アメとムチ
- 2023.04.09
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
ロイ 17歳
ルーカス 17歳
イザベラ 28歳
アラン 17歳
スティーブ 17歳
オズワルド 57歳
■台本
ロイ(N)「ヴィラン。それは人間の脅威となる生物全般を指す言葉だ。近年、ヴィランによる被害の増大により、国は専門の協会を設立した。ハンター協会。国に選ばれた者のみがハンターとなれる。今、俺はそのハンターになるための試験に挑むのだ」
オズワルド「いいか、お前ら。アカデミーの卒業はあくまで、基礎的な能力が身に着いた証明するものでしかない。ここから、特別教官による訓練を受けた後の、卒業試験を潜り抜けてこそ、ハンターになれるんだからな」
場面転換。
アラン「はあ……。アカデミーの授業だけでもしんどかったのになあ」
ロイ「問題はどの教官に当たるかだよな」
アラン「どうか緩い教官に当たってくれ」
スティーブ「そもそも、卒業試験に辿り着けるかだよな」
アラン「え? どういうことだ?」
ロイ「訓練で脱落者が出る可能性があるんだよ」
アラン「嘘だろ……」
スティーブ「お願いします、神様! いい教官に当たりますように!」
アラン「うう。ここで10年分くらいの運を使ってもいいので、お願いします!」
ロイ「はあ……。神頼みって、情けないぞ、お前」
アラン「うるさいな。結局、こういうのは運なんだよ、運」
ロイ「あっそ……。じゃあ、俺は明日に備えて寝るわ」
スティーブ「組の発表は明日か。ドキドキして寝れそーにねーな」
アラン「俺も」
ロイ「くだらん」
場面転換。
オズワルド「……以上だ。では、割り当てられた担当の教官のところへ、各自移動しろ」
ゾロゾロと生徒たちが歩き出す。
アラン「……スペンサー教官か。どんな人なんだろうな」
スティーブ「名前からして、厳しそうだよな」
ロイ「なんだよ、名前からしてって。名前は関係ねーだろ」
アラン「うるせー。お前は女性の教官だからって調子に乗るなよ!」
ロイ「ははは。別に女性の教官だからって優しいとは限らないだろ」
スティーブ「とか言って、顔がにやけてるじゃねーか」
ロイ「そりゃ、暑苦しい男の教官より、女の教官の方がやる気は出るだろ」
アラン「くそー」
ロイ「じゃあ、俺、こっちだから。頑張れよー」
場面転換。
イザベラ「特別教官のイザベラだ。カスども、私が女だからといって、舐めてると痛い目を見ることになる。精々、気合を入れるんだな」
ロイ「……おっと。そういう感じの教官か」
イザベラ「よし、とりあえず、まずはその場でスクワット1000回だ」
ルーカス「ええ! とりあえずの回数じゃないですよ」
イザベラ「黙れ!」
バシっとムチで叩くイザベラ。
ルーカス「ぎゃあ!」
イザベラ「他に私のムチが欲しい奴はいるか? 背中の皮が剝がれるまでやってやるぞ」
ロイ「……くっ」
場面転換。
宿舎内。
ルーカス「くぅ……。今日もしんどかった」
ロイ「……まさに地獄だな」
ルーカス「こんなんじゃ、身がもたないぜ」
ロイ「そうは言っても、どうにもならんだろ」
ルーカス「いや、俺は明日、教官にある提案をしてみるつもりだ」
ロイ「提案?」
ルーカス「まあ、みとけって」
場面転換。
イザベラ「よーし、今日も、ビシビシしごいていくからな。覚悟しろよ」
ルーカス「教官! よろしいでしょうか!?」
イザベラ「なんだ?」
ルーカス「このままだと、全員、卒業試験に辿り着く前に、潰れてしまいます」
イザベラ「……それがどうした?」
ルーカス「それだと、教官の評価が下がるのではないでしょうか?」
イザベラ「……」
ルーカス「卒業試験クリア者が0となると、教官の教え方が悪いと思われてしまいます」
イザベラ「だから、手を抜けと?」
ルーカス「違います!」
イザベラ「……」
ルーカス「アメとムチです」
イザベラ「アメとムチだと?」
ルーカス「課題をクリアしたら、なにかアメが欲しいんです」
イザベラ「……アメか」
ルーカス「そうです! お願いします!」
イザベラ「わ、わかった……。では、これからいうメニューを無事に潜り抜けた奴らには、私が膝枕をしてやろう。どうだ?」
ルーカス「うおおおおおお!」
生徒たちが盛り上がる。
イザベラ「……ったく。どうしようもないやつらだな」
場面転換。
訓練に励む生徒たち。
ロイ「はあ、はあ、はあ……」
ルーカス「おい、そろそろ限界じゃないのか? 棄権したらどうだ?」
ロイ「冗談じゃない! お前こそ、青い顔をしているぞ」
ルーカス「へっ! こんなのたいしたことねーんだよ!」
場面転換。
訓練に励む生徒たち。
ロイ「うおおおおおお!」
ルーカス「うおおおおおおおお!」
イザベラ「よし、お前ら、その調子だ!」
場面転換。
ロイ「はあ、はあ、はあ……」
ルーカス「はあ、はあ、はあ、ギリギリだった」
イザベラ「よし! よくやった! まさか、全員がクリアするとはな」
生徒たちの歓声があがる。
イザベラ「よし……。じゃ、じゃあ、みんな並べ。私が膝枕してやる……」
生徒たちが歓声を上げる。
生徒「……」
イザベラ「次!」
ロイが歩いてくる。
ロイ「……お願いします」
イザベラ「ほら、寝転がれ」
ロイ「……」
膝枕をしてもらうロイ。
ロイ(N)「固い……」
イザベラ「次!」
ルーカス「お願いします!」
ルーカスがやってくる。
イザベラ「寝転がれ」
ルーカス「……」
場面転換。
宿舎内。
ルーカス「なあ」
ロイ「なんだ?」
ルーカス「固かったな。教官の太もも」
ロイ「……さすが、歴戦のハンターだな」
ルーカス「そうだな」
しばらく沈黙。
ルーカス「……なんか、思ったのと違うな」
ロイ「……そうだな」
場面転換。
イザベラ「どうした、お前ら! なんで全員がリタイアなんだ!? また、私の膝枕をしてほしくないのかっ!?」
ロイ(N)「この後、イザベラ教官の生徒たちは全員、卒業試験に失敗した。どうやら、神様に祈らなかったのは間違いだったようだ」
終わり。
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