【声劇台本】謀略の教室

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■概要
主要人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代

■キャスト
公平
美奈子
田中
仙田
その他

■台本

公平(N)「正直言って、僕は頭が悪い。そんな僕が人生最大の知略戦を展開させる。この物語はそんな内容だ」

チャイムの音。

  ガラガラとドアが開き、美奈子が教壇の上に立つ。

生徒1「起立」

   生徒たちが立ち上がる。

生徒1「礼、着席」

   生徒たちが座る。

美奈子「さあ、みんな。あと少しで夏休みね」

  生徒たちがワッと盛り上がる。

美奈子「でも、その前にあるのが期末テスト」

  シーンと教室が静まり返る。

美奈子「しかも、今回の期末テストは赤点を取ると、その生徒は林間学校に参加できずに、ずっと学校で補習を受けることになるわ」

田中「補習とかダルー!」

仙田「無理無理。エアコンのない教室で勉強とか、マジ死ぬから」

美奈子「ホント、みんな、今回は頑張ってよ! なんてったって、林間学校は海なんだから!」

  教室が静まり返り、ゴクリと生唾を飲む音が響く。

田中「……海。ということは」

仙田「先生、まさか……水着を?」

美奈子「うん、すっごいの買っちゃった!」

  教室が爆発したかのように盛り上がる。

生徒2「すげー! 美奈子先生の水着とか!」

仙田「ヤバいヤバい! 考えただけで……」

田中「ばーか! 俺なんか結構、毎日、妄想してるっての!」

公平(N)「橘美奈子先生。25歳。身長171センチ。51キロ。スリーサイズは上から82、60、82。むさくるしい男子校である、この高校の唯一の清涼剤だ。このクラス全員の憧れであり、癒しであり、天使という存在。まさに僕たちは美奈子先生に会うために毎日学校に来ていると言っても過言ではない」

美奈子「そ、れ、に! もし、全員、赤点を免れたら、先生、みんなにすっごいサービスしちゃおうかな」

  盛大に盛り上がる教室内。

仙田「え? え? え? 先生、サービスってなに?」

美奈子「それはまだ秘密」

仙田「ちょっとだけ、ヒントだけでも」

美奈子「んー。そうだなぁ。絶対、みんなが喜ぶこと……かな?」

生徒2「うわー! なんだろ?」

田中「ヤバいヤバい。もう想像しただけで死ぬ!」

美奈子「ってわけだから、みんな、頑張ってね!」

公平(N)「こうして僕たちの戦いの火ぶたは切って落とされたのだった」

  学校のチャイムの音。

公平「では、第一回、期末テスト対策の学級会議を始めます」

田中「おい、公平。なんでお前が仕切ってるんだよ」

仙田「そうだ。お前が一番ヤバいんじゃねーのか?」

公平「みんな。わかってないなぁ。だからだよ」

田中「どういうことだ?」

公平「今回のミッションは全員が赤点を免れること。つまり、このミッションが成功するかは僕の手に掛かってると言っても過言じゃない」

  教室の中が一気にブーイングの嵐に包まれる。

田中「ふざけんな! なに威張ってんだよ!」

仙田「そうだ! そうだ!」

生徒2「てめえ、赤点取ったら、ぶっ殺すぞ!」

公平「まあまあ、みんな落ち着いてよ」

仙田「なんか上から目線なのがムカつくな」

公平「もちろん、僕はこれから死ぬ気で勉強するつもりだよ」

仙田「当たり前だ!」

公平「でもさあ、言うほどみんなも余裕なの?」

  教室がシーンと静まり返る。

公平「確かに、僕はこのクラスで最下位だ。でもさ、三井や香田はもちろん、このクラスの半数は大体、赤点取ってるんじゃない?」

  さらに静まり返る教室内。

公平「今回はクラス一丸になって、このミッションを成功に導こう」

クラス全員「おー!」

公平(N)「僕の一言で、クラス全員が一つにまとまった。今回、大事なのは結束力だ。なにしろ、個人に任せていたら、絶対にダラける。僕だって同じだ。そうでなければ、こんな成績になっていない。お互いがお互いを監視する。これくらいしないと、全員が赤点を取らないなんて無理な話だ」

  学校のチャイムの音。

  カリカリカリと教室中から、勉強している音が響いている。

  そして、ガラガラとドアが開き、美奈子が入ってくる。

美奈子「うわー。みんな頑張ってるね」

仙田「もちろんだよ!」

生徒2「先生の為なら、俺たち、頑張れるよ!」

美奈子「ありがとう、みんな。ふふふ。みんなへのサービス、期待しててね」

クラス全員「うおーーー!」

  ペンを動かす速度が倍速になる。

美奈子「じゃあ、みんな、頑張ってね!」

  美奈子が教室から出て行く。

田中「……サービスって何かな」

  ピタリと教室が静寂に包まれる。

仙田「まさか、やらしてくれる……とか?」

生徒3「いやいや、ないだろ」

生徒4「だよなぁ」

生徒3「30人だからな。それだけで一日終わるだろ」

田中「ふん。童貞のお前らなんか、秒で終わるだろ。全員でも10分もかからないんじゃないか?」

仙田「そういう田中だって、童貞じゃん」

田中「うっせーな。大体、この学校に童貞じゃない奴なんているのかよ」

仙田「……二組の堂本とか怪しくね?」

生徒4「あー、それは俺も思った」

公平「……待って、みんな。話が逸れてる」

田中「そうだぞ! 今は、美奈子先生のサービスが何かって話だぞ!」

公平「違う……。今は勉強の時間だ! わかってるのか! 誰か一人でも赤点取ったら、終わりなんだぞ!」

  またクラス全員が勉強に集中する。

公平(N)「こうして俺たちは二週間後の期末テストまで猛勉強に明け暮れた。その成果のためか、クラスの学力はメキメキと上がっていく。そして、決戦の日がやってきた」

美奈子「それじゃ、みんないくよ。……始め!」

  カリカリとペンを動かす音が鳴り響く。

公平(N)「あっと言う間に試験が終わり、後は答案が返ってくるのみとなった。……正直に言おう。俺は完璧だったと思う。だけど、返ってくるまではわからない。そわそわとした日を何日か過ごし、そして、ついに答案用紙が返されていく」

美奈子「今回は本当にみんな頑張ったね。じゃあ、テスト返していくね。仙田くん、62点」

仙田「よっしゃー!」

美奈子「六道くん、52点」

六道「っしゃー!」

美奈子「沼田くん、頑張ったね。72点」

沼田「うおーーー!」

美奈子「そして、最後、八木田くん」

公平「……はい」

美奈子「八木田くんが30点以上なら、全員クリアだからね」

公平「……はい」

美奈子「それじゃ、発表するよ。八木田くん」

公平「(ごくり)」

美奈子「……28点」

公平「ぎゃああああああああ!」

  クラス中から罵倒が飛び交う。

田中「死ね! 死んでしまえ!」

仙田「処刑だ! 公開処刑に処す」

香田「いや、切腹だ! 自害しろ!」

公平「ぬおおおおお! みんな、ごめん!」

美奈子「はいはい! みんな、静かにして」

  教室が静まり返る。

美奈子「確かに今回は残念だったけど、八木田くんだって頑張ったんだから。先生、嬉しいよ。みんなありがとう」

公平「……先生」

公平(N)「こうして俺は、クラスで一人、補習を受けることとなった」

  学校のチャイム。

  そして、ガラガラとドアが開き、美奈子が入ってくる。

美奈子「さ、八木田くん。残念だけど、決まりは決まり。ちゃんと補習を受けるのよ」

公平「はい!」

美奈子「あら、随分と元気ね。それじゃ、数学から……」

公平「ふっふっふっふ。作戦通り」

美奈子「え?」

公平「いえいえ、なんでもありません」

公平(N)「よっしゃー! これで、補習の間は美奈子先生と二人きりだ。これこそが僕の信の目的。この状況を作り出すために、他の皆に勉強を促したのだ。こうして僕は至福の時間を味わうことができたのだった」

終わり

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