師匠と呼ばせてくれ

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
蒼(あおい)
慶(けい)
蒼の父親

■台本

公園。

蒼がブランコに乗っていると、慶が走って来る。

慶「おーい! 蒼!」

蒼「ん? 慶か。遅かったな」

慶「ごめん。今日、掃除当番だったんだよ」

蒼「まあ、謝る必要はないけど……」

慶「それより、蒼、いや、師匠! 聞いてくれ」

蒼「だから、師匠は止めろってば」

慶「慶に言われた通りに誘ったらさ、雅ちゃん、ОKしてくれたんだよ」

蒼「やっぱりね。話を聞いてたら、脈ありって思ってたからさ」

慶「え? マジで? 俺、全然、気づかなかったけど……」

蒼「女っていうのは、感情を隠すのが上手いの。男子みたく、すぐ顔とか言葉に出さないからさ」

慶「へー。そうなんだ。でも、やっぱり、女の子については、蒼に聞くのが一番だよ。やっぱり、師匠って呼んでいいか?」

蒼「だーめ!」

慶「えー。なんでだよ」

蒼「慶とは対等でいたいんだ。ほら、師匠、なんて呼ばれると上下関係ができるでしょ?」

慶「俺は別にいいんだけどなぁ」

蒼「こっちが嫌なの」

慶「まあいいや。それより、サッカーしようぜ」

蒼「うん。そうだね」

場面転換。

蒼と慶が倒れ込む。

蒼「はあー。疲れたー」

慶「限界。もう動けねー」

蒼「でも、慶はいいなぁ」

慶「なにが?」

蒼「キック力があって」

慶「蒼は体力あるじゃん。後半とか、俺、バテバテだし」

蒼「そんなの、走り込みすればすぐよ」

慶「キック力だって、練習すれば付くだろ」

蒼「いや、それこそ限界があるよ」

慶「そうかぁ?」

蒼「あ、それよりさ」

慶「ん?」

蒼「雅ちゃんと、土日に遊ぶんでしょ? ちゃんとエスコートできんの?」

慶「あっ!」

ガバっと起き上がる慶。

慶「蒼! いや、師匠! エスコートの方法、教えてくれ!」

蒼「はあ……。師匠は止めてって言ってるでしょ。……えーっと、雅ちゃんの言動からすると……」

場面転換。

公園。一人、ブランコを漕いでいる蒼。

蒼「慶……上手くいったかな……」

そこに慶が走って来る。

慶「おーい、蒼!」

蒼「あれ? 慶?」

慶「やっぱ、公園にいたか」

蒼「慶、雅ちゃんの方は? 日曜日も遊ぶって言ってたじゃん」

慶「あー、それがさー、聞いてくれよ。昨日、帰り際にさ、慶君は優しくて、女の子の気持ちがわかってるけど、私、イケメンがいいって、言われて、フラれたんだよ」

蒼「はあああああ!? なにそれ!?」

慶「あはは……そりゃ、アイドルと比べられたら、俺なんて不細工だよな」

蒼「よかったよ、フラれて」

慶「え?」

蒼「そんな、上っ面しか見ない女に慶は勿体ない」

慶「あはははは。蒼に言われてもなぁ」

蒼「……」

慶「ってことで、今日もサッカーしようぜ」

蒼「う、うん……」

慶「あ、それと、また好きな子ができたら、頼むぜ、師匠」

蒼「だから、師匠はやめてってば」

場面転換。

蒼の部屋。寝転んで本を読んでいる。

本をめくる音。そして、バタンと閉じる。

蒼「えーっと、次の巻は……」

するとガチャっとドアが開く。

父親「なあ、蒼。久しぶりにお父さんと風呂入らないか?」

蒼「入らない! もう、私、5年生だから」

父親「うぅ! そ、そうか……」

ドアを閉めようとする父親。

蒼「あ、お父さん」

父親「ん? なんだ?」

蒼「女の子の部屋にノックなしで入るとか、あり得ないから」

父親「うっ! ご、ごめん……」

パタリとドアが閉まる音。

蒼「はあ……。ったく。男って、これだから。……それにしても、慶の誤解、どうやって解こうかな。てか、なんで、私が女だって気づかないかなぁ!」

終わり。

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