アメとムチ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
ロイ 17歳
ルーカス 17歳
イザベラ 28歳
アラン 17歳
スティーブ 17歳
オズワルド 57歳

■台本

ロイ(N)「ヴィラン。それは人間の脅威となる生物全般を指す言葉だ。近年、ヴィランによる被害の増大により、国は専門の協会を設立した。ハンター協会。国に選ばれた者のみがハンターとなれる。今、俺はそのハンターになるための試験に挑むのだ」

オズワルド「いいか、お前ら。アカデミーの卒業はあくまで、基礎的な能力が身に着いた証明するものでしかない。ここから、特別教官による訓練を受けた後の、卒業試験を潜り抜けてこそ、ハンターになれるんだからな」

場面転換。

アラン「はあ……。アカデミーの授業だけでもしんどかったのになあ」

ロイ「問題はどの教官に当たるかだよな」

アラン「どうか緩い教官に当たってくれ」

スティーブ「そもそも、卒業試験に辿り着けるかだよな」

アラン「え? どういうことだ?」

ロイ「訓練で脱落者が出る可能性があるんだよ」

アラン「嘘だろ……」

スティーブ「お願いします、神様! いい教官に当たりますように!」

アラン「うう。ここで10年分くらいの運を使ってもいいので、お願いします!」

ロイ「はあ……。神頼みって、情けないぞ、お前」

アラン「うるさいな。結局、こういうのは運なんだよ、運」

ロイ「あっそ……。じゃあ、俺は明日に備えて寝るわ」

スティーブ「組の発表は明日か。ドキドキして寝れそーにねーな」

アラン「俺も」

ロイ「くだらん」

場面転換。

オズワルド「……以上だ。では、割り当てられた担当の教官のところへ、各自移動しろ」

ゾロゾロと生徒たちが歩き出す。

アラン「……スペンサー教官か。どんな人なんだろうな」

スティーブ「名前からして、厳しそうだよな」

ロイ「なんだよ、名前からしてって。名前は関係ねーだろ」

アラン「うるせー。お前は女性の教官だからって調子に乗るなよ!」

ロイ「ははは。別に女性の教官だからって優しいとは限らないだろ」

スティーブ「とか言って、顔がにやけてるじゃねーか」

ロイ「そりゃ、暑苦しい男の教官より、女の教官の方がやる気は出るだろ」

アラン「くそー」

ロイ「じゃあ、俺、こっちだから。頑張れよー」

場面転換。

イザベラ「特別教官のイザベラだ。カスども、私が女だからといって、舐めてると痛い目を見ることになる。精々、気合を入れるんだな」

ロイ「……おっと。そういう感じの教官か」

イザベラ「よし、とりあえず、まずはその場でスクワット1000回だ」

ルーカス「ええ! とりあえずの回数じゃないですよ」

イザベラ「黙れ!」

バシっとムチで叩くイザベラ。

ルーカス「ぎゃあ!」

イザベラ「他に私のムチが欲しい奴はいるか? 背中の皮が剝がれるまでやってやるぞ」

ロイ「……くっ」

場面転換。

宿舎内。

ルーカス「くぅ……。今日もしんどかった」

ロイ「……まさに地獄だな」

ルーカス「こんなんじゃ、身がもたないぜ」

ロイ「そうは言っても、どうにもならんだろ」

ルーカス「いや、俺は明日、教官にある提案をしてみるつもりだ」

ロイ「提案?」

ルーカス「まあ、みとけって」

場面転換。

イザベラ「よーし、今日も、ビシビシしごいていくからな。覚悟しろよ」

ルーカス「教官! よろしいでしょうか!?」

イザベラ「なんだ?」

ルーカス「このままだと、全員、卒業試験に辿り着く前に、潰れてしまいます」

イザベラ「……それがどうした?」

ルーカス「それだと、教官の評価が下がるのではないでしょうか?」

イザベラ「……」

ルーカス「卒業試験クリア者が0となると、教官の教え方が悪いと思われてしまいます」

イザベラ「だから、手を抜けと?」

ルーカス「違います!」

イザベラ「……」

ルーカス「アメとムチです」

イザベラ「アメとムチだと?」

ルーカス「課題をクリアしたら、なにかアメが欲しいんです」

イザベラ「……アメか」

ルーカス「そうです! お願いします!」

イザベラ「わ、わかった……。では、これからいうメニューを無事に潜り抜けた奴らには、私が膝枕をしてやろう。どうだ?」

ルーカス「うおおおおおお!」

生徒たちが盛り上がる。

イザベラ「……ったく。どうしようもないやつらだな」

場面転換。

訓練に励む生徒たち。

ロイ「はあ、はあ、はあ……」

ルーカス「おい、そろそろ限界じゃないのか? 棄権したらどうだ?」

ロイ「冗談じゃない! お前こそ、青い顔をしているぞ」

ルーカス「へっ! こんなのたいしたことねーんだよ!」

場面転換。

訓練に励む生徒たち。

ロイ「うおおおおおお!」

ルーカス「うおおおおおおおお!」

イザベラ「よし、お前ら、その調子だ!」

場面転換。

ロイ「はあ、はあ、はあ……」

ルーカス「はあ、はあ、はあ、ギリギリだった」

イザベラ「よし! よくやった! まさか、全員がクリアするとはな」

生徒たちの歓声があがる。

イザベラ「よし……。じゃ、じゃあ、みんな並べ。私が膝枕してやる……」

生徒たちが歓声を上げる。

生徒「……」

イザベラ「次!」

ロイが歩いてくる。

ロイ「……お願いします」

イザベラ「ほら、寝転がれ」

ロイ「……」

膝枕をしてもらうロイ。

ロイ(N)「固い……」

イザベラ「次!」

ルーカス「お願いします!」

ルーカスがやってくる。

イザベラ「寝転がれ」

ルーカス「……」

場面転換。

宿舎内。

ルーカス「なあ」

ロイ「なんだ?」

ルーカス「固かったな。教官の太もも」

ロイ「……さすが、歴戦のハンターだな」

ルーカス「そうだな」

しばらく沈黙。

ルーカス「……なんか、思ったのと違うな」

ロイ「……そうだな」

場面転換。

イザベラ「どうした、お前ら! なんで全員がリタイアなんだ!? また、私の膝枕をしてほしくないのかっ!?」

ロイ(N)「この後、イザベラ教官の生徒たちは全員、卒業試験に失敗した。どうやら、神様に祈らなかったのは間違いだったようだ」

終わり。

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