いつも優しい朱音さん
- 2023.08.20
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
新(あらた)
孝雄(たかお)
朱音(あかね)
男の子1~2
■台本
新(N)「朱音さんはいつもにこにことしていた。美人で優しくて、いつも笑顔の朱音さん。そんな朱音さんは僕たちの憧れの人だった」
場面転換。
新が6歳の頃。朱音は13歳。
新「朱音さーん!」
孝雄「朱音さーん!」
朱音「あら、新くんに孝雄くん。こんにちは」
新「見て! 見て! これ! カエル捕まえた」
ゲロゲロとカエルの鳴き声。
朱音「わっ! ……すごい大きなカエルね」
新「これ、朱音さんにあげる」
朱音「ありがとう。でもね、カエルさんは自由に生きたいと思うな」
新「そうかなぁ?」
朱音「うん。だから逃がしてあげて」
新「……わかった」
カエルを逃がす新。
そのとき、後ろから孝雄が朱音の胸を触る。
孝雄「おっぱいターッチ!」
朱音「きゃあ!」
孝雄「えへへへ」
朱音「もう! 孝雄くん! ダメだよ、女の子にそういうことしたら」
孝雄「えー! 減るもんじゃないし、いいじゃん」
朱音「そういうことする子は嫌いだな」
孝雄「え? ご、ごめんなさい! もうしないから嫌いにならないで」
朱音「うん。もうしないなら、許してあげる」
孝雄「ありがと、朱音さん」
場面転換。
新と孝雄が歩いている。
孝雄「あー、朱音さんって天使だよなー」
新「うん……。そうだね」
孝雄「将来は朱音さんみたいな人と結婚したいなぁ」
新「そうだねぇ」
新(N)「何をしても怒らない、優しい朱音さんのことが好きなのは僕たちだけじゃなかったはずだ。僕の周りの男で朱音さんを好きじゃないやつはいなかった。そのくらい、朱音さんは素敵な人だった」
場面転換。
時間経過。新が17歳の頃。
ここから新の声が変わる。
新(N)「でも、そんな憧れの人でも、学年が進むにしたがって会いに行かなくなり、高校に入る頃になれば、忘れていたくらいだ。……でも、初恋なんてそんなものだろう」
新と孝雄が歩いている。
孝雄「なあ、新。この前の中間テスト、どうだった?」
新「ギリギリ赤点は回避したよ」
孝雄「マジかー。俺、数Ⅱ(すうに)が赤点だったんだよなぁ。夏休み、補習なんて最悪だー」
新「来年になったら、受験漬けだからね。遊べるのは今年の夏休みが最後かな」
孝雄「そんなこと言うなよ……。凹むだろ」
新「孝雄はどこの大学にするかは決めたの?」
孝雄「んー。いくとしても地元のかな」
新「えー、それだと一人暮らし……」
そのとき、遠くでバンバンバンと何かを叩く音が聞こえる。
新「ん? なんの音だろ?」
孝雄「……あ、朱音さんだ」
新(N)「そこには朱音さんがいた。家の庭でサンドバックを叩いている」
新「朱音さん、ボクシングでも始めたのかな?」
孝雄「ん? 前からだろ。俺たちが行ってた頃から、庭にサンドバックあったぞ」
新「そうだっけ? サンドバックを叩くってあんまり朱音さんのイメージにはないんだよなぁ」
孝雄「まあ、俺もそう思ったけどな……」
そのとき、子供の声が聞こえる。
男の子1「朱音さーん!」
男の子2「朱音さーん!」
朱音「あら、二人ともいらっしゃい」
孝雄「朱音さんって、相変わらず美人だな」
新「そうだね」
孝雄「ふふ。あのときと同じ笑顔だ。優しいのも変わらないな」
新「そうだね」
男の子1「見て見て! カブトムシ捕まえた!」
朱音「……っ! す、すごい大きいわね」
男の子1「これ、朱音さんにあげる」
朱音「ありがとう。でもね、カエルさんは自由に生きたいと思うな」
男の子1「そうかなぁ?」
朱音「うん。だから逃がしてあげて」
男の子1「……わかった」
新「……」
孝雄「……」
そのとき、後ろから男の子2が朱音の胸を触る。
男の子2「おっぱいターッチ!」
朱音「きゃあ!」
男の子2「えへへへ」
朱音「もう! 孝雄くん! ダメだよ、女の子にそういうことしたら」
男の子2「えー! 減るもんじゃないし、いいじゃん」
朱音「そういうことする子は嫌いだな」
男の子2「え? ご、ごめんなさい! もうしないから嫌いにならないで」
朱音「うん。もうしないなら、許してあげる」
男の子2「ありがと、朱音さん」
新「……」
孝雄「……」
男の子1・男の子2「それじゃ、朱音さん、バイバイ」
朱音「バイバイ。またね」
男の子たちが走り去っていく。
新「……」
孝雄「……」
朱音「……(大きなため息)」
スタスタと歩いてサンドバックの前に立つ。
朱音「はあ!」
バンと思い切り、サンドバックを叩く。
朱音「おらあ!」
バンと思い切り、サンドバックを叩く。
朱音「クソガキが!」
バンと思い切り、サンドバックを叩く。
朱音「あー! もう! 優しい顔してれば、付け上がって!」
バン、バン、バンとサンドバックを叩く朱音。
新「……」
孝雄「……」
新「……行こうか」
孝雄「そうだな」
歩き始める新と孝雄。
孝雄「……朱音さんの笑顔さ」
新「ん?」
孝雄「目が全然笑ってなかったな」
新「そうだね」
孝雄「俺らの時もそうだったのかな?」
新「たぶんね」
孝雄「……子供の頃はわからないよな。目が笑ってないなんて」
新「そうだね」
孝雄「いつも、キレてたんだな」
新「……そうだね」
新(N)「人には必ず裏表がある。顔が笑っているからと言って、怒ってないとは言えない。そういうことがあることはちゃんと覚えておこう」
終わり。
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