーと光る。

寛人「きゃああ!」

パタパタと天使が飛んでいる。

天使「あー」

寛人「……あら? 天使? んまー、可愛いわー!」

場面転換。

天使「ママ―!」

寛人「あら、どうしたの?」

天使「お腹減ったー」

寛人「それじゃ、ご飯にしよっか」

冷蔵庫を開ける寛人。

寛人「あらん? 何もないわね……。よし、じゃあ、お買い物、行きましょうか」

天使「お買い物―!」

寛人「うふふ。可愛いわー」

場面転換。

スーパー内。

二人で並んで歩く。

天使「食べ物いっぱーい!」

寛人「そうね。なに食べたい……」

天使「もぐもぐ。おいしーね」

寛人「ああ! ダメよ! まだ、食べちゃダメ!」

寛人が天使から食べ物を取る。

天使「どうして?」

寛人「あのね。ここにある物は、お金を払ってからじゃないと食べちゃダメなのよ。お金を払う前に食べたら、捕まっちゃうの」

天使「ふーん。でも、なんでそんなことするの? 食べ物、いっぱいあるんだから、みんなですぐに食べればいいのに」

寛人「うーん。どうしてって言われてもねぇ。これはルールだから、仕方ないのよ」

天使「ルール?」

寛人「そうよ。ルールは守らないといけないの。ルール、守れる?」

天使「うん! わかった!」

寛人「うふふ。いい子ね」

場面転換。

道を歩く二人。

天使「スッパゲッティ! スッパゲッティ!」

寛人「うふふ! 帰ったらすぐに作るからねー」

後ろから自転車が凄い勢いで迫り、寛人に当たる。

寛人「きゃあっ!」

そのまま走り去る自転車。

寛人「痛いわね! ちょっと! ごめんなさいも言えないの! ……んもう! あんな大人になっちゃダメよ!」

天使「あの人間、悪い人?」

寛人「そ、悪い人よ!」

天使「ばん!」

ガシャンと自転車が吹き飛ぶ。

寛人「ええええ!」

天使「悪い人はやっつける!」

寛人が走り寄る。

寛人「……よかった。気絶してるだけね。ダメよ、乱暴なことしちゃ」

天使「ええ? 悪い人はやっつけるんじゃないの?」

寛人「……えっと、悪いことしてても、人を傷つけちゃダメなのよ」

天使「そういうルール?」

寛人「そうよ。そういうルールなの」

天使「うん、わかった。人は傷つけない!」

寛人「いい子ね」

場面転換。

天使「……ママ」

寛人「あら、どうしたの? 悲しい顔して」

天使「大好きなプリチアがルール破ってる」

寛人「え? ……ああ、アニメの話ね。……どれどれ。あー、今回は怪人じゃなくて、悪い人間を懲らしめる話なのね」

天使「悪い人でも、人間は傷つけちゃダメなんだよね?」

寛人「えーっと……。これはテレビだからいいのよ」

天使「ん?」

寛人「あー、えっと、テレビの中は嘘の話だから平気なのよ」

天使「プリチア嘘なの? いないの?」

寛人「あー、えと、いるわよ。いるいる。えっとね、テレビの中の話は、ルールは関係ないの。だから、テレビの中のことはルールは考えなくていいからね」

天使「……よくわかんないけど、わかった」

寛人「……子育てって大変ね」

場面転換。

バタバタと走る二人。

寛人「いけない。ゆっくりし過ぎたわ。お店の時間、過ぎちゃう……」

天使「あ、ママ! 止まって!」

寛人「え? どうしたの? ママ、急いでるんだけど……」

天使「信号、赤! 赤は止まるルール」

寛人「あー、えっとね。急いでるとき、車が来てなかったら、渡っていいルールなの」

天使「え? そうなの?」

寛人「え、えっと……。その……。これは私だけのルールなの。あなたが一人の時はちゃんと止まるのよ」

天使「……よくわからないけど、わかった」

寛人「うう……罪悪感」

場面転換。

カランカランとドアが開く。

寛人「あら、いらっしゃ……げっ!」

警察「警察だ。この店、深夜酒類提供飲食店営業届、出してないよな?」

寛人「あー、えっと……」

警察「……まあ、この店内なら許可は下りないだろうがな」

寛人「……これ、ほんの気持ちです」

警察「……ん。まあ、今回は見なかったことにしてやる」

警察が出ていく。

寛人「ふー。危なかった。何か対策を立てないとねー」

天使「ねー、ママ。警察の人が来たってことは、ママ、悪いことしたの?」

寛人「え? そ、そんなことないわよ。大丈夫よ。ママ、連れていかれなかったでしょ?」

天使「どうして、警察の人にお金渡してたの? 警察の人は、人からお金貰っちゃダメってルールじゃないの?」

寛人「あー、えっとね。こういうときはいいのよ。警察と仲良くするために払うのは、私だけのルールでオッケーなの」

天使「うん、わかった! ママだけのルールたくさんあるんだね!」

寛人「う、うう……」

寛人(N)「純粋無垢な、私の天使ちゃんが……。人って、こうして汚い大人になっていくのね……。人間って怖いわ」

終わり。

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