師匠と呼ばせてくれ
- 2023.09.30
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
蒼(あおい)
慶(けい)
蒼の父親
■台本
公園。
蒼がブランコに乗っていると、慶が走って来る。
慶「おーい! 蒼!」
蒼「ん? 慶か。遅かったな」
慶「ごめん。今日、掃除当番だったんだよ」
蒼「まあ、謝る必要はないけど……」
慶「それより、蒼、いや、師匠! 聞いてくれ」
蒼「だから、師匠は止めろってば」
慶「慶に言われた通りに誘ったらさ、雅ちゃん、ОKしてくれたんだよ」
蒼「やっぱりね。話を聞いてたら、脈ありって思ってたからさ」
慶「え? マジで? 俺、全然、気づかなかったけど……」
蒼「女っていうのは、感情を隠すのが上手いの。男子みたく、すぐ顔とか言葉に出さないからさ」
慶「へー。そうなんだ。でも、やっぱり、女の子については、蒼に聞くのが一番だよ。やっぱり、師匠って呼んでいいか?」
蒼「だーめ!」
慶「えー。なんでだよ」
蒼「慶とは対等でいたいんだ。ほら、師匠、なんて呼ばれると上下関係ができるでしょ?」
慶「俺は別にいいんだけどなぁ」
蒼「こっちが嫌なの」
慶「まあいいや。それより、サッカーしようぜ」
蒼「うん。そうだね」
場面転換。
蒼と慶が倒れ込む。
蒼「はあー。疲れたー」
慶「限界。もう動けねー」
蒼「でも、慶はいいなぁ」
慶「なにが?」
蒼「キック力があって」
慶「蒼は体力あるじゃん。後半とか、俺、バテバテだし」
蒼「そんなの、走り込みすればすぐよ」
慶「キック力だって、練習すれば付くだろ」
蒼「いや、それこそ限界があるよ」
慶「そうかぁ?」
蒼「あ、それよりさ」
慶「ん?」
蒼「雅ちゃんと、土日に遊ぶんでしょ? ちゃんとエスコートできんの?」
慶「あっ!」
ガバっと起き上がる慶。
慶「蒼! いや、師匠! エスコートの方法、教えてくれ!」
蒼「はあ……。師匠は止めてって言ってるでしょ。……えーっと、雅ちゃんの言動からすると……」
場面転換。
公園。一人、ブランコを漕いでいる蒼。
蒼「慶……上手くいったかな……」
そこに慶が走って来る。
慶「おーい、蒼!」
蒼「あれ? 慶?」
慶「やっぱ、公園にいたか」
蒼「慶、雅ちゃんの方は? 日曜日も遊ぶって言ってたじゃん」
慶「あー、それがさー、聞いてくれよ。昨日、帰り際にさ、慶君は優しくて、女の子の気持ちがわかってるけど、私、イケメンがいいって、言われて、フラれたんだよ」
蒼「はあああああ!? なにそれ!?」
慶「あはは……そりゃ、アイドルと比べられたら、俺なんて不細工だよな」
蒼「よかったよ、フラれて」
慶「え?」
蒼「そんな、上っ面しか見ない女に慶は勿体ない」
慶「あはははは。蒼に言われてもなぁ」
蒼「……」
慶「ってことで、今日もサッカーしようぜ」
蒼「う、うん……」
慶「あ、それと、また好きな子ができたら、頼むぜ、師匠」
蒼「だから、師匠はやめてってば」
場面転換。
蒼の部屋。寝転んで本を読んでいる。
本をめくる音。そして、バタンと閉じる。
蒼「えーっと、次の巻は……」
するとガチャっとドアが開く。
父親「なあ、蒼。久しぶりにお父さんと風呂入らないか?」
蒼「入らない! もう、私、5年生だから」
父親「うぅ! そ、そうか……」
ドアを閉めようとする父親。
蒼「あ、お父さん」
父親「ん? なんだ?」
蒼「女の子の部屋にノックなしで入るとか、あり得ないから」
父親「うっ! ご、ごめん……」
パタリとドアが閉まる音。
蒼「はあ……。ったく。男って、これだから。……それにしても、慶の誤解、どうやって解こうかな。てか、なんで、私が女だって気づかないかなぁ!」
終わり。