働く素晴らしさ
- 2023.06.19
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
玲央(れお) 17歳
母親 42歳
■台本
キッチン。
母親が料理をしている。
そこに玲央がやってくる。
玲央「ねえ、お母さん」
母親「んー? ご飯はもう少しで出来るから待ってなさい。
玲央「いや、そうじゃなくて……」
母親が手を止める。
母親「なに? まさか、また小遣いほしいとか言うんじゃないでしょうね?」
玲央「ピンポン。正解!」
母親「正解! じゃないわよ! また?」
玲央「仕方ないじゃん。小遣い少ないんだからさ」
母親「……」
母親が怜央の頬を引っ張る。
玲央「痛い痛い痛い!」
母親「あんたねえ。そういうのは一人前に自分で稼げるようになってから言いなさい!」
玲央「ええー。だって……」
母親「だってじゃない! バイトもしたことないくせに。お金を稼ぐことがどれだけ大変か知らないでしょ」
玲央「……うちの学校、バイト禁止だし」
母親「申請すれば出来るはずよ。申請書書いてあげようか?」
玲央「い、いや、いい……」
母親「なら、小遣いが少ないなんて言うんじゃないの!」
玲央「わかった。もう言わないから、お小遣い頂戴!」
母親「……」
母親が玲央の頬を引っ張る。
玲央「いてててて!」
母親「全然、わかってないじゃない!」
玲央「うう……。どうしても欲しいものがあるんだよ」
母親「なによ? どうせ、くだらないものでしょ?」
玲央「何言ってるんだよ! イチハチのモナ子のフィギュアだよ、限定品の!」
母親「またフィギュア? あんた、たくさん持ってるでしょ!」
玲央「だから、持ってるのとは違うんだって!」
母親「お母さんには同じにしか見えないんだけど」
玲央「母さんだって、昔はアイドルのおっかけしてたんでしょ?」
母親「それがなによ?」
玲央「俺にはアイドルなんて全部同じに見えるんだけど」
母親「……妙に説得力があるわね」
玲央「ってことで、小遣い頂戴」
母親「それとこれとは別よ」
玲央「じゃあさ、貸してよ。すぐ返すから」
母親「そういうセリフは返してから言いなさい。あんたの借金、もう1万越えてるんだけど」
玲央「うっ……。今度は返すよ。お金が出来次第、絶対」
母親「とにかく、今回は我慢しなさい」
玲央「一生のお願い! この通り!」
母親「あんた、何回転生してるのよ。それ10回以上聞いてるわよ」
玲央「ううー! お願い! 本当にお願い!」
母親「(溜息をつく)……仕方ないわね」
玲央「やった!」
母親「でも、ただじゃないわよ!」
玲央「え?」
母親「今回は働いてもらうわ」
玲央「バイトしろってこと?」
母親「違うわよ。肩もみ1時間2000円出すわ。どう?」
玲央「マジで!? やるやる! 時給2000円って破格じゃん! 楽勝! それなら1日やってやるよ」
母親「あら、そう。楽しみね」
場面転換。
玲央「……母さん。手が痛いんだけど」
母親「何言ってるの。まだ20分しかたってないわよ」
玲央「ううー。ヤバい。限界」
母親「1日できるんじゃなかったの?」
玲央「無理無理無理」
母親「わかった? お金を稼ぐのってこれくらい大変なのよ」
玲央「うう……」
母親「ほら、力入ってないわよ! それじゃ、お金払えないんだから」
玲央「て、手が……」
場面転換。
アラームが鳴る音。
母親「はい、1時間経ったわね」
玲央「うおーーーー! やり遂げたぞー!」
母親「どう? 少しは働くことの辛さ、わかった?」
玲央「わかったわかった。早くお金頂戴」
母親「はあ……。ホントにわかったのかしらね」
財布を開ける母親。
母親「今回、頑張ったから1万あげるわ。はい」
玲央「母さん、マジ天使だわー」
母親「あ、じゃあ、あんたに貸してた借金、返してもらうわね」
玲央「へ?」
母親が玲央からお金をヒョイと取る。
母親「あー、肩、軽くなったわ。さ、ご飯食べましょ」
玲央「母さん、マジ悪魔だわ……」
終わり。