幸せの青い鳥
- 2023.11.05
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:3分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
裕介(ゆうすけ)
唯月(ゆづき)
満(みつる)
■台本
ガチャリとドアが開く音。
裕介「というわけで、一晩、泊まらせてくれ」
唯月「……いきなり来て、なにが、というわけで、よ。面倒くさがらずにちゃんと言えって」
裕介「とりあえず、中に入れてくれ。喉が渇いた」
唯月「……そのまま、ドアを閉めたくなったわ」
場面転換。
ごきゅごきゅとジュースを飲む裕介。
裕介「ぷはー。うめー。おかわり」
唯月「却下」
裕介「なんだよー。いいじゃん」
唯月「あんたの選択肢は、理由を言うか、出て行くかのどっちかよ」
裕介「……はいはい。わかったよ。言えばいいんだろ、言えば」
唯月「頼む側の発言じゃないわね……」
裕介「幸せの青い鳥って知ってるか?」
唯月「童話の? チルチルとミチルのやつでしょ?」
裕介「おお、すげーな。俺、ヘンゼルとグレーテルだと思ってた」
唯月「……まあ、ごっちゃになる人、多いわよね。で?」
裕介「弟がさ、今、童話にハマってるんだよ」
唯月「ああ。今、6歳くらいだっけ?」
裕介「7歳だな。で、母さんが幸せの青い鳥の絵本を買ってきたんだよ」
唯月「ふーん」
裕介「まあ、俺が読んでやるんだけどさ。弟が、こう言うんだよ。『意味が分からない』って」
唯月「ん? 物語のってこと? 幸せは身近にあるものってことじゃないの?」
裕介「俺もそう説明したんだけどさ。『幸せを求めて家を出て行ったのに、今の生活を幸せって定義したって話なら、それは幸せを見つけたんじゃなくて、妥協しただけじゃないか』って」
唯月「うわ……。めんどくさ」
裕介「だろ? あいつ、ユーチューブの影響で、論破することが趣味になっててさ。今、童話を論破することにハマってるみたいだ」
唯月「さらにめんどくさ」
裕介「だから、直接、体験させることにしたんだ」
唯月「体験?」
裕介「こういうのってさ、言葉で論理的にわからせるよりも、体験して、感情に訴えた方がいいと思うんだよ」
唯月「あー、確かに。論理に対して、論理でねじ伏せようとしたら、相手はムキになるだけだからね」
裕介「だから、俺が一晩いなくなることで、普通の毎日がどれだけ幸せだったかって、思い知らせることにしたんだよ」
唯月「あー……。なるほど?」
場面転換。
ガチャリとドアが開き、裕介が入ってくる。
裕介「よお、帰ったぞ」
満「あ、兄ちゃん」
裕介「どうだ? 一晩、寂しかっただろ? 俺がいなくて。いいか? これが、何気ない普通の生活が幸せってことだ。身に染みただろ?」
満「別に」
裕介「へ?」
満「あ、逆に兄ちゃんがいなくて、静かで暮らしやすかったよ。兄ちゃんって、結構、ウザかったんだなって、再認識できた」
裕介「あー……。なるほど。不幸って、身近にあるものなんだな」
終わり。
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