帰り道

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
雄平(ゆうへい)
勝弘(かつひろ)

■台本

雄平(N)「学校の帰り道。いつもかっちゃんと買い食いするのが当たり前だった」

勝弘「雄平。今日はこれを買って、二人で分けようぜ」

雄平「うん!」

雄平(N)「僕は昔から人と話すのが苦手だった。そのせいで、今までほとんど友達ができたことはない。でも、そんな僕に声をかけてくれたのが、かっちゃんだった」

お菓子を食べながら歩く2人。

勝弘「美味いな―」

雄平「美味しいねー」

勝弘「あ、そうだ。これ。サービスだってよ」

雄平「え、ホント? やったぁ」

勝弘「いやー、あの店は神だよなぁ」

雄平「だよねー」

雄平(N)「僕らが通っているのは、町の外れにある小さな駄菓子屋だ。おじいさんが一人でやってて、安い上によく、サービスでお菓子をくれる。だから、こうやって毎日通うことができるのだ」

勝弘「そういえばさ、3組の田中が塾に通い出したんだってよ」

雄平「ええ? 塾って、まだ小学校なのに?」

勝弘「なーんか、いい中学に入りたいんだってよ」

雄平「うえぇ。そんなとこ行ったら、勉強大変じゃん」

勝弘「だよなー」

雄平(N)「こうやって、お菓子を食べながら、他愛のない話をする。これが僕にとって、唯一の楽しみで、僕とかっちゃんを繋ぐ大切な時間だ」

場面転換。

雄平と勝弘が歩いている。

勝弘「今日は、何食べる?」

雄平「んー。最近はしょっぱいものが続いてるから、チョコ系の甘いのがいいなぁ」

勝弘「甘いのかー。いいな」

雄平「……あれ?」

勝弘「どうした?」

雄平「見て……」

勝弘「え?」

雄平(N)「僕らがいつも通っている駄菓子店が閉まっていた」

勝弘「……ここが閉まってるなんて初めてだな」

雄平「うん……。どうしちゃったんだろ」

勝弘「あ、見ろよ。なんか張り紙してある」

雄平(N)「張り紙には閉店という文字が書いてあった」

雄平「なんで急に……」

勝弘「さあな。でも、しょうがないさ」

雄平「うん……。そうだね」

雄平(N)「僕はお店が閉店したこともショックだったが、それ以上に、不安になっていることがあった」

場面転換。

学校の前。

雄平「あ、かっちゃん」

勝弘「雄平、ごめん。今日は一人で帰る」

雄平「え? なんで?」

勝弘「ちょっと、用事があるんだよ。じゃあな」

勝弘が走っていく。

雄平「……」

雄平(N)「やっぱりだ。僕とかっちゃんを繋いでいたのは、あの駄菓子屋だった。もうかっちゃんと一緒に買い食いができない。だから、かっちゃんも僕と帰る必要はないんだ」

場面転換。

通学路。

周りは友達同士で帰る中、雄平が一人で帰っている。

雄平(N)「あれから一週間が経った。あの日からかっちゃんと一緒に帰らなくなった。僕とかっちゃんを繋いでいたお菓子屋はもうない。だから、もうかっちゃんとは帰ることはできないんだ」

そのとき、後ろから走って来る足音がする。

勝弘「いたいた! 雄平」

雄平「かっちゃん?」

勝弘「やっと見つけたんだ」

雄平「……なにを?」

勝弘「ちょっとついて来てくれ」

場面転換。

お店の中。

雄平「うわぁ。すごい」

勝弘「だろ? ここの駄菓子屋はチェーン店らしいから、もう潰れることもないぞ。お菓子の種類も多いしな。まあ、前の店よりはちょっと高いけど」

雄平「う、うん」

勝弘「これでまた、二人で買い食いしながら帰れるな!」

雄平(N)「お菓子を食べながら帰ることが、楽しみだったのは僕だけじゃなかったみたいだ。確かに僕とかっちゃんを繋いでいるのはお菓子かもしれない。だけど、それだけじゃない。僕たちは友達なんだから」

終わり。

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