犬のおかげ

犬のおかげ

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
英治(えいじ) 20歳
新(あらた) 20歳
里美(さとみ) 20歳

■台本

大学内。

新「なあ、英治。お前、なんで彼女作らねーの?」
英治「……新。お前、朝から俺に喧嘩売ってんのか?」
新「いやいや。待て待て! ほら、お前って、普通よりやや上くらいの容姿だろ? なら、彼女はできるかなって思ったんだよ、マジで」
英治「……褒めてるようで、微妙だな」
新「お前、やっぱ、彼女欲しいのか?」
英治「当たり前だろ」
新「ふっふっふ。なら、俺に名案がある」
英治「名案?」
新「犬を飼え」
英治「犬?」
新「で、必ず散歩に行け。一日二回だ。早朝と夕方に」
英治「はあ? 面倒くせえよ」
新「いいからやれって。彼女欲しいんだろ? 騙されたと思ってやってみろよ」
英治「……」

場面転換。
早朝。
スタスタと歩く音と、犬のハッハッハという呼吸音。

英治「ふあーー! あー、くそ、ねみぃ」

早朝のジョギングや、他にも散歩している人がいる。

英治「へえ……。意外と、朝早くでも、人って多いんだな」

ジョギングしている里美が立ち止まる。

里美「わー、可愛いワンちゃん」

犬がワンと吠える。

里美「君の犬?」
英治「ああっ、う、うん。そう。バナナって名前なんだ」
里美「あははは。バナナって変わった名前つけたね。なんでバナナにしたの?」
英治「えと、オスだから」
里美「……」
英治「……あっ、しまっ!」
里美「……」
英治「あー、違う、えっと、黄色……くはないか、犬だし。えーっと、バナナの匂いがする……わけねーし、えっと……」
里美「……ぷっ!」
英治「え?」
里美「あはははははははははは!」
英治「……」
里美「君、すごいね。初対面の女の子にいきなり下ネタぶっこんでくるなんてさ」
英治「あー、いや、その……」
里美「君、いつもこの時間にバナナくん、散歩させてるの?」
英治「ああ、うん……」
里美「そうなんだ。私も、いつもこの時間にジョギングしてるんだ。じゃあ、また明日ね」

里美が走っていく。

英治「……」

場面転換。
大学の教室内。

英治「俺は、お前に抱かれてやってもいい」
新「丁重にお断りする。ケツより、金出せ」
英治「いやー、お前の言う通りだったよ。俺にもついに彼女が出来そうだ」
新「だろ? 女の子は可愛いものに弱いんだよ」
英治「毎日、30分くらい話すんだぜ?」
新「へー。それは大分、いい感触そうだな」
英治「なんかさ、俺と話をするのが楽しいって感じなんだよ」
新「おいおい、ホントか? 盛ってるだろ」
英治「んなことねーよ! つーか、彼女、俺に一目惚れしたんじゃねーかな」
新「夢、見過ぎだって。絶対、犬のおかげだっつーの」
英治「おまっ! バカにすんなよ! 俺の魅力に決まってるだろ!」
新「うーん……」
英治「俺さ、明日は勝負かけようと思ってるんだ」
新「勝負?」
英治「彼女をデートに誘う」
新「……ホントに大丈夫か?」
英治「ああ。見てろよ。明日、彼女が出来たって報告してやる」
新「……デートに漕ぎ付けても、付き合ってることにはならねーけどな」

場面転換。
早朝。
英治が立っている。

英治「……」

そこに里美が走って来て、止まる。

里美「おはよう」
英治「お、おはよう」
里美「今日も、いい天気だね」
英治「あ、ああ。そうだね。……あ、あのさ、今度……」
里美「あれ? バナナくんは?」
英治「え? ああ、今日は連れてきていないんだ。……君に大事な話があるから」
里美「なーんだ」
英治「え?」
里美「バナナくんがいないなら、また今度ね」
英治「いや、あの、大事な話が……」
里美「明日はバナナくん、連れてきてね。バイバイ」

里美が走っていく。

英治「……」

場面転換。
英治の部屋。
ゲームをしている新と英治。

英治「あー、くそ、負けた!」
新「ふっふっふ。俺に勝つなんて、10年はえーよ」
英治「もう一回だ!」
新「いいけど、それより、腹減らね?」
英治「あー、そうだな」
新「ラーメンでも食いに行くか?」
英治「いいね!」
新「……あと、気になったんだけど」
英治「ん?」
新「バナナ、どこ行ったんだ?」
英治「ああ。里親に出したよ」
新「……そ、そっか」

終わり。