帰り道
- 2023.11.23
- ボイスドラマ(10分) 退避

■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
雄平(ゆうへい)
勝弘(かつひろ)
■台本
雄平(N)「学校の帰り道。いつもかっちゃんと買い食いするのが当たり前だった」
勝弘「雄平。今日はこれを買って、二人で分けようぜ」
雄平「うん!」
雄平(N)「僕は昔から人と話すのが苦手だった。そのせいで、今までほとんど友達ができたことはない。でも、そんな僕に声をかけてくれたのが、かっちゃんだった」
お菓子を食べながら歩く2人。
勝弘「美味いな―」
雄平「美味しいねー」
勝弘「あ、そうだ。これ。サービスだってよ」
雄平「え、ホント? やったぁ」
勝弘「いやー、あの店は神だよなぁ」
雄平「だよねー」
雄平(N)「僕らが通っているのは、町の外れにある小さな駄菓子屋だ。おじいさんが一人でやってて、安い上によく、サービスでお菓子をくれる。だから、こうやって毎日通うことができるのだ」
勝弘「そういえばさ、3組の田中が塾に通い出したんだってよ」
雄平「ええ? 塾って、まだ小学校なのに?」
勝弘「なーんか、いい中学に入りたいんだってよ」
雄平「うえぇ。そんなとこ行ったら、勉強大変じゃん」
勝弘「だよなー」
雄平(N)「こうやって、お菓子を食べながら、他愛のない話をする。これが僕にとって、唯一の楽しみで、僕とかっちゃんを繋ぐ大切な時間だ」
場面転換。
雄平と勝弘が歩いている。
勝弘「今日は、何食べる?」
雄平「んー。最近はしょっぱいものが続いてるから、チョコ系の甘いのがいいなぁ」
勝弘「甘いのかー。いいな」
雄平「……あれ?」
勝弘「どうした?」
雄平「見て……」
勝弘「え?」
雄平(N)「僕らがいつも通っている駄菓子店が閉まっていた」
勝弘「……ここが閉まってるなんて初めてだな」
雄平「うん……。どうしちゃったんだろ」
勝弘「あ、見ろよ。なんか張り紙してある」
雄平(N)「張り紙には閉店という文字が書いてあった」
雄平「なんで急に……」
勝弘「さあな。でも、しょうがないさ」
雄平「うん……。そうだね」
雄平(N)「僕はお店が閉店したこともショックだったが、それ以上に、不安になっていることがあった」
場面転換。
学校の前。
雄平「あ、かっちゃん」
勝弘「雄平、ごめん。今日は一人で帰る」
雄平「え? なんで?」
勝弘「ちょっと、用事があるんだよ。じゃあな」
勝弘が走っていく。
雄平「……」
雄平(N)「やっぱりだ。僕とかっちゃんを繋いでいたのは、あの駄菓子屋だった。もうかっちゃんと一緒に買い食いができない。だから、かっちゃんも僕と帰る必要はないんだ」
場面転換。
通学路。
周りは友達同士で帰る中、雄平が一人で帰っている。
雄平(N)「あれから一週間が経った。あの日からかっちゃんと一緒に帰らなくなった。僕とかっちゃんを繋いでいたお菓子屋はもうない。だから、もうかっちゃんとは帰ることはできないんだ」
そのとき、後ろから走って来る足音がする。
勝弘「いたいた! 雄平」
雄平「かっちゃん?」
勝弘「やっと見つけたんだ」
雄平「……なにを?」
勝弘「ちょっとついて来てくれ」
場面転換。
お店の中。
雄平「うわぁ。すごい」
勝弘「だろ? ここの駄菓子屋はチェーン店らしいから、もう潰れることもないぞ。お菓子の種類も多いしな。まあ、前の店よりはちょっと高いけど」
雄平「う、うん」
勝弘「これでまた、二人で買い食いしながら帰れるな!」
雄平(N)「お菓子を食べながら帰ることが、楽しみだったのは僕だけじゃなかったみたいだ。確かに僕とかっちゃんを繋いでいるのはお菓子かもしれない。だけど、それだけじゃない。僕たちは友達なんだから」
終わり。