山にいる恋の神様
- 2023.06.20
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
渉(わたる) 20歳
崇(たかし) 20歳
真奈美(まなみ) 21歳
■台本
渉(N)「僕には好きな人がいる。登山が好きな、今風に言うと山ガールだ。その人が登山サークルにいるから、僕もサークルに入った。登山は本当にキツイ。何度も心が折れて、辞めようかと悩んだ。でも、僕は続けた。真奈美さんという山の頂上を目指すために」
場面転換。
真奈美「ごほっ、ごほっ、ごほっ……。うう、渉……」
渉「あ、真奈美さん……風邪ですか?」
真奈美「うう。そうみたい。2日前くらいから体調が悪かったから嫌な予感はしてたんだよ」
渉「……じゃあ、明日の龍欲山は?」
真奈美「残念だけど、断念する……」
渉「そう……ですか」
真奈美「で、渉に頼みがある!」
渉「な、なんでしょう?」
真奈美「山の頂上にな。こういう青い花が咲いてるらしいんだよ。もし、見つけたら採ってきてきてもらえないかな?」
渉「わかりました! 任せてください!」
真奈美「ありがとう、渉。お礼は必ずするから」
渉「いや、いいんですよ。お礼なんて。真奈美さんは体調を治すことだけ考えててください」
場面転換。
廊下を歩く渉。
渉「ふんふんふふーん♪」
崇「よお、渉。随分、上機嫌だな」
渉「あ、崇」
崇「てっきり、真奈美さんが明日休みだから、凹んでるのかと思ったのに」
渉「いやあ、ちょっとね」
崇「それはそうと、渉。明日登る予定の、龍欲山なんだけどさ。ある噂があるのを知ってるか?」
渉「噂?」
崇「そう。龍欲山には滝があるのは知ってるだろ?」
渉「うん、聞いたことある」
崇「その滝の横に、小さな祠があって、そこに龍神様が祀られてるんだってよ」
渉「へー……」
崇「興味なさそうだな」
渉「厨二病じゃないしね」
崇「まあ、最後まで話を聞けよ。その祀られている龍神っていうのが、どうやら、恋の神様らしんだよ」
渉「龍なのに?」
崇「まあ、その辺の由来はよくわかんないけどよぉ。とにかく、そこでお参りすると恋が叶うって話だ」
渉「えー。嘘くさい」
崇「俺だってそう思った差。けどな。直弘(なおひろ)先輩があそこでお参りしたらしい」
渉「……え? 嘘? じゃあ?」
崇「ああ。その通りだ。直弘先輩と真白先輩の、美女と野獣カップル。この学校の七不思議の一つとされてるからな。……これ、龍神様のおかげだって聞いたら、納得できないか?」
渉「めっちゃできる」
崇「だろ? でさ、明日、そこに行ってみないか?」
渉「でも、滝って、明日の登山ルートから外れてるよね?」
崇「だからさ、直前で具合が悪くなったって言って、休むって言い訳して、滝の方に行くんだよ」
渉「あー、いいね。そうしよう」
場面転換。
山道を登山サークルのメンバーが登っている。
崇「すみません。後で追いつくんで」
渉「俺、崇の方についてるんで、先輩たちは先に行っててください」
山岳サークルのメンバーが行ってしまう。
崇「……よし、みんな。行ったな」
渉「僕たちも行こう」
崇「そうだな」
二人が立ち上がり、歩いていく。
場面転換。
険しい道を進んでいく二人。
崇「はあ、はあ、はあ……」
渉「これ、頂上のルートより、かなりヤバいね」
崇「これくらい苦労しないと、恋は成就しないってことさ」
渉「そ、そうだね」
二人が歩いていく。
場面転換。
険しい道を歩く二人。
蛇のシャーという鳴き声。
渉「ぎゃーーー! 蛇だ!」
崇「逃げるぞ!」
場面転換。
険しい道を歩く二人。
そのとき、足場がザザーと崩れる。
崇「うわあああああ!」
渉「崇!」
ガッと手を掴む渉。
崇「……すまん。助かった」
渉「ふう。危なかったね」
崇「ここからはさらに注意して進むぞ」
場面転換。
険しい道を歩く二人。
渉「はあ、はあ、はあ……。も、もう限界」
崇「頑張れ。もう少しだって」
渉「いや、結構前にもそう言ったでしょ」
崇「……今回はホントだ」
渉「え?」
崇「耳を澄ませてみろ」
渉「……」
かすかに滝の音が聞こえる。
渉「滝の音だ」
崇「な? よし、行くぞ」
さらに先に進む二人。
場面転換。
ドドドドという滝の音。
渉「やったー! 着いたー!」
崇「ふいー! きつかったな。けど、こっからが本番だぞ」
渉「うん。わかってる」
崇「えーと……。あ、あったぞ! 見ろ、祠だ」
渉「……ホントだ」
場面転換。
祠の中を歩く音。
渉「思ったよりも大きいんだね」
崇「だな……」
歩き続ける二人。
崇「お! あったぞ、見ろ!」
二人が駆け寄る。
渉「凄いリアルな像だね」
崇「これは絶対に力があるな」
渉「だね。僕も力をビンビン感じるもん」
崇「あの直弘先輩が、美人の彼女をゲットできたんだ。俺だって……」
渉「僕も真奈美さんと……」
崇「よし、じゃあ、祈るぞ!」
渉「そうだね!」
パンパンと手を叩いて、祈り始める二人。
場面転換。
廊下を歩く渉。
渉「ふんふんふふーん♪」
そこに真奈美がやってくる。
真奈美「よお、渉、ご機嫌だな」
渉「あ、真奈美さん。はい、ちょっと良いことがあって」
真奈美「へー。そうなんだ? でさ、登山の方、どうだった?」
渉「すごい大変でしたけど、ばっちりです!」
真奈美「そうか! じゃあ、渡してくれ」
渉「……え?」
真奈美「え?」
渉「……」
真奈美「いや、花を採ってきてくれたんじゃなかったのか?」
渉「……あ! あああああああああああああ!」
渉(N)「恋のお願いをするのに必死で、真奈美さんから頼まれていたことをすっかり忘れていた……。このあと僕と真奈美さんは少しギクシャクしてしまった。……せっかく、真奈美さんのお願いを聞いて、ポイントを上げるはずだったのに……。恋の山は神頼みじゃなくて、ちゃんと自分の足で登らないとダメみたいだ」
終わり。
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