幸せの青い鳥

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■概要
人数:3人
時間:3分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
裕介(ゆうすけ)
唯月(ゆづき)
満(みつる)

■台本

ガチャリとドアが開く音。

裕介「というわけで、一晩、泊まらせてくれ」

唯月「……いきなり来て、なにが、というわけで、よ。面倒くさがらずにちゃんと言えって」

裕介「とりあえず、中に入れてくれ。喉が渇いた」

唯月「……そのまま、ドアを閉めたくなったわ」

場面転換。

ごきゅごきゅとジュースを飲む裕介。

裕介「ぷはー。うめー。おかわり」

唯月「却下」

裕介「なんだよー。いいじゃん」

唯月「あんたの選択肢は、理由を言うか、出て行くかのどっちかよ」

裕介「……はいはい。わかったよ。言えばいいんだろ、言えば」

唯月「頼む側の発言じゃないわね……」

裕介「幸せの青い鳥って知ってるか?」

唯月「童話の? チルチルとミチルのやつでしょ?」

裕介「おお、すげーな。俺、ヘンゼルとグレーテルだと思ってた」

唯月「……まあ、ごっちゃになる人、多いわよね。で?」

裕介「弟がさ、今、童話にハマってるんだよ」

唯月「ああ。今、6歳くらいだっけ?」

裕介「7歳だな。で、母さんが幸せの青い鳥の絵本を買ってきたんだよ」

唯月「ふーん」

裕介「まあ、俺が読んでやるんだけどさ。弟が、こう言うんだよ。『意味が分からない』って」

唯月「ん? 物語のってこと? 幸せは身近にあるものってことじゃないの?」

裕介「俺もそう説明したんだけどさ。『幸せを求めて家を出て行ったのに、今の生活を幸せって定義したって話なら、それは幸せを見つけたんじゃなくて、妥協しただけじゃないか』って」

唯月「うわ……。めんどくさ」

裕介「だろ? あいつ、ユーチューブの影響で、論破することが趣味になっててさ。今、童話を論破することにハマってるみたいだ」

唯月「さらにめんどくさ」

裕介「だから、直接、体験させることにしたんだ」

唯月「体験?」

裕介「こういうのってさ、言葉で論理的にわからせるよりも、体験して、感情に訴えた方がいいと思うんだよ」

唯月「あー、確かに。論理に対して、論理でねじ伏せようとしたら、相手はムキになるだけだからね」

裕介「だから、俺が一晩いなくなることで、普通の毎日がどれだけ幸せだったかって、思い知らせることにしたんだよ」

唯月「あー……。なるほど?」

場面転換。

ガチャリとドアが開き、裕介が入ってくる。

裕介「よお、帰ったぞ」

満「あ、兄ちゃん」

裕介「どうだ? 一晩、寂しかっただろ? 俺がいなくて。いいか? これが、何気ない普通の生活が幸せってことだ。身に染みただろ?」

満「別に」

裕介「へ?」

満「あ、逆に兄ちゃんがいなくて、静かで暮らしやすかったよ。兄ちゃんって、結構、ウザかったんだなって、再認識できた」

裕介「あー……。なるほど。不幸って、身近にあるものなんだな」

終わり。

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